みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第10部 ボクの弟がこんなにシスコンなわけがない!

エピローグ おれたちの冬休みはこれからだ!

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「――なぁ、オフクロよ? これは一体どういう事だ? 愛しの息子にも分かるように、30文字以内で説明しろや?」

「どうしたの、洋介くん? 急に高校入試の問題みたいなコトを言い出して?」



 古羊家のリビングにて、古羊弟の重苦しい声が、古羊ママンの身体を貫いていく。

 弟は目の前に用意された朝食を頬張ることもせず、ふんぞり返るように椅子に座りながら、斜め向かいで朝食をいただいている俺を睨むようにして、こう言った。



「なんで、オレとヨーコ姉のドリームタイムに、このクソムシが当然の如く乱入しているんだよっ!? あぁん?」



 そう言って、よこたんを膝の上に乗っけていた俺を、軽蔑の眼差しで見つめる弟くん。

 こえぇぇぇ~っ!?

 シスコンこえぇぇ~っ!?



「よ、ヨーくん! 食事中に汚いよ!? やめてよ!」
「士狼だけじゃなくて、もう1人のお姉ちゃんも、ココに居るんですけどね」
「つぅか、ウチも一緒にご飯をいただいて、ほんとによかったワケ?」



 もうっ! と、俺の膝の上で可愛く憤慨するマイ☆エンジェルと、その両隣で猫を被った芽衣と、通常通りの大和田ちゃんが、モシャモシャと卵焼きを咀嚼していた。

 ちなみに鷹野と大和田の兄上は、1度宿泊する予定のホテルへと帰宅している。

 そんな美少女2人を目視した瞬間、古羊弟の顔が、これでもかと言わんばかりに情けない顔になった。



「も、もちろんメイ姉は別に決まってるだろ? オレはただ、このクソ野郎と一緒にメシを喰いたくないだけで……って。なんで昨日のプリティガールが我が家の食卓に居るの!?」

「お母さんが誘ったのぉ~♪」

「おいおい、オフクロよ? 大丈夫か? 未成年みせいねん略取りゃくしゅ誘拐ゆうかいとかで訴えられないか、コレ?」

「なんだろうコイツ……? すごくシロパイと同じ臭いがする」



 大和田ちゃんが実に不本意な事を口走った。

 おいおい、やめてくれよ? 

 俺をこんなシスコン☆キ●ガイと一緒にしないでくれ。

 ただまぁ、確かに嫌われたままメシを喰うのは、良い気持ちはしないし……しょがない。

 コッチから歩み寄ってやるか。



「なんだ弟よ? 大和田ちゃんが気に入ったのか? 好きになったのか?」
「バッ!? おまえ、ふざけんなよ!? オレが愛しているのは、ヨーコ姉だけだ!」
「マジで気持ち悪いな、コイツ……」



 ガチトーンの大和田ちゃんボイスが、朝の食卓にいろどりを与えてくれる。

 俺はそんな後輩を無視して、弟君に笑顔で進言してみた。



「アッハッハッハ! そうか、そうか! よしっ、わかった! なら、ここらで1発、愛しの姉さまを裏切って、この家に高級デリヘルでも呼びつけるかぁ?」

「何を他人ひとの家にデリヘルを呼ぼうとしてんだ、テメェ!? 何の嫌がらせだ!? それもう、ちょっとしたテロリズムだぞ!?」

「そもそも、まだ呼べる年齢じゃないっしょ、シロパイ?」



 何故か俺を見てドン引きする大和田ちゃん。

 惚れられたかもしれない。

 ちなみに古羊姉妹は、関わり合いたくないのか、静かにご飯を食べていたよ☆



「ち、違うよ、ヨーコ姉? オレ、マジでデリヘルになんか興味ねぇから! オレの初めては昔から……いや、1万年と2000年前からヨーコ姉にあげるって決めてるから! だから安心して!」

「ほら洋子。はい、ソーセージ。あ~ん?」
「あ~ん」



 サムズ・アップを浮かべる弟を無視して、芽衣がマイ☆エンジェルの口の中へ、ソーセージを放り込む。

 誰も弟の話しを聞いていなかった。

 なんだろう?

