みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第10部 ボクの弟がこんなにシスコンなわけがない!

第2話 星見る夜より腰振る夜

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「――遅いっ! 3人ともナニしてたし!? もう掃除終わっちゃうっしょっ!?」



 芽衣と共に、よこたんのありがたいお説教を、その身に沁み込ませてること2時間弱。

 ようやくお許しをいただいた俺たちは、いそいそと体育館から生徒会室へと移動し……愛しの我が後輩、大和田信菜ちゃんに、またもや怒られていた。

 ふわふわと桃色に染めた髪をお団子にして、雑巾片手に生徒会室を掃除していた大和田ちゃんが『ウガーッ!』と、小動物よろしく声を張り上げる。

 何だか今日は怒られてばかりだなぁ……。

 ドMじゃないのが、悔やまれる所だ。

 なんてことを考えながら、いかれる後輩を宥めるべく、俺のイケてる唇が勝手に動き出した。



「いやぁ、メンゴ、メンゴ☆ これから急いで手伝うから、許してチョンマゲ♪ あっ! 俺も雑巾、持って来ればいい?」

「ハァ……。まぁやる気があるなら、別にいいけどさ。それじゃシロパイは、翼さんとお兄ちゃんと一緒に、床でも掃いてて」

「ハァハァ……❤ 喧嘩狼と密室で2人きり……アカンッ!? イクっ!」
「落ち着いてください、タカさん。少なくとも、2人きりではありませんよ?」
「うん、一応ツッコんでおくね? なんで居るの、キミたち?」



 さも当然のように九頭竜高校の制服に身を包み、箒で床を掃いている男たちに、何とも言えない視線を向けた。

 そんな俺の視線を受け、打ち上げられたハマチのように、身体を小刻みに痙攣させ、恍惚こうこつとした表情を浮かべるのは、九頭竜高校の頭にして、生粋のストーカー野郎、鷹野翼であった。

 今日も今日とて、気持ち悪さマックスハートで「喧嘩狼の臭いがワシの全身を包んで……んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ❤」と、地獄の裸足で逃げ出す嬌声きょうせいをあげていた。

 そんなアヘ顔ダブルピースを浮かべる鷹野の隣には、大和田ちゃんの兄にして、俺の心のお兄ちゃんこと、タマキン兄さん――じゃない、大和田信愛おにいたんが、箒片手に鷹野を介抱していた。



「信菜さんにお願いされたんですよ。大神様たちが戻ってこないから、掃除が終わらない!?助けて! ……って。まったく、今までナニをしていたんですか?」

「んほっ、んほぉぉぉぉぉぉぉぉっ❤ 喧嘩狼……いといかし❤」
「うっ!? ご、ごめん、タマキン兄さん……」



 鋭い視線で睨まれてしまい、素直に頭を下げる俺。

 あと、どうでもいいけどさ? 誰か鷹野のあの顔面に、モザイクをかけてくれないかな?

 ダメだよアレ? 放送コードに引っかかるよ?

