52 / 56
第52話
しおりを挟む
馬車が襲撃されている頃、城ではイルヴィンドがアドラーの謁見に応じていた。
「陛下、働き者で健康な娘達です。少し話をするだけでもお時間を頂けませんか」
アドラーは自分の屋敷で働く侍女や、城内で目をつけた女官をイルヴィンドに会わせようと連れてきていたのだ。
「しつこいぞアドラー侯爵。私は其方との謁見には応じると言ったが彼女らと会うと事は了承していない、下がらせよ」
「そう仰らずに…陛下は王妃様しかご存知ないからそのように拒絶なさるのですよ」
今頃王妃は崖の下。
妻から計画を聞かされているアドラーは、頬を緩めて強引に女達を紹介する。
「陛下も歳の近い娘の方が話しやすいでしょう、読書好きの賢い娘はどうです?」
「いい加減に…」
さすがのイルヴィンドも堪忍袋の尾が切れる、その時部屋の外が慌ただしくなり一人の騎士が駆け込んできた。
「謁見中、御前失礼いたします!」
「何事だ」
そして知らされる、王妃一行襲撃事件。
「王妃様を乗せた馬車が、賊の襲撃を受けたとのことです!」
「…怪我人は」
「現在確認中、第三騎士団を派遣しております!」
アドラーは、イルヴィンドの反応に違和感を抱く。
もっと取り乱すと思ったのに冷静に見える、なにより王妃を心配する様子が感じられない。
しかし計画が上手くいったのだと浮かれるアドラーは、その違和感を深く考えずに笑った。
「おやおや、これは大変だ」
口ではそう言うが笑みが堪えきれない。
そんなアドラーにイルヴィンドは冷たい視線を送る。
「嬉しそうだな、ジョン・アドラー」
「嬉しそう?何をおっしゃいます陛下。これは国の一大事でございましょう、王妃様の身に何かあったやもしれぬのですよ」
徐々に騎士が集まり慌ただしくなっていく、そこへ女官マーサも現れた。
「失礼いたします陛下…なにやら物騒な話が聞こえたのですが」
「おおマーサ!大変なのだ、視察へ向かわれた王妃様が襲撃されたらしい」
大袈裟に驚く妻と夫。
イルヴィンドは深呼吸し、二人を見つめる。
その瞳には悲しみが宿っているが、それはリラフィアを失ったかもしれないから…ではない。
「…これは最後の警告だよ、ジョン・アドラー。そしてマーサ。本当の事を話して欲しい」
「…なんの、事でしょうか」
夫婦の額に汗が滲む。
周囲を見ると、いつのまにか国王の近衛騎士が勢揃いしており更には第一騎士団まで部屋の外に集まっていた。
「お願いだから罪を認めて。今なら話を聞いてあげられる」
生まれた時から世話になっているマーサに対し、イルヴィンドは苦手意識と共に感謝の心も抱いている。
そう、今回の計画はリラフィアによって数日で暴かれ、イルヴィンドにも伝わっていたのだ。
今頃崖下に落とされているのはリラフィアではなく、殺し屋達の方だろう。
そしてリラフィアはこちらへ向かっているはず、戻れば彼女は決してアドラー達を許さない。
「君達の計画は既に知っている。リラフィアは無事のはずだよ、もうすぐ帰ってくる」
王の言葉に呆然とするマーサ。
アドラーは、
「くっ、くくく…バレていたとはな。お前が悪いのだぞイルヴィンド、大人しく傀儡の王であればよかったものを!」
開き直った。
「どうして?君たちはそのままでいても地位と権力を守れたのに。こんな事しなければ、これからも変わらなかったはずなのに」
「今の地位で満足などするものか!私は城の主人になる男だ!」
そして愚かなアドラーは周囲に向けて叫ぶ。
「お前達もこんなガキに従うのは面白くないだろう?!私につけば良い待遇を約束してやるぞ!」
頷く者など、一人もいない。
「陛下、働き者で健康な娘達です。少し話をするだけでもお時間を頂けませんか」
アドラーは自分の屋敷で働く侍女や、城内で目をつけた女官をイルヴィンドに会わせようと連れてきていたのだ。
「しつこいぞアドラー侯爵。私は其方との謁見には応じると言ったが彼女らと会うと事は了承していない、下がらせよ」
「そう仰らずに…陛下は王妃様しかご存知ないからそのように拒絶なさるのですよ」
今頃王妃は崖の下。
妻から計画を聞かされているアドラーは、頬を緩めて強引に女達を紹介する。
「陛下も歳の近い娘の方が話しやすいでしょう、読書好きの賢い娘はどうです?」
「いい加減に…」
さすがのイルヴィンドも堪忍袋の尾が切れる、その時部屋の外が慌ただしくなり一人の騎士が駆け込んできた。
「謁見中、御前失礼いたします!」
「何事だ」
そして知らされる、王妃一行襲撃事件。
「王妃様を乗せた馬車が、賊の襲撃を受けたとのことです!」
「…怪我人は」
「現在確認中、第三騎士団を派遣しております!」