 今の弟からは、凄いシンパシーを感じる。

 俺が1人、弟くんの家庭内での扱いに胸を高鳴らせていると、玄関から古羊家のミニマム・ママンが「洋子ちゃ~ん」と、可愛らしい声をあげながら、トテトテ♪ とリビングへ戻って来た。

 その手には、小型の小包みが握られており、ママ様はソレを「はいっ」と言って、娘に手渡した。



「お友達から、洋子ちゃん宛ての荷物が届いてるわよぉ」
「『お友達』? 誰だろう? えっとぉ……あっ!」



 よこたんが荷物の送り主を確認した瞬間、なんとも言えないガッカリした顔を浮かべた。

「ど、どうしたヨーコ姉?」と、心配するスキンヘッドを尻目に、彼女の両隣を陣取っていた芽衣と大和田ちゃんが、荷物の送り主を盗み見て……ニンマリ♪ と笑みをこぼしていた。



「えっ? なんで2人とも、そんなニッコリしてるの? なんか怖ぇよ?」
「いやいや、何でもないしぃ~?」
「それよりも士狼? はい、荷物」



 そう言って、妹から小包みをサラッと奪い取り、俺に渡してくる芽衣。

 いやいや?

 ソレ、アナタの妹宛てに届いた荷物でしょ? と口を開こうとしたが、すぐさま送り主のらんの名前を見て、考えを改める。

 そこには――我らがパツキンロリ巨乳、宇佐美こころ氏の名前が記されていた。

 送りモノの名称は……薬品っ!?



「こ、コレって、もしかして!?」



 俺は申し訳ないと思いつつも、小包みの中身をオープンすると、そこには100mlミリリットル程の栄養剤のような、3本の茶色い瓶と、1枚の手紙が鎮座していた。

 俺は導かれるように手紙を手に取り、そこにつづられている彼女の文字へと視線を這わせ、



『遅れてスマヌ! 解毒薬では無いが、一応2人に効いておる薬を打ち消す薬を作ってみたぞい! コレを飲めば、2人の身体はいつも通りに戻るハズじゃ! ……ただ注意事項として――』

「オウ・マイ……ガッ!?」



 気がつくと手紙から視線を外し、俺は苦渋に満ちた表情で悲しみを吐き捨てていた。

 はい、俺のドリームタイム終了のお時間です!

 いつの間にか俺の背後まで近づき、手紙を読んでいた芽衣と大和田ちゃん、そして俺と全く同じ顔をしている爆乳わん娘。

 芽衣はそんな悲しみに暮れる俺達の事なんぞ完全に無視して、ヒョイッ! と小包みの中から茶色い小瓶を1つ掴みとると、今日1番と言わんばかりの笑みを深めて。



「はい、士狼❤ グビッ! といきましょうか♪」

「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? 俺はまだ、このドリームタイムを全力で楽しんでねぇぇぇぇぇぇっ!?」

「往生際が悪いですね……大和田さん?」
「了解、会長!」
「ぷぎゃっ!?」



 大和田ちゃんによって顔を固定され、首を振って逃げられなくされてしまう。

 ふふっ♪ 天使に触れたよ?

 とか考えている場合じゃない、ヤバい!

 芽衣によって、ゆっくりと俺のイケてる唇に向かって差し出されてくる解毒薬(?)を前に、慌てて言葉をつむいでいく。



「ま、待って、待って! せめて俺の言い分だけでも聞いてっ! あっ、そうだ! 口移しでなら大歓迎――ぷごぉっ!?」

「問答無用です」
「さぁ飲め、シロパイ! 抵抗しても無駄だ! 無理やりにでも飲ませてやるっしょっ!」



 あぁっ!? と、よこたんの悲痛な声と共に、妙にドロリッとした粘液性のあるソレが、俺の口に流し込まれる。

 ソレは俺の口内を一瞬で蹂躙し、抵抗するヒマもなく、あっという間に喉を通過。
 



 ――瞬間、俺の身体が某メガネの名探偵もビックリのスピードで縮みだした。




「ちょっ!? 会長、会長! ストップ、ストップ! なんかシロパイがヤバい! マジヤバい!?」
「し、士狼っ!?」
「う、うわぁっ!? し、ししょーの身体が小さくなってくよぉ!?」



 突然の出来事に慌てふためく生徒会女性陣。

 そんな事お構いなしとばかりに、ガンガン小さくなっていく俺の身体。

 ……ってぇ、何コレぇ!?



