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EXTRAにゃんっ! みんなの天使サマは最強ヤンキーに甘く壊される
中編:平凡な俺が女神さまを嫁にしたんだが、どうキスすればいい?
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結局、2年A組男子一同の力を借りても『初キッスはフレンチorベロンチョ?』議論は終結せず、本日は解散となったその日。
俺はまっすぐ我が家に帰宅……することなく、この議論に終止符を打つべく生徒会室へと足を運んでいた。
「――というワケでさ? 初デートはお子様キッスをした方がいいのか、それともベロンチョの方がいいのか? ぜひとも女の子側の意見を聞かせてくんない?」
「ねぇシロパイ? ソレは別に構わないんだけどさ? ……普通、振った女に聞きに来る、ソレ?」
「しょ、しょうがないよ大和田さん? ししょーにデリカシーを求めるのは酷な話だからさ……」
「ヤダぁ……俺の後輩と弟子が妙にトゲトゲしい件について……」
生徒会室で仕事をしていた大和田ちゃんと爆乳わん娘の湿った視線が俺を貫く。
恥を忍んで女の子代表として2人に尋ねたというのに、返ってきたのは批難じみた目線っていうね。
……うん、分かってる。我ながらクソ野郎じみたコトをしているなって事くらい、自覚している。
でも、もう頼れるのがこの2人しか居ないんだよ!
「頼むよ2人とも!? 俺を助けると思って! もう2人にしか頼ることが出来ねぇんだよぉ!?」
「「…………」」
俺がそう言った瞬間、無言のままお互いの顔を見つめ合う2人。
ピンク色に染められた髪に、ますます女性っぽいシルエットになりつつある大和田ちゃんが「どうする?」とばかりに爆乳わん娘を見やる。
よこたんは、この冬さらに実ったのか、制服の上からでもハッキリと分かる程のダイナマイト☆パイパイをバルン♪ と揺らして、苦笑を浮かべてみせた。
「しょうがないなぁ。今回だけだよ、ししょー?」
「うわっ、マジか!? 古羊パイセン、絶対男が出来たらヒモになるまでドロドロに甘やかすタイプっしょ? すげぇダメな女の子の匂いがするもん!」
「そ、そそそっ!? そんな事しないもん!? ひ、酷いよ大和田さんっ!?」
非難がましい視線を大和田ちゃんに送るマイ☆エンジェル。
大和田ちゃんは我が愛しの1番弟子からの視線を軽くいなしながら、今度は軽く肩を竦めて、小さく溜め息をこぼした。
「古羊パイセンがヤルなら、しょうがない。今回だけ付き合ってあげるし」
「せやな。ほんまは、あの牝犬が殺したいほど妬ましいが、喧嘩狼の頼みや! 全力全開で力になってやるぜよ!」
「ありがとう、よこたん、大和田ちゃん……あとなんで鷹野がココに居るわけ? どっから湧いて出てきた?」
にゅっ! と、当たり前のように元気の机の下から這い出てきた森実が誇るケダモノの槍、鷹野翼が、さも当然のように会話にカットインしてきたワケだが……もうあまり驚いていない自分に恐怖を感じる。
なんだろうか?
だんだんと俺の日常に鷹野が侵食していても、さほど気にならない自分が超怖い。
これがマインド・コントロールというヤツか!?
なんて1人で身体を小刻みに震わせている間に、ふと気がつく。
「あれ? 俺の心のオアシスであるタマキン兄さんの姿が見当たらないが……どこに居るの兄さん?」
「人の兄をタマキン呼ばわりすんなし……」
「あぁっ、ノブなら今日は来てないぜよ。今は森実の町に潜伏している東京卍帝国の残党を駆除するのに忙しいらしくてのぉ。時間が取れんらしいぜよ」
そう言ってガハハハッ! と呑気に笑うハードゲイ。
クッ、マジか!?
ということは、今日はこのバーサーカーが暴走しても、止めてくれる人が居ないという事か!?
