みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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最終部 シンデレラボーイはこの『最強』を打ち砕く義務がある!

第16話 とある少年のナンパ活動記

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「……ねぇシロパイ? コレってナンパ対決だよね?」
「ん? そうだけど、どうしたよ大和田ちゃん? そんな苦い顔を浮かべて?」
「そりゃ浮かべたくもなるし……」



 そう言って大和田ちゃんは、駅前の閑散かんさんとした公園内を見渡しながら、小さく溜め息をこぼした。

 シロウ・オオカミのナンパ行脚あんぎゃがスタートしてから5分ほどが経過した、森実駅前の公園内。

 そこには大人な女性はおろか、人っ子1人としていない、まさに俺たち生徒会役員だけの貸切状態だ。

 さっそく元気が「ひゃっほぉ~、貸切やぁ!」と、喜び勇んでブランコをぎはじめる。

 そんな小学2年生の心に戻った元気を横目で眺めていた芽衣が、こめかみを押さえて、小さく首を横に振った。



「士狼……一応確認しておきますが、勝負の趣旨しゅしは分かっていますか?」
「? あたぼーよ、俺が言い出したことだぞ? 分かっているに決まってんだろうが」
「ソレを聞いて余計に頭が痛くなりました……」
「ねぇ、ししょー? ここに女の人は居ないから、ナンパは出来ないよ?」



 早く別の場所に行った方がいいんじゃ? と、心配そうな顔を浮かべる爆乳わん娘に、俺は勝利のVサインをかかげて、ニカッ! と笑ってみせた。



「大丈夫だ、問題ない! 全て予定通りだ」
「「「予定通り?」」」



 俺は声をハモらせ首を傾げる乙女たちの前で、ポケットに仕舞いこんでいたホイッスルを取り出してみせた。

「???」と、頭の上にクエスチョンマークを浮かべる、生徒会ガールズたち。

 そんなキュートな彼女たちに見せつけるように、俺は取り出したホイッスルを口に含んで、


 ――ぴゅぃぃぃぃぃ~っ!


 と卑猥な音色を奏でた。

 瞬間、公園内の草木に隠れていた30数人の男たちが、一斉に姿を現した。



「「「「「やっと出番か!」」」」」

「う、うわわっ!? お、男の子が!? いっぱい男の子が集まってきたよぉ!?」
「これはまた……すごい絵面ですね」
「うわぁ……この一帯だけ男性ホルモンが凄(すさ)まじいし。凄まじく……気持ち悪いし」



 驚くマイ☆エンジェル。ドン引きする芽衣。眉根をしかめる大和田ちゃんに、ブランコで遊ぶ元気。

 そしてワラワラッ! と、俺たちももとへと集まって来る野郎ども。

 そこで「あれ?」と芽衣が『あること』に感づいた。



「この人たち、2年A組とC組の男子生徒たちじゃありませんか?」
「えっ? あっ、ほんとだ!? よく見たら、見知った顔がいっぱいだよ!」
「つぅか何か気持ち悪くなったから、ウチ、帰ってもいい?」



 芽衣たちが気づくのとほぼ同時に、男達の中から我が盟友めいゆう、アマゾンが俺たちの前へと姿を現した。



「大神、予定通り2年A組男子15名、及び2年C組男子17名――総勢32名、いにしえの盟約にのっとせ参じたでそうろう

「うむ、ご苦労」
「し、士狼……? 彼らは一体……?」



 ギリギリの所でなんとか猫を被っている芽衣のぎこちない声が鼓膜をくすぐる。

 俺はツツーと額に冷や汗を流している女神さまに向けて、「ふふっ」と、勝利の笑みを溢してみせた。



「ふふふっ♪ コイツらこそ、この勝負のために2日前からスタンバイしてくれていた『VSバーサス大我さん』メンバーだ!」



 ドンッ! と、全員やたらカッコいいポーズを取りながら、誇らしげな笑みを浮かべる。

 さすがは全員『彼女居ない歴=年齢』の猛者もさだけあって、イイ顔してやがるぜ。

 芽衣はそんな全員の顔をゆっくりと見渡しながら、得心がいったように「なるほど……」と溜め息をこぼした。



「そういうことですか……」
「? 会長、何がそういうコトだし? ウチには一向に話が見えないんだけど?」

「つまり士狼は、このナンパ対決で、彼ら32人の男の子たちを『ナンパした』というコトにして、小鳥遊くんに勝とうとしているんですよ」

「ず、ズルっこだぁ!? ず、ズルっこはダメだよ、ししょーっ!?」
「ズル? 違うぞ、よこたん。いや、我が大いなる弟子よ」



 俺は「ズルっこだよぉ!」と批難してくる愛しの弟子に、心からの笑みをプレゼントしながら、言ってやった。



「よく思い出してみろ? 俺は『ナンパ対決』と言っただけで、別に『女をナンパしろ』とも『初対面の人間をナンパしろ』とも言ってないぜ?」

「あっ!? た、確かに! で、でもでも!? こんなズルっこ、審判の人が許さないと思うよ……? それはどうするの?」

「ふっふっふっ♪ よこたんよ、もう1度よく思い返してみろ? この勝負内容を決めたのは誰だ? ……そう、俺だ! つまりこの勝負において、審判は俺! 神は俺なんだよ! よって俺の言うことは、全て正しい! 故に俺がルールなのだ!」

「う、うわぁ……。ししょー、すごい悪い顔をしてるよぉ」
「シロパイの言い分は分かったけど、ちょっと卑怯臭くない?」



 卑怯? 

 おいおい? 我が愛しのプチデビル後輩は、一体何を言っているのやら。

 俺は爆乳わん娘の方へ向けていた身体を、大和田ちゃんの方へ向き直しながら、小さく肩を揺すってみせた。



「それは違うぜ、大和田ちゃん。かつて俺たちの心のアイドル『タマキン@兄さん』が、こんなイイことを言っていた」

「人の兄をナチュラルに『タマキン』呼ばわりするなって、何度言ったら分かるし。……って、うん? お兄ちゃんが?」



 なんて言ったの? と、可愛く小首を捻る大和田ちゃんに、俺はあの日のことを思い返しながら、兄者の言葉をなぞるように、こう言った。



「――『卑怯、汚いは敗者の戯言ざれごと』と。俺も……心からそう思う」
「そんなイイ顔で言われても、ちっとも心に響かないし……」



 どうやら俺の未来の妹様は、この言葉の素晴らしさが理解できなかったらしい。

 もう少し言いつのろうかと俺が口を開こうとするよりも早く、すぐ傍で待機していたアマゾンが、痺れを切らしたかのように唇を動かした。



「大神、そろそろ行こうぜ? あの『なろう』主人公に目に物を見せてやりによぉ」
「おっとぉ、もうそんな時間か。よし……行くぞ野郎共! 出陣じゃぁぁぁぁぁっ!」
 


 ――ウォォォォぉぉぉぉぉッ!



 男達の勝鬨かちどきの声が、昼下がりの公園内に木霊する。

 俺はドン引きする生徒会女性陣と、覚悟を決めた男たちを引きつれて、森実駅前に設置された銅像前へと歩みを進めた。

 絶対の勝利を確信して。
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