みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第10部 ボクの弟がこんなにシスコンなわけがない!

第13話 鬼人會

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 星美駅前で士狼たち別れた10分後の、人気に居ない裏路地にて。

 鬼島マーライオンこと、鬼島きじま真人まさとは銀色の髪を靡かせ、路地裏の隅で、数人のボロボロの男達を無理やり正座させつつ、とり囲むようにたむろしている真っ黒な特攻服を身に着けた野郎共の方へと近づいた。



「――よう、おまえら。首尾はどうや? 上々ばい?」
會長かいちょう! お疲れさまです!」



 鬼島の存在に気付いた茶髪の特攻服の男が、すぐさま彼に向かって頭を下げた。

 それにならうように、周りに居た野郎共が「お疲れ様です!」と頭を垂れる。

 厳つい男達が1人の男に頭を下げるその光景は、どこか異様な姿のように、正座している男達には見えた。

 鬼島はそんな風景に動じることなく「おうっ」と短く返事をしながら、正座している男たちのもとへと歩みを進める。

 まさに上に立つこと慣れている、男の仕草であった。



「それで? 今日の首尾はどうや?」

「はいっ! 赤坂高校の制圧には成功しました! あとは、ここら一帯を仕切っている星美男子高校を制圧すれば、我々の任務は完了です!」

「ほぉか。ならあと、もって数週間といった所やのぅ。よぅやってくれたばい、おまえら」

「いえっ! 會長かいちょうのためならば、自分たちは、この身を捧げる覚悟がありますので!」



 当然です! と、茶髪は応えるが、鬼島に褒められたのが嬉しかったのだろう。頬が少しだけ緩んでいた。

 そんな部下の表情を愛おしく思いながら、鬼島はボロボロになった男たちの方へと視線を移した。

 その瞳は駅前で士狼たちが見ていたモノとは180度違う、獰猛な獣を彷彿とさせる、危ない瞳だった。



「さて。キサンらには教えて貰いたい事がたくさんあるばい。まずはそうやなぁ……その星美男子高校を仕切っている男の名前を教えてくれんかいな?」

「い、言えない……言いたくない」
「ほぉか、ほぉか。おまえ、男気があるのぉ。嫌いやないで、そいういうヤツ?」



 なんて呑気にそんなコトを言いながら、鬼島は男の頭をグッ! と握りしめると、


 ――グシャッ!

 
 と勢いよくアスファルトへと叩きつけた。

 悲鳴もあげることが出来ず、そのまま動かなくなる男を無視して、今度は隣に居たボロボロの男へと視線を移す。

 ピクリとも動かなくなった仲間を前に、全身から血の気が失せた顔で、ブルブルッ!? と小刻みに震えだす男達。

 そんな男達にお構いなく、間延びした鬼島の声が、鼓膜をこれでもかと揺らした。



「もう1度聞くべ? ……星美男子高校を仕切っとる男は誰ばい?」
「ッ!? い、言う! 言うから! も、もう殴るのだけは勘弁してくれ!?」



 もはや恥も外聞も関係なく、必死で泣き叫ぶ男を前に、鬼島は「こうはなりたくないな」と内心つぶやく。

 なんとまぁ、みっともない男か。

 涙で顔をグシャグシャッ!? にした男を、冷めた目で見下ろしつつ、話の続きを促すように彼は言った。



「ほうか。それで? 星美男子高校の頭は誰や?」
「よ、洋介……古羊洋介です」
「ほぉ、古羊洋介ね。覚えたばい」



 あんがとさん、とお礼の言葉を口にしながら、鬼島は男の頭を上から全力で踏み抜いた。

 ぷぎゃっ!? と、謎の声をあげながら、地面と強制的にキスする男。

 そんな男を尻目に、鬼島は後ろで控えていた仲間たちに短く命令を飛ばした。



「もうコイツらに用は無いばい。好きにしてよか」



 ヘイッ! と、声を荒げる特攻服の男達と「ひぃっ!?」と悲鳴をあげる野郎共の声が、路地裏で木霊する。

 鬼島はそんな狂気のハーモニーを奏でる現場から一足早く抜け出すなり、ポケットにしまってあったスマホを取り出して、グループ通話で幹部に伝令を伝える。



「おぉ、ワテや。次の標的が決まったわい。星美男子高校の古羊洋介、古羊洋介を探すばい。ん? おぉっ、見つけ次第、半殺しでよか。ただし、ワテがたどり着くまでは意識を持たせろ。以上や」



 それだけ伝えるなり、鬼島は上機嫌なまま星美の町へと溶けて消えて行った。

 彼の名前は鬼島真人――【東京卍帝国】所属の【鬼人會きじんかい會長かいちょうにして、またの名を『鬼神きしん』と呼ばれる7人の大幹部【シックス・ピストルズ】の1人であった。

 その事実をまだ、士狼は知らない。
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