 俺は顔面猥褻物と化した鷹野から視線を切り、キョロキョロと部屋の中を見渡して「アレ?」と首を傾げた。



「どうしたの、ししょー?」

「いや、先に行ったハズの元気の姿が見当たらねぇなと思って……。もしかしてサボった、アイツ?」

「あぁ。猿野パイセンなら、科学部の部室を掃除してくるって言って、出て行ったし」



 キュッ、キュッ! と、俺の机を綺麗にきながら、そう答える大和田ちゃん。

 きっと大和田の兄上と鷹野が居たから、さっさと避難したんだろうなぁアイツ。

 あとで顔を見せに科学部室へ寄ってやろう。

 と、1人ひっそり決意していると、今度は大和田の兄やんが「おや?」と首を捻った。



「どったべ兄者?」
「誰が兄者ですか。いえ……今日はハニービーの総長とは一緒に居ないんですね?」

「あぁ、蜂谷なら今日は学校へ来てねぇぞ。というか、最近全然学校に来てねぇなアイツ。どうしたんだろ?」

「そうですか……。彼女の意見を聞きたい所だったんですが……居ないのであれば、仕方ありませんね」

「うん? なんか悩み事かい、兄様? よければこの未来の弟が相談に乗りやすぜ?」



 だから親族に食い込もうとしないでください、と呆れた瞳を浮かべる大和田のにぃに。

 しかしすぐさま、何かを考えるように顎の下を指先でなぞりながら、「それでは」と口をひらいた。



「実は【東京卍帝国】の現状について、ちょっと尋ねたい事がありまして」
「ゲッ!? またアイツら絡みの話しかよ……」
「【東京卍帝国】? ナニそれ、お兄ちゃん?」



 俺達の話しを盗み聞きしていたらしい大和田ちゃんが、コテン? と、可愛く首を傾げた。

 可愛い。

 お持ち帰りしたい。

 胸に芽生えた未成年みせいねん略取りゃくしゅ誘拐ゆうかいの誘惑に、真っ向から抗う俺を横目に、兄上が優しく口を開いた。



「そうですね、一言で言えば……関東版の【出雲愚連隊いずもぐれんたい】といったところですかね」

「ようは頭のネジが外れた、ヤバい奴らの集まりってことや! もし【出雲愚連隊】が喧嘩狼に潰されてなければ、『東の卍』『西の出雲』って呼ばれてたかもしれへんなぁ」

「おい鷹野! 俺の机の端に股間を押し付けるんじゃねぇ! やめろ、グリグリするな!?」



 鷹野が兄上の言葉を引き継いで、シリアス全開の表情でそう口にするのだが……下半身は別の生き物のかように、貪欲に俺の机の角に鷹野の「タカノ」を押し付けていた。

 おい、やめろ!?

 頭のネジが外れてんのは、おまえだろうが!?

 マジで頭のネジが股間にブッ刺さってんのか、テメェ!?



「実はその【東京卍帝国】が本格的に全国統一へと動き出したらしく……そのことについて彼女に相談したいことがあったんですが……」

「? ねぇお兄ちゃん、そのチームが全国統一に動き出したら、そんなにマズイの?」

「だいぶマズイですね。なんせその【東京卍帝国】の最終目標が……ココ、森実町だという噂ですから」

「「「うえっ!?」」」



 タマキン兄さんの言葉に、女性陣が素っ頓狂な声をあげる。

 と同時に、鷹野が恍惚とした表情で、本格的に俺の机にむかって腰を振り始める。

 なんでこんな危険人物を、世間はノーマークで世に解き放っているんだ?

 マジで日本の公安はナニをしているんだ?

 ちゃんと仕事してんのか?



「大和田さん……あぁっ、お兄さんの方ですよ? それは本当ですか? その……なんで? とか理由は知ってますか?」

「いえ、そこまではまだ……。ただ噂程度の話ですが……なんでも卍帝国の副総長が、森実に凄い恨みを持った人間らしくて……それで、らしいですよ」

「まぁ要するにや!」



 そこまでダンマリを決め込んで、下半身から這い寄ってくる甘い疼きを堪能たんのうしていた鷹野が、再びシリアス全開の顔で話に介入してきた。

 が、もちろん腰の動きはスピードアップしたままで。

 マジかコイツ……?

 今の今まで、キチンと話についてイケていたのかよ。

 俺なんて、おまえの奇行のせいで、何にも情報が入ってこないのに。

 しきりに俺の机めがけて腰を振る鷹野に、誰もツッコミを入れず、彼の言葉を黙って清聴せいちょうした。



「――近い将来、森実で【東京卍帝国】と戦争が起こるちゅうこっちゃ」



 きっと誰しもが、この鷹野の言葉を聞いて、こう思った事だろう。

 ……とりあえず、腰を振るのをめろ、と。
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