いや、一応兄上の血を受け継いでいる大和田ちゃんも居るから、大丈夫なのか?
「? どうしたの、ししょー? 顔色が悪いよ?」
「いや……大丈夫だ。問題ない。あぁ、まったくもってモーマンタイさ」
一抹の不安を感じつつも、お尻をキュッ! と引き締め、覚悟を決める。
「それでさっそく本題に入るんだけどさ……初デートはお子様キッスにするべき? それともイタリア人も顔負けのベロンチョにするべき?」
さぁどっち!? と、3人の間に問いを投げかけた瞬間、エサを与えられた鯉のように鷹野が勢いよく口を開いた。
「ベロンチョッ! ベロンチョ一択や!」
「う~ん? 初めてのデートだし、ボクは軽くチュッ♪ てするくらいが、ちょうどいいと思うけどなぁ?」
「いやいや!? ナニを言うんや、メスブタ!? 初めての喧嘩狼とのデートやぞ? ネットリじっくりブッチュー❤ したあげく、お互いの性欲と言う名のエンジンに火を点けて、そのあとはホテルで創聖合体! そのまま1万年と2000年間くらいケダモノのようにお互いの肉体を貪り合い、楽器という名の若い肉体でフリーセッションを奏でるデートこそ至高にして究極やろうが! ふふっ♪ 初デート、楽しみやな喧嘩狼!」
「いや、なんで鷹野とデートに行く前提で話が進んでんだよ? 行かねぇよ?」
そ、そんなバカな!? と、膝から崩れ落ちるハードゲイと「け、ケダモノのように貪り合う……はぅ」と顏を真っ赤に染め俯いてしまう我が弟子1号。
もはやこの2人は使い物にならないな。
というか、鷹野がナチュラルに爆乳わん娘のことを「メスブタ」呼ばわりしていたんですけど……なんなの? 憎しみが凄まじいんですけど?
何があったの、この2人?
「まぁいいや。それで? 大和田ちゃんはどっちよ?」
「その前に1つ、確認したいことがあるし」
ピンッ! と、人差し指を立てながら、1歩俺と距離を詰める愛しの後輩。
そのまま人差し指をトスっ! と俺の胸に突きさしながら、大和田ちゃんは確かめるようにこう言った。
「シロパイが会長とキスしたいのは分かったけど……ぶっちゃけソレって大丈夫なワケ?」
「大丈夫って、何が? えっ? もしかしてセクハラとかで訴えられちゃう?」
「そうじゃない! ウチが言いたいのはね? シロパイがいざ会長とキスする時が来たら、テンパらずに、ちゃんとする事が出来るのかってコト!」
「あぁ~……ししょーなら絶対に『アバババッ!?』しそうだよね?」
「でしょ? ウチもそう思う」
「何気に失礼だな、チミたち……」
うそっ!?
俺の信用……低すぎっ!?
と、どこぞの広告のような事を考えていると、大和田ちゃんは潤んだ瞳のまま「だからね?」と口を開き、
「本番で『アバババッ』しないように、練習しておいた方がいいと思うんだよね、ウチは」
と、熱い吐息を吐きだした。
……ん?
えっ? 練習?
「えっ? 練習って何の?」
「もちろんキスの練習に決まってるっしょ?」
さも当然のようにそう口にする、我がプチデビル後輩。
えっ、ちょっと待って?
キスって、そんな駄菓子屋に行く感覚でするモノだっけ?
