4 / 6
4
しおりを挟む
「はあ……」
舞踏会には出たくない。どんな顔をして正妻と会えばいいというのだろう。
私は結局着替えもせずに、城の裏庭でやさぐれていた。
すると裏の焼却炉のほうから、使用人たちの話し声が聞こえてきた。私には気がついていないようだ。
「今日あたりには現れるかねえ、魔法使い」
「そろそろ来てくれなくちゃ困るよ。王子も待ちくたびれたんじゃないか?」
どういうことだろう。
「お姫さんも可哀想に。気丈に振る舞ってはいるけど、何度も魔法使いに狙われてるんだろう? 王子ももっと構って差し上げればいいものを」
「王子は今、魔法使いと戦うことしか頭にないんだもの……」
「自分の腕がどこまで魔法使いに通じるか試したい、なんてね。そりゃあ志は立派だけど、奥様もお姫さんも気の毒だよ」
「悪い人ではないんだけどね……。でも今日は久しぶりに奥様に会えるわね、楽しみだわ」
……なるほど、そういうことだったの。
私を眠りから覚ましてくれたのは、魔法使いと戦いたいがためだったのね。
私に手を出さなかったのは、私に興味なんてなかったから。
私に優しくしてこの城に住まわせてくれたのは、魔法使いを呼び寄せるため。
私は王子が好みじゃなかったけれど、王子だって私が好みじゃなかったのだ。
「はあ……」
続々と発覚する事実に、大きなため息が漏れ出る。
でも、へこんでばかりもいられない。
このまま私がここに居座っては、王子の正妻に申し訳がなさすぎる。
「……よし!」
改めて気を取り直し、私はこっそり王子の城を出た。きっと魔法使いの仕業だと思ってくれることだろう。
お世話になった感謝だけ、急いで走り書きを残しておいた。
さて――――長らく眠っていた私が、向かえる場所は一つしかない。
舞踏会には出たくない。どんな顔をして正妻と会えばいいというのだろう。
私は結局着替えもせずに、城の裏庭でやさぐれていた。
すると裏の焼却炉のほうから、使用人たちの話し声が聞こえてきた。私には気がついていないようだ。
「今日あたりには現れるかねえ、魔法使い」
「そろそろ来てくれなくちゃ困るよ。王子も待ちくたびれたんじゃないか?」
どういうことだろう。
「お姫さんも可哀想に。気丈に振る舞ってはいるけど、何度も魔法使いに狙われてるんだろう? 王子ももっと構って差し上げればいいものを」
「王子は今、魔法使いと戦うことしか頭にないんだもの……」
「自分の腕がどこまで魔法使いに通じるか試したい、なんてね。そりゃあ志は立派だけど、奥様もお姫さんも気の毒だよ」
「悪い人ではないんだけどね……。でも今日は久しぶりに奥様に会えるわね、楽しみだわ」
……なるほど、そういうことだったの。
私を眠りから覚ましてくれたのは、魔法使いと戦いたいがためだったのね。
私に手を出さなかったのは、私に興味なんてなかったから。
私に優しくしてこの城に住まわせてくれたのは、魔法使いを呼び寄せるため。
私は王子が好みじゃなかったけれど、王子だって私が好みじゃなかったのだ。
「はあ……」
続々と発覚する事実に、大きなため息が漏れ出る。
でも、へこんでばかりもいられない。
このまま私がここに居座っては、王子の正妻に申し訳がなさすぎる。
「……よし!」
改めて気を取り直し、私はこっそり王子の城を出た。きっと魔法使いの仕業だと思ってくれることだろう。
お世話になった感謝だけ、急いで走り書きを残しておいた。
さて――――長らく眠っていた私が、向かえる場所は一つしかない。
0
あなたにおすすめの小説
森の民に拾われ天使と呼ばれた私は、今日もスープを煮込みます
Mag_Mel
恋愛
森の民が暮らす村には、“天からの恵み”が落ちてくる聖域があった。
ある日そこに、記憶も名も持たぬひとりの女が落ちてくる。
彼女は「リコリス」と名付けられ、族長ライオネルの庇護のもと穏やかな日々を送るが、恵みは次第に毒や兵器へと姿を変え、村を脅かし始める。
このままでは愛する人々と平穏な日常が失われてしまう。
リコリスは自身に宿る力を使い、天と地を繋ぐ穴を閉じようと決意するが――。
*小説家になろうでも投稿しています
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
「その他大勢」の一人で構いませんので
和島逆
恋愛
社交界で『壁の花』ならぬ『壁のマンドラゴラ』という異名を持つマグダレーナ。
今日も彼女は夜会の壁に張りつき、趣味の人間観察に精を出す。
最近のお気に入りは、伯爵家の貴公子であるエリアス。容姿・家柄ともに申し分なく、年頃の令嬢たちから熱い視線を送られている。
そんなエリアスが選んだのは、なんと『壁のマンドラゴラ』であるマグダレーナで──?
「いや、わたしはあくまでも『その他大勢』の一人で構わないので」
マグダレーナは速攻で断りを入れるのであった。
貧乏伯爵家の妾腹の子として生まれましたが、何故か王子殿下の妻に選ばれました。
木山楽斗
恋愛
アルフェンド伯爵家の妾の子として生まれたエノフィアは、軟禁に近い状態で生活を送っていた。
伯爵家の人々は決して彼女を伯爵家の一員として認めず、彼女を閉じ込めていたのである。
そんな彼女は、ある日伯爵家から追放されることになった。アルフェンド伯爵家の財政は火の車であり、妾の子である彼女は切り捨てられることになったのだ。
しかし同時に、彼女を訪ねてくる人が人がいた。それは、王国の第三王子であるゼルーグである。
ゼルーグは、エノフィアを妻に迎えるつもりだった。
妾の子であり、伯爵家からも疎まれていた自分が何故、そんな疑問を覚えながらもエノフィアはゼルーグの話を聞くのだった。
私に悪役令嬢は荷が重い。
木山楽斗
恋愛
「……わかっているのかしら? 平民のあなたが、この学園にいるということが、そもそもおかしいということが」
平民であるメアリに対して、私はそう言った。
取り巻きとともに特別な平民である彼女を、いびっているのだ。
「フレーナ様の言う通りよ。あなたなんかね。この学園に通っていい存在ではないのよ。薄汚い平民の分際で貴族の領分に入ってこようなんて……」
「ちょっと、それは言い過ぎではないかな?」
「え? そうですか?」
しかし私は、取り巻きのサナーシャの言葉に思わず口を挟んでしまった。
薄汚いというのは言い過ぎなのではないか、そう思ってしまったのだ。
それからはもう、ぐだぐだだった。
もう一人の取り巻きのクレリアは言葉が出てこなかったし、結局第二王子であるイージス殿下が現れ、私達は退くことになってしまった。
わかっていたことではあるが、どうやら私に悪役令嬢は荷が重いらしい。
これから本当にやっていけるのか、私は不安でいっぱいだった。
その執事は、十三番目の愛を叫ぶ
れおぽん
恋愛
「貴女を愛しています。……ええと、お名前は?」
次期皇女を決める最終儀式の場。 並み居る高貴な皇配候補たちは、誰一人として花嫁の名前を答えられなかった。 彼らが愛していたのは「皇女」という肩書きであり、彼女自身を見てはいなかったからだ。
場が凍りつく中、国は体裁を保つために「偽の名前」を彼女に与えようとする。 だが、その時――。
「ふざけるなッ!!」
乱入してきたのは、薄汚れた一人の使用人だった。 彼は知っていた。彼女がどんな時に笑い、どんな時に傷つき、そして本当はどんな名前なのかを。
地位も名誉もない使用人の「真摯な愛」が、薄っぺらな貴族たちの求婚を論破する。 身分差×主従×逆転劇。魂を揺さぶるヒューマンドラマ。
乙女ゲームの世界じゃないの?
白雲八鈴
恋愛
この世界は『ラビリンスは恋模様』っていう乙女ゲームの舞台。主人公が希少な聖魔術を使えることから王立魔術学園に通うことからはじまるのです。
私が主人公・・・ではなく、モブです。ゲーム内ではただの背景でしかないのです。でも、それでいい。私は影から主人公と攻略対象達のラブラブな日々を見られればいいのです。
でも何かが変なんです。
わたしは主人公と攻略対象のラブラブを影から見守ることはできるのでしょうか。
*この世界は『番とは呪いだと思いませんか』と同じ世界観です。本編を読んでいなくても全く問題ありません。
*内容的にはn番煎じの内容かと思いますが、時間潰しでさらりと読んでくださいませ。
*なろう様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる