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第11話:賢王の噂
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ヴィンセントが即位して三ヶ月。
トゥリアの元に訪れた近隣住民によれば、新王は即位してすぐに地方へ偵察隊を派遣。
食糧難の民への配給を決め、農地には一年間の税金免除の代わりに作物を自分たちの分だけ抜いた残りを納めるよう通達。
最近ようやく小さな村にも米などが届くようになったらしい。
軍も解体され、無理やり連れて行かれた男たちも帰ってきた。
慰み者にされていた女たちも解放されて、家族の元へ帰ったり治療を受けたりしているそうだ。
(賢王になれそうだね)
痛みを知っているからそこ、彼は優しく賢い王になるだろう。
自然と笑みが浮かぶトゥリア、すると使い魔が森への客人を知らせに来た。
(…おや、来たのかい)
やってきたのはヴィンセントその人だ。
使い魔たちは勝手に判断する事なく、彼を招き入れて良いかどうかトゥリアにお伺いを立てる。
会うべきか少しだけ考えたトゥリアだったが、直接お祝いしてやりたい気持ちもあったため立ち入ることを許した。
「連れておいで」
使い魔は蝶へと姿を変え、ヴィンセントを迎えに行く。
30分もしないうちに辿り着くだろう、トゥリアは館に戻ってお茶を淹れることにした。
しばらくして、玄関前にヴィンセントが到着したことを使い魔が知らせに来る。
出迎えたトゥリアは、立派な国王の衣装に身を包んだヴィンセントを見て眩しそうに目を細めた。
「おやおや、見違えたよ。立派な坊やはすっかり立派な国王じゃないか」
トゥリアの言葉に、照れ臭そうに笑うヴィンセント。
「ありがとうございます、貴女のおかげですよ」
「あたしは何もしてないだろう」
「いいえ、貴女がくれた痺れ薬、最後まで抵抗した国王たちによく効きました」
見苦しく喚いていた国王夫妻と王子に使い、黙らせたらしい。
「…最後まで保身と言い訳だけでしたけどね」
投石刑に処された一家は、死にゆく最後の瞬間まで自分たちだけが至高の存在であり守られるべきだと言っていた。
国民たちが何故これほど怒っているのか少しも理解せず。
王族が国民を苦しめて何が悪い、国民は犠牲となるための捨て駒だとまで言っていた。
「あんな連中と血が繋がっていると思うと虫唾が走ります」
王妃とは血の繋がりがないヴィンセント、しかし国王の子供である事は間違いない。
その事実が彼の中に闇を落としているようだ、トゥリアは優しく微笑むと館に招き入れる。
「そんなこと考える必要ないさ。ほら、中へお入り。お茶の用意をしたから、少し休んでいくと良い」
愛おしいトゥリアの誘いを、ヴィンセントは心からの笑みで受け止めた。
「ありがとうございます、お邪魔します」
懐かしい館の中は、記憶にある姿のまま。
トゥリアと同じく、七年の時など感じさせない。
トゥリアの元に訪れた近隣住民によれば、新王は即位してすぐに地方へ偵察隊を派遣。
食糧難の民への配給を決め、農地には一年間の税金免除の代わりに作物を自分たちの分だけ抜いた残りを納めるよう通達。
最近ようやく小さな村にも米などが届くようになったらしい。
軍も解体され、無理やり連れて行かれた男たちも帰ってきた。
慰み者にされていた女たちも解放されて、家族の元へ帰ったり治療を受けたりしているそうだ。
(賢王になれそうだね)
痛みを知っているからそこ、彼は優しく賢い王になるだろう。
自然と笑みが浮かぶトゥリア、すると使い魔が森への客人を知らせに来た。
(…おや、来たのかい)
やってきたのはヴィンセントその人だ。
使い魔たちは勝手に判断する事なく、彼を招き入れて良いかどうかトゥリアにお伺いを立てる。
会うべきか少しだけ考えたトゥリアだったが、直接お祝いしてやりたい気持ちもあったため立ち入ることを許した。
「連れておいで」
使い魔は蝶へと姿を変え、ヴィンセントを迎えに行く。
30分もしないうちに辿り着くだろう、トゥリアは館に戻ってお茶を淹れることにした。
しばらくして、玄関前にヴィンセントが到着したことを使い魔が知らせに来る。
出迎えたトゥリアは、立派な国王の衣装に身を包んだヴィンセントを見て眩しそうに目を細めた。
「おやおや、見違えたよ。立派な坊やはすっかり立派な国王じゃないか」
トゥリアの言葉に、照れ臭そうに笑うヴィンセント。
「ありがとうございます、貴女のおかげですよ」
「あたしは何もしてないだろう」
「いいえ、貴女がくれた痺れ薬、最後まで抵抗した国王たちによく効きました」
見苦しく喚いていた国王夫妻と王子に使い、黙らせたらしい。
「…最後まで保身と言い訳だけでしたけどね」
投石刑に処された一家は、死にゆく最後の瞬間まで自分たちだけが至高の存在であり守られるべきだと言っていた。
国民たちが何故これほど怒っているのか少しも理解せず。
王族が国民を苦しめて何が悪い、国民は犠牲となるための捨て駒だとまで言っていた。
「あんな連中と血が繋がっていると思うと虫唾が走ります」
王妃とは血の繋がりがないヴィンセント、しかし国王の子供である事は間違いない。
その事実が彼の中に闇を落としているようだ、トゥリアは優しく微笑むと館に招き入れる。
「そんなこと考える必要ないさ。ほら、中へお入り。お茶の用意をしたから、少し休んでいくと良い」
愛おしいトゥリアの誘いを、ヴィンセントは心からの笑みで受け止めた。
「ありがとうございます、お邪魔します」
懐かしい館の中は、記憶にある姿のまま。
トゥリアと同じく、七年の時など感じさせない。
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