混乱する俺をよそに、大和田ちゃんは熱っぽい視線で俺を見据えながら、
「しょうがないから、今日は特別にウチが会長の代わりにシロパイの練習に付き合ってあげる」
「えっ? えっ?」
そう言って、俺の股に自分の足を差しこむような形で、俺を壁際まで追い込む大和田ちゃん。
まさか後輩から壁ドンをされる日がくるなんて、夢にも思ってなかったわ。
「はわわっ!? はわわっ!?」と、俺と同じく混乱したように右往左往するマイ☆エンジェルと「ズルいでノブリン! ワシもヤリたい!」と俺の練習相手を名乗り出るキング・オブ・ホモ。
大和田ちゃんは、そんな鷹野たちを尻目に、ゆっくりとその唇を蠱惑的に歪めて、
「大丈夫。これは練習だから、浮気にならないし」
「れ、練習だから浮気にならない? ほ、本当に? で、でも……」
「大丈夫だし。自転車だって、練習しないと乗れないっしょ? キスも同じ。練習しないと。むしろ下手クソだったら、会長に嫌われるかもよ?」
「そ、それは困る!? いやでも……」
「大丈夫、大丈夫! ただキスの練習をするだけ。練習なら浮気にならないし、キスも上手くなって会長もハッピー♪ シロパイもハッピー♪ みんなハッピー♪ ね? 問題ないっしょ?」
まるで甘い毒のように、大和田ちゃんの言葉が俺の脳髄へと溶けていき、思考が痺れて上手く考えが纏まらない。
むしろ彼女の言っている事が正しいのではないか? とすら思えてくる。
いや実際正しいのだろう。
そうか、キスの練習は浮気にはならないのか。
浮気にならないなら、キスしても大丈夫……あれ?
何かがおかしい? と、俺の中の理性が警報をあげた気がしたが、まるで囁くようにスルスル俺の中に入ってくる彼女の言葉が、そんな疑問をアッサリと洗い流してしまう。
気がつくと、愛しのプチデビル後輩の湿った唇が、目の前にあった。
「ねぇシロパイ? ……練習、しよ?」
「お、大和田ちゃん……っ?」
「つ、つつつっ! 次、ボク! 次、ボクね!?」
「何をふざけた事を言っとるんや、メスブタ!? 次はワシに決まっとろうが! あっ、ワシは顎をクイッ♪ て! 顎をクイッ♪ てやって欲しいぜよ!」
「あっ、ズルい!? な、ならボクは、後ろから優しく抱きしめつつ、耳元で甘い言葉を囁いて――ッ!」
逃れられない磁石のように、大和田ちゃんの唇へと引き寄せられる俺。
そんな俺たちのすぐ真横では、よこたんと鷹野が何か言い争っている気配を感じたが……何を言っているのかまったく頭に入ってこない。
もはや俺の細胞が、本能が、目の前の少女を貪り喰らえ! と、大音量で訴えかけてきて、何も耳に入らない。
そして、頭の中が真っ白になるのと同時に、大和田ちゃんの影が俺の影に重なる。
……寸前。
――グイッ!
と謎の力により、大和田ちゃんの身体が後方へと無理やり引っ張られた。
「こぺぇっ!?」
「お、大和田ちゃんっ!?」
「えっ? えっ!? な、何が起きたの!?」
「なんや敵襲か?」
瞬間『何事だ!?』とばかりに、全員弾かれたように大和田ちゃんの背後へと意識を向けると、そこには、
「――そこまでです小娘。人の男に手を出す輩は、馬に蹴られて死んじゃいますよ?」
大和田ちゃんの背後、そこには――オレンジサファイアを彷彿とさせる亜麻色の髪を靡かせ、意志の強そうな真紅の瞳を宿した鬼が……古羊芽衣がニッコリ❤ と微笑み立っていた。
唇だけ綺麗な弧を描いているのに、目は全然笑っていない未来のマイワイフ、古羊芽衣が立っていた。
あっ、ヤバい……。
アレ、ブチ切れている時の笑顔だわ。
いつの間にか音もなく現れ、かつ大和田ちゃんを処刑しようとする芽衣の笑顔を見た瞬間、よこたんが「アババババババババッ!?」と壊れたロボットのように部屋の隅へと避難し、鷹野に至ってはいつの間にか姿を消していた。
そんな2人の事などまったく意に反していない芽衣の白魚のような指先が、大和田ちゃんの喉をキリキリッ!? と背後から締め上げていく。
片手で持ってのネッグ・ハンギング・ツリーだ。
「まったく、油断も隙もないんですから」
芽衣は小さい子を叱るように「めっ!」と可愛らしく口にするのだが……やっている事は全然可愛くなかった。
もう「めっ!」でやっていい行動じゃねぇよ、ソレ。
というか、現役女子高校生がやっていい攻撃じゃねぇよ、ソレ!
