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第45話
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「陛下、少しよろしいですか」
執務室で書類と睨めっこしていたイルヴィンドは、女官長マーサに話しかけられて顔を上げる。
侯爵夫人だというのに女官長の任についている彼女は、常に厳しくイルヴィンドにとって苦手な相手。
実は現アドラー侯爵には兄がいたのだが、爵位を継いだ3年後に急死。
現アドラー侯爵が受け継いだ際にどうしても仕事を続けたいというマーサの意思を尊重し、先王が異例の許可を下していた。
「なにかな、マーサ」
「お世継ぎのことです」
ズバリ言われ、顔を引き攣らせるイルヴィンド。
最近ではリラフィア命令であまり部屋に来なくなったが、やはり気にしているらしい。
「ご成婚から一年。まだお世継ぎを作ることさえしていないというのは問題かと思われます」
「うぐっ…分かってるよ…」
「分かっているとおっしゃいますが、皆心待ちにしているのですからしっかりしてくださらないと」
「わかってるってば!それに、そんなこと言われたって簡単じゃないんだよ…」
マーサはわざとらしくため息をついた。
「…側室をという声も根強いのですよ、正妃様に問題がないのでしたらそろそろ良い知らせをいただきたいものですわ」
その後しばらくマーサの昔話に付き合わされたイルヴィンドは、部屋に戻るとソファーに沈み込む。
「うー…」
「陛下いかがなさいましたか?」
リラフィアに話したら怒るだろうと思ったが、誤魔化しても無駄だと分かりきっていたので正直に話す。
「実はマーサが来てさ、その…子供はまだかーって」
「…女官長には城内全体の任務に就いて貰っているはずですが。また陛下のところへ来たのですか」
「うん…ほら、僕が生まれた時から知ってるし、心配してくれてるみたい」
心優しいイルヴィンドは、マーサのことも悪くは言わない。
しかしリラフィアは眉を寄せ腕を組んでしまう。
「困ったものですわね。口出しするなと言っておいたのですけれど」
「しょうがないよ、何にもできないのは事実だし…」
ぽそりと呟き俯くイルヴィンドは、手を握りしめている。
「陛下…」
リラフィアは隣に腰掛けると、そっと彼の手に自分の手を重ねた。
「陛下のペースでよろしいのですよ、まだ時間はあります」
甘やかしてくれるリラフィアに感謝しながらも申し訳なくて、情けなくて。
イルヴィンドは唇を噛みしめる。
「リラフィア…情けなくてごめんね」
「陛下は情けなくなどありませんわ。約束通りわたくしを守ってくださっているではありませんか」
リラフィアは心からの笑みを浮かべた。
執務室で書類と睨めっこしていたイルヴィンドは、女官長マーサに話しかけられて顔を上げる。
侯爵夫人だというのに女官長の任についている彼女は、常に厳しくイルヴィンドにとって苦手な相手。
実は現アドラー侯爵には兄がいたのだが、爵位を継いだ3年後に急死。
現アドラー侯爵が受け継いだ際にどうしても仕事を続けたいというマーサの意思を尊重し、先王が異例の許可を下していた。
「なにかな、マーサ」
「お世継ぎのことです」
ズバリ言われ、顔を引き攣らせるイルヴィンド。
最近ではリラフィア命令であまり部屋に来なくなったが、やはり気にしているらしい。
「ご成婚から一年。まだお世継ぎを作ることさえしていないというのは問題かと思われます」
「うぐっ…分かってるよ…」
「分かっているとおっしゃいますが、皆心待ちにしているのですからしっかりしてくださらないと」
「わかってるってば!それに、そんなこと言われたって簡単じゃないんだよ…」
マーサはわざとらしくため息をついた。
「…側室をという声も根強いのですよ、正妃様に問題がないのでしたらそろそろ良い知らせをいただきたいものですわ」
その後しばらくマーサの昔話に付き合わされたイルヴィンドは、部屋に戻るとソファーに沈み込む。
「うー…」
「陛下いかがなさいましたか?」
リラフィアに話したら怒るだろうと思ったが、誤魔化しても無駄だと分かりきっていたので正直に話す。
「実はマーサが来てさ、その…子供はまだかーって」
「…女官長には城内全体の任務に就いて貰っているはずですが。また陛下のところへ来たのですか」
「うん…ほら、僕が生まれた時から知ってるし、心配してくれてるみたい」
心優しいイルヴィンドは、マーサのことも悪くは言わない。
しかしリラフィアは眉を寄せ腕を組んでしまう。
「困ったものですわね。口出しするなと言っておいたのですけれど」
「しょうがないよ、何にもできないのは事実だし…」
ぽそりと呟き俯くイルヴィンドは、手を握りしめている。
「陛下…」
リラフィアは隣に腰掛けると、そっと彼の手に自分の手を重ねた。
「陛下のペースでよろしいのですよ、まだ時間はあります」
甘やかしてくれるリラフィアに感謝しながらも申し訳なくて、情けなくて。
イルヴィンドは唇を噛みしめる。
「リラフィア…情けなくてごめんね」
「陛下は情けなくなどありませんわ。約束通りわたくしを守ってくださっているではありませんか」
リラフィアは心からの笑みを浮かべた。
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