アドラーは、イルヴィンドの反応に違和感を抱く。
もっと取り乱すと思ったのに冷静に見える、なにより王妃を心配する様子が感じられない。
しかし計画が上手くいったのだと浮かれるアドラーは、その違和感を深く考えずに笑った。
「おやおや、これは大変だ」
口ではそう言うが笑みが堪えきれない。
そんなアドラーにイルヴィンドは冷たい視線を送る。
「嬉しそうだな、ジョン・アドラー」
「嬉しそう?何をおっしゃいます陛下。これは国の一大事でございましょう、王妃様の身に何かあったやもしれぬのですよ」
徐々に騎士が集まり慌ただしくなっていく、そこへ女官マーサも現れた。
「失礼いたします陛下…なにやら物騒な話が聞こえたのですが」
「おおマーサ!大変なのだ、視察へ向かわれた王妃様が襲撃されたらしい」
大袈裟に驚く妻と夫。
イルヴィンドは深呼吸し、二人を見つめる。
その瞳には悲しみが宿っているが、それはリラフィアを失ったかもしれないから…ではない。
「…これは最後の警告だよ、ジョン・アドラー。そしてマーサ。本当の事を話して欲しい」
「…なんの、事でしょうか」
夫婦の額に汗が滲む。
周囲を見ると、いつのまにか国王の近衛騎士が勢揃いしており更には第一騎士団まで部屋の外に集まっていた。
「お願いだから罪を認めて。今なら話を聞いてあげられる」
生まれた時から世話になっているマーサに対し、イルヴィンドは苦手意識と共に感謝の心も抱いている。
そう、今回の計画はリラフィアによって数日で暴かれ、イルヴィンドにも伝わっていたのだ。
今頃崖下に落とされているのはリラフィアではなく、殺し屋達の方だろう。
そしてリラフィアはこちらへ向かっているはず、戻れば彼女は決してアドラー達を許さない。
「君達の計画は既に知っている。リラフィアは無事のはずだよ、もうすぐ帰ってくる」
王の言葉に呆然とするマーサ。
アドラーは、
「くっ、くくく…バレていたとはな。お前が悪いのだぞイルヴィンド、大人しく傀儡の王であればよかったものを!」
開き直った。
「どうして?君たちはそのままでいても地位と権力を守れたのに。こんな事しなければ、これからも変わらなかったはずなのに」
「今の地位で満足などするものか!私は城の主人になる男だ!」
そして愚かなアドラーは周囲に向けて叫ぶ。
「お前達もこんなガキに従うのは面白くないだろう?!私につけば良い待遇を約束してやるぞ!」
頷く者など、一人もいない。
0
あなたにおすすめの小説
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
気がつけば異世界
蝋梅
恋愛
芹沢 ゆら(27)は、いつものように事務仕事を終え帰宅してみれば、母に小さい段ボールの箱を渡される。
それは、つい最近亡くなった骨董屋を営んでいた叔父からの品だった。
その段ボールから最後に取り出した小さなオルゴールの箱の中には指輪が1つ。やっと合う小指にはめてみたら、部屋にいたはずが円柱のてっぺんにいた。
これは現実なのだろうか?
私は、まだ事の重大さに気づいていなかった。
【完結】緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
※本編を加筆修正しますので、一旦一部公開とさせていただいています。
〜花が良く育つので「緑の手」だと思っていたら「癒しの手」だったようです〜
王都の隅っこで両親から受け継いだ花屋「ブルーメ」を経営するアンネリーエ。
彼女のお店で売っている花は、色鮮やかで花持ちが良いと評判だ。
自分で花を育て、売っているアンネリーエの店に、ある日イケメンの騎士が現れる。
アンネリーエの作る花束を気に入ったイケメン騎士は、一週間に一度花束を買いに来るようになって──?
どうやらアンネリーエが育てている花は、普通の花と違うらしい。
イケメン騎士が買っていく花束を切っ掛けに、アンネリーエの隠されていた力が明かされる、異世界お仕事ファンタジーです。
※本編を加筆修正する予定ですので、一旦一部公開とさせていただいています。
*HOTランキング1位、エールに感想有難うございました!とても励みになっています!
※花の名前にルビで解説入れてみました。読みやすくなっていたら良いのですが。(;´Д`)
話の最後にも花の名前の解説を入れてますが、間違ってる可能性大です。
雰囲気を味わってもらえたら嬉しいです。
※完結しました。全41話。
お読みいただいた皆様に感謝です!(人´∀`).☆.。.:*・゚
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる