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第22話
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東部視察当日。
イルヴィンドとリラフィアは馬車に乗って城を後にした。
仕事とはいえ二人で出かけるのは珍しく、どこか落ち着かない様子のイルヴィンド。
昼食を森の中でとることにした際も、嬉しそうにリラフィアと休憩を楽しんだ。
「ねえ、リラフィアは東方に行った事があるんだよね」
「ええ、三度ほどですけれど」
「僕ほとんど王都から出た事ないんだよね…馬車での移動も久しぶりだ」
「パレードの時は城の正門から王都の入り口まで馬車に乗れますわ」
そんな会話をしているうちに、東方領土に到着した。
出迎えたのは東方領主ミリス・トゥロー、スラリとした長身の女領主。
「ようそこ我が領地へ。両陛下をお招きできて光栄です」
「世話になるね、今日と明日よろしく」
一泊二日の日程を予定しており、領主の屋敷に宿泊する。
領主と挨拶を交わしていると、
「御機嫌よう陛下」
そこにいたのは財務省長官の妻メラニー。
「…」
「メラニー・ディラン夫人。なぜここに?」
彼女が誰か分からないイルヴィンドに代わり、リラフィアが名を呼ぶ。
なぜ王都を離れて東方領土、しかも領主と共にいるのだろうか。
「以前から東方のお茶に興味がありましたの、ミリス様にお手紙を差し上げたら、ぜひ現地でとお招き頂きましたのよ」
満面の笑みで答えるメラニー。
しかし領主ミリスは困り顔だ。
「申し訳ございません陛下、メラニー夫人をお招きしたのは先週だったのですが、少し遅れると連絡があり今朝突然いらしたのです」
そう、メラニーはイルヴィンド達がくることを知りわざと日程をずらしたのだ。
よりにもよって同じ日に押しかけるという暴挙。
「それは…ずいぶん勝手だね。1週間も待たせるなんて失礼じゃないか?」
さすがにイルヴィンドも苦言を呈する。
自分の事ではなくミリスを気遣う優しさ、しかしメラニーは調子に乗るばかり。
「まあ陛下、ミリス様は快く招いてくださいましたわ!そうだ、わたくしも視察に同行させていただけませんか?財務省長官の妻として、是非とも東方領地の様子を見たいですわ」
いくらなんでも不敬がすぎる。
リラフィアは口を開こうと一歩前に出るが、イルヴィンドに軽く制された。
「…メラニー・ディラン、君を同行させることはできない。これは公務だ、私用で来ている君が遊び半分で一緒に来るなど有り得ないよ」
珍しくはっきりと物を言うイルヴィンドの姿に、リラフィアはこんな時だと言うのにときめいてしまう。
(イルヴィンド…強くなって来たわね)
メラニーはイルヴィンドを押し負かす自信があったのだが、反論されるとは思っていなかったため言葉を失った。
「…ミリス、彼女が先客ならば僕らは先に見てまわっておくから、後で合流してくれてもいいよ」
「いいえ陛下、両陛下を差し置いて他のことを優先するなどできません!」
ミリスは慌てて使用人達を呼び、メラニーに屋敷でお茶を振る舞うよう指示する。
こうしてイルヴィンドたちは東方の視察を開始した。
イルヴィンドとリラフィアは馬車に乗って城を後にした。
仕事とはいえ二人で出かけるのは珍しく、どこか落ち着かない様子のイルヴィンド。
昼食を森の中でとることにした際も、嬉しそうにリラフィアと休憩を楽しんだ。
「ねえ、リラフィアは東方に行った事があるんだよね」
「ええ、三度ほどですけれど」
「僕ほとんど王都から出た事ないんだよね…馬車での移動も久しぶりだ」
「パレードの時は城の正門から王都の入り口まで馬車に乗れますわ」
そんな会話をしているうちに、東方領土に到着した。
出迎えたのは東方領主ミリス・トゥロー、スラリとした長身の女領主。
「ようそこ我が領地へ。両陛下をお招きできて光栄です」
「世話になるね、今日と明日よろしく」
一泊二日の日程を予定しており、領主の屋敷に宿泊する。
領主と挨拶を交わしていると、
「御機嫌よう陛下」
そこにいたのは財務省長官の妻メラニー。
「…」
「メラニー・ディラン夫人。なぜここに?」
彼女が誰か分からないイルヴィンドに代わり、リラフィアが名を呼ぶ。
なぜ王都を離れて東方領土、しかも領主と共にいるのだろうか。
「以前から東方のお茶に興味がありましたの、ミリス様にお手紙を差し上げたら、ぜひ現地でとお招き頂きましたのよ」
満面の笑みで答えるメラニー。
しかし領主ミリスは困り顔だ。
「申し訳ございません陛下、メラニー夫人をお招きしたのは先週だったのですが、少し遅れると連絡があり今朝突然いらしたのです」
そう、メラニーはイルヴィンド達がくることを知りわざと日程をずらしたのだ。
よりにもよって同じ日に押しかけるという暴挙。
「それは…ずいぶん勝手だね。1週間も待たせるなんて失礼じゃないか?」
さすがにイルヴィンドも苦言を呈する。
自分の事ではなくミリスを気遣う優しさ、しかしメラニーは調子に乗るばかり。
「まあ陛下、ミリス様は快く招いてくださいましたわ!そうだ、わたくしも視察に同行させていただけませんか?財務省長官の妻として、是非とも東方領地の様子を見たいですわ」
いくらなんでも不敬がすぎる。
リラフィアは口を開こうと一歩前に出るが、イルヴィンドに軽く制された。
「…メラニー・ディラン、君を同行させることはできない。これは公務だ、私用で来ている君が遊び半分で一緒に来るなど有り得ないよ」
珍しくはっきりと物を言うイルヴィンドの姿に、リラフィアはこんな時だと言うのにときめいてしまう。
(イルヴィンド…強くなって来たわね)
メラニーはイルヴィンドを押し負かす自信があったのだが、反論されるとは思っていなかったため言葉を失った。
「…ミリス、彼女が先客ならば僕らは先に見てまわっておくから、後で合流してくれてもいいよ」
「いいえ陛下、両陛下を差し置いて他のことを優先するなどできません!」
ミリスは慌てて使用人達を呼び、メラニーに屋敷でお茶を振る舞うよう指示する。
こうしてイルヴィンドたちは東方の視察を開始した。
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