少年王は妖艶な妃に恋をする

歌龍吟伶

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第10話

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本当に弱そう。

それがイルヴィンドを見た時の第一印象だった。

自分よりも背が低く、まともに目も合わせられない様子の少年。

ある程度体を鍛えてきたリラフィアでなくとも、彼が心身共に貧弱である事がよく分かる。


(普通の子供みたい…これが王なの?そしてわたくしの夫…)


花嫁の煌びやかな衣装に身を包んでなお、リラフィアは信じられない思いだった。


「よ、よろしくね、リラフィア」


おずおずと小さな声で言われ、盛大にため息をつきたい気持ちを抑えてリラフィアは応じる。


「よろしくお願いいたします、イルヴィンド国王陛下。良き王妃となれるよう尽力いたします」


その心の内では、


(なるほど、きっとお父様は彼に肩入れしているのではなくて早く世継ぎを設けて代替わりさせたいのね)


そう思っていた。

この時はまだ、イルヴィンドの優しさ故の強さも、父の本当の思惑も知らなかったから。

自分の容姿が人並み外れて優れていることは自覚している。

現に、目の前の少年王も顔を真っ赤にしてマントの裾を弄っているし。

役目を果たすことなど容易いと、半ば投げやりに考えていたリラフィアは次のイルヴィンドの発言に驚かされる。


「リ、リラフィアはとっても綺麗だね…その瞳、まるで晴れた日の湖みたい」


リラフィアの目は薄い水色。

美しい宝石のようだと言われることはあったが、彼女の冷酷な面を知れば皆その色を冷たい氷に例えて恐れる。

まともに顔を見られない様子だったイルヴィンドから褒められたことにも驚いたが、なによりもリラフィアの心臓を撃ち抜いたのは、その例え。


『リラフィアの瞳は本当に綺麗だよね、キラキラしていて晴れてる日の湖みたいだ』


それは亡き婚約者アーサーだけが言ってくれたものだったのに。


(どう、して…?)


なぜ彼が同じことを言うのか。

愛しい人の声が蘇り、涙が溢れそうになるのを堪えているとイルヴィンドの手がそっと伸びてきて頬に触れられた。


「大丈夫?具合悪くなった?」


初めて真っ直ぐ見つめ合ったその瞳は、不安に揺れて心配の色が色濃く見える。

リラフィアは無理やり笑みを浮かべ、大丈夫ですと答えるだけで精一杯だった。

この瞬間、彼女は誓う。

彼を支えよう、親に言われたからではなく自分の意思で。


(ごめんなさいアーサー、そして陛下)


全ては自分の心のままに。

愛した人の面影を重ねて始まったリラフィアの王妃生活は、ウブすぎる夫の問題もあり夫婦としては機能していないけれど。

イルヴィンドの優しさ、そして努力する姿を見れば見るほど惹かれていくリラフィアであった。

11歳で即位したイルヴィンドはこの時12歳である。
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