「け、喧嘩狼がクソガキにワープ進化しやがった!?」
「あらあら、まぁまぁ」



 信じられないモノでも見るかのように目を見開く、古羊ファミリー。

 気がつくと、あらビックリ☆

 あんなにたくましかった胸板は、芽衣もびっくりの試される大地へ。

 ビキビキに血管の浮いた両腕は、ひょろっとした細腕に。

 カモシカのようにしなやかな両足は、マンチカンの如く短足へ。

 そして極めつけは、全ての女性をメロメロにするであろう、俺の甘いマスクという名の顔面が、古羊ママンもビックリの童顔へと逆戻りし……って、おいおいおいおい!?



「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「し、ししょーがっ!? ししょーが……ししょーの身体が5歳児の子どもみたいになちゃったよぉ!?」



 ブッカブカのスカジャンを羽織って、というか被さっている俺の身体を見て、よこたんが「キャーッ!」と絶叫をあげ……あれ?

 なんか今、喜びに満ちた声を上げなかった?

 俺は頭上いっぱいにクエスチョンマークを浮かべながら、よこたんの顔を下から見上げた。

 ……そこには明らかに理性の色を失った笑みを浮かべた、大天使よこたんの姿があった。



「よ、よこたん? ど、どうしたのかな? そんな肉食獣めいた目で俺を見てきて――うわっ!?」
「あぁもう我慢できなぁぁぁぁぁぁぁいっ!」



 よこたんは暴走したように瞳にハートマークを浮かべながら、小さくなった俺を抱きかかえるなり、スリスリと頬ずりし始めた。



「か、可愛いっ! 何コレッ!? ししょーが、すっっっっっっごく可愛くなっちゃったよ! ねぇメイちゃん!」

「ちょっ!? 落ち着け、よこた――ぷぎゅっ!?」



 スリスリ♪ と、俺の頬に自分の頬をバカ親よろしく擦りつけてくるマイ☆エンジェル。

 あ、アカン!?

 完全に暴走している!

 周りが目に入ってない!?

 あまりにも突然の出来事に、未だ動くことが出来ない古羊ファミリー。

 そんなマイファミリーから制止の声が掛からない事をいいことに、しこたま俺の頬をスリスリ♪ ぷにぷに❤ してくる、ラブリー☆マイエンジェル。

 く、苦しい!?

 だ、誰か助けて!?

 ハッ!? そうだ!

 こんなときこそ、我らが生徒会長の出番じゃないか!

 なんやかんやで、俺が困っているときは、いつも助けてくれるアイツのことだ。

 今回もさりげなく俺を助けてくれるハズだ!



「め、芽衣! 助けて――」

「洋子、ジッとしてなさい? 被写体がブレるわ。大和田さん? レフ版持って、そっちに固定して?」

「いや順応早すぎでしょ、パイセンたち……。もっと驚けし」



 ――くれない。



 どこから取り出したのか、一眼レフを装備した芽衣が、幼児化した俺を指紋が擦り切れんばかりの勢いでシャッターを切り続ける。

 その瞳は獲物を見つけたスナイパーのように鋭く、シャッターを切る人差し指には、何の躊躇ためらいもなかった。

 な、なんだろう? 

 今の古羊姉妹……メチャクチャ怖い。



「ちょっと会長! 写真撮ってる場合じゃないっしょ!? シロパイ、小さくなったんだよ? もっと取るべきリアクションがあるっしょ!?」

「大変です、大和田さん。わたし、もしかしたら、ショタコンかもしれません」
「会長……真顔でソレを聞かされたウチは、どうすればいいワケ?」
「うひゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? 可愛い! 可愛いよ、ししょぉぉぉおぉぉぉぉぉぉっ!?」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? た、助けて大和田ちゃん!? お、俺、可愛かあい殺される!? このままじゃ、よこたんに可愛殺されるよぉぉぉぉぉっ!?」