ソレが許されるのは、花山さん家の薫くんだけだよ?
もちろん、そんなツッコミはしないけどさ。
……だって今の芽衣、超怖いし。
そのまま片手で大和田ちゃんの身体をスッ! と持ち上げるや否や、
――ポイッ♪
と、ゴミを捨てるように背後へと投げる。
ドシャッ!? と、重苦しい音を立てながら、床に倒れる大和田ちゃん。
ちょっと?
ピクリともしていないんですけど?
大丈夫、アレ?
死んでない?
異世界転生してない?
可愛いプチデビル後輩を心配するが、普通に呼吸をしているあたり、どうやら意識を失っているだけらしい。
ほっとしたのも束の間、芽衣のうすら寒い笑みが、俺の顔を捉えた。
瞬間、部屋の温度が3度ほど下がった気がした。
はっは~ん?
さては俺……このままじゃ死んじゃうな?
軽く俺を5人は殺せそうな程の殺気をまき散らす我が彼女を前に、小さく瞠目し……覚悟を決めた。
「さて士狼? わたしが何を言いたいのか……分かっていますね?」
「あぁ……もちろんさ」
流石はわたしの彼氏です❤ と、芽衣はニッコリ微笑む。
まさに以心伝心。
何も言わなくても伝わってしまう、まさにカップルの理想像と呼ぶべき光景を前に、思わず胸の奥で『何か』が込み上げて来る。
俺はその情熱に突き動かされるように「みなまで言うな」と言外にそう伝えながら、満面の笑みを浮かべる我が女神さまに、ハッキリと言ってやった。
「――大神士狼、正座します!」と。
俺はまっすぐ我が家に帰宅……することなく、この議論に終止符を打つべく生徒会室へと足を運んでいた。
「――というワケでさ? 初デートはお子様キッスをした方がいいのか、それともベロンチョの方がいいのか? ぜひとも女の子側の意見を聞かせてくんない?」
「ねぇシロパイ? ソレは別に構わないんだけどさ? ……普通、振った女に聞きに来る、ソレ?」
「しょ、しょうがないよ大和田さん? ししょーにデリカシーを求めるのは酷な話だからさ……」
「ヤダぁ……俺の後輩と弟子が妙にトゲトゲしい件について……」
生徒会室で仕事をしていた大和田ちゃんと爆乳わん娘の湿った視線が俺を貫く。
恥を忍んで女の子代表として2人に尋ねたというのに、返ってきたのは批難じみた目線っていうね。
……うん、分かってる。我ながらクソ野郎じみたコトをしているなって事くらい、自覚している。
でも、もう頼れるのがこの2人しか居ないんだよ!
