少年王は妖艶な妃に恋をする

歌龍吟伶

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第53話

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誰一人寝返る様子がないことに憤慨し、アドラーは叫び散らす。


「何故だ?!このガキのどこが王に相応しいというのだ!!」


近衛騎士隊長のクリストファーが口を開いた。


「陛下は立派なお方だ。お前と比べるのも無礼なほどにな」


「有り得ぬ!私ならお前達に金も女もくれてやるというのに!」


まだ納得しないアドラーに呆れ果て、クリストファーは腰の剣に手を添える。


「そんなものを求めるような人間が、この場にいると本気で思っているのか。全員の顔を見てみろ、誰が貴様に味方する?」


全ての騎士が抜刀の構えを見せた。


「馬鹿な…有り得ぬ、有り得てたまるか…」


アドラーは力なく呟き膝を折る。

それを見て、イルヴィンドは騎士達に彼らを捕らえるよう命じた。

そこへ、馬を走らせて戻ってきたリラフィアが。


「陛下、ただいま戻りました」


「リラフィア、無事でよかった」


彼女の後ろには、御者に扮していたオリオと後ろの馬車に乗っていたゾエもいる。

実は他の女官は安全なところに置いてきて、ゾエだけが女官用の馬車に乗っていたのだ。

崖下に落ちる寸前に飛び出した彼女は、殺し屋達の隙を窺っていた。

そしてリラフィアの馬車に意識が行った一瞬の隙をつき、崖下に待機させていた隠密部隊と共に男達を制圧。


「無事だったから良かったけど、なんでリラフィアも現場に行っちゃうのさ」


作戦を聞いた際、リラフィアも女官達と待つべきだとイルヴィンドば主張したが、リラフィアが聞き入れなかったのだ。


「わたくしのために戦ってくれるのです、私が安全なところで待っているなど出来ませんわ」


「いや、出来るよ許されるよ?それが当たり前だと思うよ??」


イルヴィンドの最もな突っ込みを聞き流し、リラフィアはマーサ達に視線を向ける。

目が合ったマーサは、リラフィアを睨みつけた。


「どうして生きてるのよ…お前さえいなければ陛下は元に戻れるのに!!」


「…元に戻るとはどういう事?」


明かされるマーサの歪んだ想い。


「イルヴィンド陛下は可哀想であるべきなの。だってこんなに頼りないのよ、小さくて泣き虫で。可愛い坊や…」


マーサの発言はアドラーにとっても予想外だったらしく、驚き目を見開いている。


「マーサ、お前…?」


「陛下には独りぼっちが似合うわ。お前のように気が強くて頭も回る女なんて似合わないの。だから今までのように消えてもらおうとしたのに…どうして戻ってくるのよ!」


「今までのって、どういう事?」


嫌な予感がする、不安そうなイルヴィンドにマーサはうっとりとした顔で言った。


「アルヴィオ陛下の後妻達、誰一人懐妊しなかったのはおかしいと思いません?全て私が薬を盛ったからですよ」


「どうしてそんなこと…!」


「だから言ってるじゃないですか、貴方には独りぼっちが似合うんです。兄弟なんて要らないの」


マーサがイルヴィンド見る目は優しいが、どこまでも狂っている。

更にマーサは続けた。


「陛下のお子様もきっと貴方に似て可愛いだろうけれど、でも要らないの…だからそこの王妃にもいつもの薬を盛ってやったのよ」


衝撃的な自白に、リラフィアは。
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