「あぁもうっ!? 古羊パイセン、少しは落ち着けっしょ!」



 ガバッ! と、ひったくりよろしく、爆乳わんから俺を奪いとる大和田ちゃん。

「あぁっ!?」と、名残惜しそうな声をあげるマイ☆エンジェル。

 その瞳は、ジャンキー特有の危険な色が浮かんでいて、油断できない。



「シロパイ、大丈夫だし?」
「た、助かったぁ~。ありがとう、大和田ちゃん」
「……いやいや、後輩として当然の事をしたまでだし」
「??? 大和田ちゃん?」



 何故か俺の顔を見るなり、一瞬だけフリーズしたように固まる大和田ちゃん。

 かと思えば、ゆっくりと俺を床へ下ろすなり、コミケのカメラ小僧よろしく、ローアングルから無心でシャッターを切っていた芽衣のもとまで近づく彼女。

 そのまま芽衣の隣に何故かスタンバイされていた真っ白なレフ版を持ち上げると、何も言わず俺のすぐ傍まで近づき、



「会長っ! レフ版、この位置でいいですか!?」

完璧パーフェクトです! はいっ、しっかり固定して! 洋子、ちょっとそこを退いてください。光が入って写りが悪くなります。はい士狼、あと10枚いきますよ? 流動的にポーズを変えていって!」

「ガチのヤツじゃん、おまえら……」



 いつの間にか大和田ちゃんと結託した芽衣が、鬼気迫る表情で幼児化した俺を激写していく。

 その傍らで鼻息を荒くして、今にも俺に襲い掛かろうとする爆乳わん娘。

 アカン、喰われる!?

 なんとも言えない原始的恐怖を俺が感じていると、ふわっ♪ と足下に例のパツキン巨乳からの手紙が舞い降りてきた。

 俺は興奮したように俺を見下ろす自称乙女たちを尻目に、再びマッド・サイエンティストの手紙に視線を落とすと、そこには、



『――ただ注意事項として、この薬を服用すると、一時的に体が小さくなるから気をつけるのじゃ!』

「……うっさみぃ~ん、注意が遅ぇよ」



 俺は1度天井を仰ぎながら、再び狂ったように俺の子どもの姿を激写する乙女たちに視線を向けた。

 その瞳は、みな狂気に満ち満ちていて……うん。

 すっごい身の危険を感じるや。



「はぅわっ!? み、見てみぃノブッ! 喧嘩狼があんなミニマムに……ッ!? アカン、愛らし過ぎてイクッ❤」

「あらあら? どちら様ですか?」
「うわぁっ!? 鷹野さんに大和田さん!? 何でウチに!?」

「すみません、勝手にお邪魔してしまい。ウチの鷹野が『むっ? この家からこうばしいお尻の香りがするぞ?』と言って聞かなくて……」



 気がついたら、鼻血を出して俺を凝視しているハードゲイとタマキン兄さんが、古羊ファミリーと会話を繰り広げていた。

 というか、いつの間に来たんだね、キミたち?



「はい士狼っ! もっとコッチに集中して! 目線コッチに!」

「ね、ねぇシロパイ? 1度だけでいいから、ウチのこと『お姉ちゃん』って呼んでみてくれない? ねっ、お願い? お菓子あげるから?」

「ハァ、ハァ、ハァ……❤ し、ししょー? ほらっ、コッチへおいで? 大丈夫。怖くない、怖くないよぉ~?」



 周りにまだ大和田ちゃん達が居るというのに、猫を被ることを止めた芽衣が、必死にシャッターを切っていく。

 そのすぐ近くでは、瞳に危ない光を宿し、これでもかと口角を緩ませ、俺に「お姉ちゃん♪」と呼ばせようと1人画策してくる、大和田ちゃん。

 母性が爆発した結果、1周回って変質者と化した、ラブリー☆マイエンジェルよこたん。

 なるほど、これが恐怖というものか。

 また1つ賢くなってしまった。



「……どうして俺の冬休みは、こう平穏無事に終わらないのだろうか?」



 そうつぶやいた瞬間、俺の身体は再び爆乳わん娘によって、強く抱きしめられていた。


【第10部 おわり】
おまけイラスト
古羊姉妹(Ver.エプロン)
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