「頼むよ2人とも!? 俺を助けると思って! もう2人にしか頼ることが出来ねぇんだよぉ!?」
「「…………」」
俺がそう言った瞬間、無言のままお互いの顔を見つめ合う2人。
ピンク色に染められた髪に、ますます女性っぽいシルエットになりつつある大和田ちゃんが「どうする?」とばかりに爆乳わん娘を見やる。
よこたんは、この冬さらに実ったのか、制服の上からでもハッキリと分かる程のダイナマイト☆パイパイをバルン♪ と揺らして、苦笑を浮かべてみせた。
「しょうがないなぁ。今回だけだよ、ししょー?」
「うわっ、マジか!? 古羊パイセン、絶対男が出来たらヒモになるまでドロドロに甘やかすタイプっしょ? すげぇダメな女の子の匂いがするもん!」
「そ、そそそっ!? そんな事しないもん!? ひ、酷いよ大和田さんっ!?」
非難がましい視線を大和田ちゃんに送るマイ☆エンジェル。
大和田ちゃんは我が愛しの1番弟子からの視線を軽くいなしながら、今度は軽く肩を竦めて、小さく溜め息をこぼした。
「古羊パイセンがヤルなら、しょうがない。今回だけ付き合ってあげるし」
「せやな。ほんまは、あの牝犬が殺したいほど妬ましいが、喧嘩狼の頼みや! 全力全開で力になってやるぜよ!」
「ありがとう、よこたん、大和田ちゃん……あとなんで鷹野がココに居るわけ? どっから湧いて出てきた?」
にゅっ! と、当たり前のように元気の机の下から這い出てきた森実が誇るケダモノの槍、鷹野翼が、さも当然のように会話にカットインしてきたワケだが……もうあまり驚いていない自分に恐怖を感じる。
なんだろうか?
だんだんと俺の日常に鷹野が侵食していても、さほど気にならない自分が超怖い。
これがマインド・コントロールというヤツか!?
なんて1人で身体を小刻みに震わせている間に、ふと気がつく。
「あれ? 俺の心のオアシスであるタマキン兄さんの姿が見当たらないが……どこに居るの兄さん?」
「人の兄をタマキン呼ばわりすんなし……」
「あぁっ、ノブなら今日は来てないぜよ。今は森実の町に潜伏している東京卍帝国の残党を駆除するのに忙しいらしくてのぉ。時間が取れんらしいぜよ」
そう言ってガハハハッ! と呑気に笑うハードゲイ。
クッ、マジか!?
ということは、今日はこのバーサーカーが暴走しても、止めてくれる人が居ないという事か!?
いや、一応兄上の血を受け継いでいる大和田ちゃんも居るから、大丈夫なのか?
「? どうしたの、ししょー? 顔色が悪いよ?」
「いや……大丈夫だ。問題ない。あぁ、まったくもってモーマンタイさ」
一抹の不安を感じつつも、お尻をキュッ! と引き締め、覚悟を決める。
「それでさっそく本題に入るんだけどさ……初デートはお子様キッスにするべき? それともイタリア人も顔負けのベロンチョにするべき?」
さぁどっち!? と、3人の間に問いを投げかけた瞬間、エサを与えられた鯉のように鷹野が勢いよく口を開いた。
「ベロンチョッ! ベロンチョ一択や!」
「う~ん? 初めてのデートだし、ボクは軽くチュッ♪ てするくらいが、ちょうどいいと思うけどなぁ?」
「いやいや!? ナニを言うんや、メスブタ!? 初めての喧嘩狼とのデートやぞ? ネットリじっくりブッチュー❤ したあげく、お互いの性欲と言う名のエンジンに火を点けて、そのあとはホテルで創聖合体! そのまま1万年と2000年間くらいケダモノのようにお互いの肉体を貪り合い、楽器という名の若い肉体でフリーセッションを奏でるデートこそ至高にして究極やろうが! ふふっ♪ 初デート、楽しみやな喧嘩狼!」
「いや、なんで鷹野とデートに行く前提で話が進んでんだよ? 行かねぇよ?」
そ、そんなバカな!? と、膝から崩れ落ちるハードゲイと「け、ケダモノのように貪り合う……はぅ」と顏を真っ赤に染め俯いてしまう我が弟子1号。
もはやこの2人は使い物にならないな。
というか、鷹野がナチュラルに爆乳わん娘のことを「メスブタ」呼ばわりしていたんですけど……なんなの? 憎しみが凄まじいんですけど?
何があったの、この2人?
