少年王は妖艶な妃に恋をする

歌龍吟伶

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第50話

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夜、一通り仕事を終え部屋に戻ったイルヴィンド。

いつものように夕食に手をつけず待っていたリラフィアが出迎えてくれる。


「お帰りなさいませ」


「うん、ただいま…」


元気がないイルヴィンドの様子を見て、リラフィアは心配そうに眉を寄せた。


「大丈夫ですか?」


「うん…今日は疲れちゃったな」


力無く笑いながら浴室へ向かうイルヴィンドを見送り、リラフィアはイルガとの謁見を思い出す。

アドラーに世継ぎの件を追及され疲れ果てているのだろう、このままではいけない…そう考えていたところにゾエが戻ってきた。


「リラフィア様、手配して参りました」


「ありがとう、ご苦労様」


「陛下がお戻りなのですね。では報告は後ほど」


暗躍しない約束だったけれど、リラフィアはイルヴィンドに内密で動こうとしている。

しかし、入浴を終えたイルヴィンドにイルガとの謁見について聞かれてしまった。


「そういえばリラフィア、今日イルガ公爵が会いにきたらしいね」


「…ええ、会議の後謁見を求められましたのでお会いしました」


「何を話したの?」


「アドラー侯爵に気をつけるようにと。警告してくださいましたわ」


それは嘘ではない。

イルガはリラフィアの身に危険が及ぶのではないかと考え、アドラーが何か企んでいるかもしれないと伝えに来たのだ。


「なんか、みんなを疑ったりしなきゃいけないのって悲しいな…」


「…あと少しですわ。きっと、悪どい人間を払い落とし切ればもう安心できます」


アドラー侯爵、そしてその妻である女官長マーサ。

彼らが何か企んでいるのは間違いないと踏んでいるリラフィアは、ゾエたちを使って調べさせることにした。


「…リラフィア、隠し事しない約束だからね?危ないことしちゃダメだよ」


側にいるうちに察しが良くなったらしく、イルヴィンドは何か感じ取ったようだ。

リラフィアは安心させようと微笑み、お気に入りの紅茶をイルヴィンドのために自ら淹れる。

お茶の香りに癒され、一日の疲れを取るのが二人の日課となっていた。

そして数日後、リラフィアが視察に出かける日。


「気をつけてね、リラフィア。一緒に行きたかったけどザフィール国の使者が来てるから…」


隣国ザフィールからの使者がこの日を指定してきたため、イルヴィンドは城を留守にできない。

そして西方の視察も今の時期に行いたかったため、予定通りの日程でリラフィアだけが行くことになったのだ。

馬車二台と護衛騎士たちを連れて、往復約1週間の予定。


「行ってまいります。陛下もお気をつけて」


イルヴィンドに見送られ、リラフィアを乗せた馬車は出発した。
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