「まぁいいや。それで? 大和田ちゃんはどっちよ?」
「その前に1つ、確認したいことがあるし」
ピンッ! と、人差し指を立てながら、1歩俺と距離を詰める愛しの後輩。
そのまま人差し指をトスっ! と俺の胸に突きさしながら、大和田ちゃんは確かめるようにこう言った。
「シロパイが会長とキスしたいのは分かったけど……ぶっちゃけソレって大丈夫なワケ?」
「大丈夫って、何が? えっ? もしかしてセクハラとかで訴えられちゃう?」
「そうじゃない! ウチが言いたいのはね? シロパイがいざ会長とキスする時が来たら、テンパらずに、ちゃんとする事が出来るのかってコト!」
「あぁ~……ししょーなら絶対に『アバババッ!?』しそうだよね?」
「でしょ? ウチもそう思う」
「何気に失礼だな、チミたち……」
うそっ!?
俺の信用……低すぎっ!?
と、どこぞの広告のような事を考えていると、大和田ちゃんは潤んだ瞳のまま「だからね?」と口を開き、
「本番で『アバババッ』しないように、練習しておいた方がいいと思うんだよね、ウチは」
と、熱い吐息を吐きだした。
……ん?
えっ? 練習?
「えっ? 練習って何の?」
「もちろんキスの練習に決まってるっしょ?」
さも当然のようにそう口にする、我がプチデビル後輩。
えっ、ちょっと待って?
キスって、そんな駄菓子屋に行く感覚でするモノだっけ?
混乱する俺をよそに、大和田ちゃんは熱っぽい視線で俺を見据えながら、
「しょうがないから、今日は特別にウチが会長の代わりにシロパイの練習に付き合ってあげる」
「えっ? えっ?」
そう言って、俺の股に自分の足を差しこむような形で、俺を壁際まで追い込む大和田ちゃん。
まさか後輩から壁ドンをされる日がくるなんて、夢にも思ってなかったわ。
「はわわっ!? はわわっ!?」と、俺と同じく混乱したように右往左往するマイ☆エンジェルと「ズルいでノブリン! ワシもヤリたい!」と俺の練習相手を名乗り出るキング・オブ・ホモ。
大和田ちゃんは、そんな鷹野たちを尻目に、ゆっくりとその唇を蠱惑的に歪めて、
「大丈夫。これは練習だから、浮気にならないし」
「れ、練習だから浮気にならない? ほ、本当に? で、でも……」
「大丈夫だし。自転車だって、練習しないと乗れないっしょ? キスも同じ。練習しないと。むしろ下手クソだったら、会長に嫌われるかもよ?」
「そ、それは困る!? いやでも……」
「大丈夫、大丈夫! ただキスの練習をするだけ。練習なら浮気にならないし、キスも上手くなって会長もハッピー♪ シロパイもハッピー♪ みんなハッピー♪ ね? 問題ないっしょ?」
まるで甘い毒のように、大和田ちゃんの言葉が俺の脳髄へと溶けていき、思考が痺れて上手く考えが纏まらない。
むしろ彼女の言っている事が正しいのではないか? とすら思えてくる。
いや実際正しいのだろう。
そうか、キスの練習は浮気にはならないのか。
浮気にならないなら、キスしても大丈夫……あれ?
何かがおかしい? と、俺の中の理性が警報をあげた気がしたが、まるで囁くようにスルスル俺の中に入ってくる彼女の言葉が、そんな疑問をアッサリと洗い流してしまう。
気がつくと、愛しのプチデビル後輩の湿った唇が、目の前にあった。
「ねぇシロパイ? ……練習、しよ?」
「お、大和田ちゃん……っ?」
「つ、つつつっ! 次、ボク! 次、ボクね!?」
「何をふざけた事を言っとるんや、メスブタ!? 次はワシに決まっとろうが! あっ、ワシは顎をクイッ♪ て! 顎をクイッ♪ てやって欲しいぜよ!」
「あっ、ズルい!? な、ならボクは、後ろから優しく抱きしめつつ、耳元で甘い言葉を囁いて――ッ!」
逃れられない磁石のように、大和田ちゃんの唇へと引き寄せられる俺。
そんな俺たちのすぐ真横では、よこたんと鷹野が何か言い争っている気配を感じたが……何を言っているのかまったく頭に入ってこない。
もはや俺の細胞が、本能が、目の前の少女を貪り喰らえ! と、大音量で訴えかけてきて、何も耳に入らない。
そして、頭の中が真っ白になるのと同時に、大和田ちゃんの影が俺の影に重なる。
……寸前。
――グイッ!
と謎の力により、大和田ちゃんの身体が後方へと無理やり引っ張られた。
「こぺぇっ!?」
「お、大和田ちゃんっ!?」
「えっ? えっ!? な、何が起きたの!?」
「なんや敵襲か?」
瞬間『何事だ!?』とばかりに、全員弾かれたように大和田ちゃんの背後へと意識を向けると、そこには、
「――そこまでです小娘。人の男に手を出す輩は、馬に蹴られて死んじゃいますよ?」
大和田ちゃんの背後、そこには――オレンジサファイアを彷彿とさせる亜麻色の髪を靡かせ、意志の強そうな真紅の瞳を宿した鬼が……古羊芽衣がニッコリ❤ と微笑み立っていた。
唇だけ綺麗な弧を描いているのに、目は全然笑っていない未来のマイワイフ、古羊芽衣が立っていた。
あっ、ヤバい……。
アレ、ブチ切れている時の笑顔だわ。
いつの間にか音もなく現れ、かつ大和田ちゃんを処刑しようとする芽衣の笑顔を見た瞬間、よこたんが「アババババババババッ!?」と壊れたロボットのように部屋の隅へと避難し、鷹野に至ってはいつの間にか姿を消していた。
そんな2人の事などまったく意に反していない芽衣の白魚のような指先が、大和田ちゃんの喉をキリキリッ!? と背後から締め上げていく。
片手で持ってのネッグ・ハンギング・ツリーだ。
「まったく、油断も隙もないんですから」
芽衣は小さい子を叱るように「めっ!」と可愛らしく口にするのだが……やっている事は全然可愛くなかった。
もう「めっ!」でやっていい行動じゃねぇよ、ソレ。
というか、現役女子高校生がやっていい攻撃じゃねぇよ、ソレ!
ソレが許されるのは、花山さん家の薫くんだけだよ?
もちろん、そんなツッコミはしないけどさ。
……だって今の芽衣、超怖いし。
そのまま片手で大和田ちゃんの身体をスッ! と持ち上げるや否や、
――ポイッ♪
と、ゴミを捨てるように背後へと投げる。
ドシャッ!? と、重苦しい音を立てながら、床に倒れる大和田ちゃん。
ちょっと?
ピクリともしていないんですけど?
大丈夫、アレ?
死んでない?
異世界転生してない?
可愛いプチデビル後輩を心配するが、普通に呼吸をしているあたり、どうやら意識を失っているだけらしい。
ほっとしたのも束の間、芽衣のうすら寒い笑みが、俺の顔を捉えた。
瞬間、部屋の温度が3度ほど下がった気がした。
はっは~ん?
さては俺……このままじゃ死んじゃうな?
軽く俺を5人は殺せそうな程の殺気をまき散らす我が彼女を前に、小さく瞠目し……覚悟を決めた。
「さて士狼? わたしが何を言いたいのか……分かっていますね?」
「あぁ……もちろんさ」
流石はわたしの彼氏です❤ と、芽衣はニッコリ微笑む。
まさに以心伝心。
何も言わなくても伝わってしまう、まさにカップルの理想像と呼ぶべき光景を前に、思わず胸の奥で『何か』が込み上げて来る。
俺はその情熱に突き動かされるように「みなまで言うな」と言外にそう伝えながら、満面の笑みを浮かべる我が女神さまに、ハッキリと言ってやった。
「――大神士狼、正座します!」と。
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