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「――久しぶりね、魔法使い」
「……ああ、姫さま。今回も理想の王子様じゃなかったんですか?」
魔法使いは馬鹿にしたような顔で私を見る。
「今度の王子様は何が気に入らなかったんです?」
「……何がって言われると難しいわ。悪い人ではないんだけど、見た目も好みじゃなかったし無神経なところも嫌だったし……というかそもそも、正妻がいたのよ。私、妾なんて嫌だわ! お互いを一番に思い合って愛し合える、そんな王子様じゃなくちゃ嫌なの!」
魔法使いに呪いをかけてもらったのは、今回で何回目になるだろう。
悪い魔法使いに呪いをかけられて眠り続けるお姫様を助け出す、そんな理想的な場面で理想的な王子様に出会うために。
「でも今回理想の王子様じゃなかったのは、あなたにも責任があるのよ?」
話を聞いているんだか聞いていないんだかわからない魔法使いに、私はことの顛末を話した。
魔法使いは話を聞くと、さもおかしそうに笑い出す。
「なるほど、あの王子の考えそうなことだ!」
「なに笑ってるのよ! そもそもあなた、王子のことを知っていたの? ああいう感じの王子は私の好みじゃないって、知ってるくせに!」
「いやだって前回、もっと強そうな王子様がいいって言ってたじゃないですか。だから今回は姫の眠る森に魔物を放ったりして、武力に優れた王子じゃないと辿り着けないようにしたんですよ」
「だって前回の時の王子は、ちょっと理屈っぽすぎたんだもの。顔は好みだったんだけど、頭でしかものを考えていないというか……」
「それだって前々回の時にもう少し頭が良い王子がいいって、姫が言ったんですよ。だから謎解きを仕掛けて、頭の回る王子じゃないと辿り着けないようにしたのに」
「だって前々々回の時の王子が、ちょっとお馬鹿すぎたんだもの! 優しくはあったんだけど、頼りなかったっていうか……」
何回呪いをかけてもらっても、なかなか理想の王子様には出会えない。私の、私だけの王子様――いったいどこにいるのだろう。
「ねえ、だからお願い。もう一度、私に呪いをかけて欲しいの」
「はあ……本当に、仕方がないですね」
魔法使いは面倒そうではありながら、呪いをかける準備をしてくれる。
「ありがとう、あなたって本当に頼りになるわ! でも、頼りがいがありすぎるのも問題なのよね……私の理想の王子様は、私の周りの誰よりも強くて賢くて優しくて、私の好みであって欲しいの。だからあなたが比較対象になっちゃうと、どうしても理想が高くなっちゃうのよね」
「はあ、そうですか」
魔法使いは私に背を向けたまま、何やらぶつぶつ呪文を唱えている。
「はい、準備できましたよ。姫のご準備もよろしいですか?」
「ええ! 今まで通り、目を覚ますきっかけは手を握るだけにしてね。好みじゃない人にキスなんてされたくないもの」
「もちろん、わかってますよ。では、いきますからね」
「次は私のことだけを愛してくれる、理想の王子様に出会えますように――……あ、ちょっと待って! そういえば、あなたに銃って効くの?」
「銃? まさか。姫が眠っている間に、私はまた強くなったんですよ。銃だろうが何だろうが、ただの人間に私を倒すことなんて出来ません」
「そうよね、良かった! もしあの王子に倒されちゃったらと思って、心配になっちゃった」
「それは……ご心配ありがとうございます。では、良い夢を。おやすみなさい……―――――」
眠りにつく前に見た魔法使いの顔は、なんだかいつもと違って見えた。いつもは馬鹿にしたような、恨みがましいような、憎たらしいような顔をしているけれど、今回はどことなく嬉しそうだ。
なんだかとても良い夢が見られそう。
「……ああ、姫さま。今回も理想の王子様じゃなかったんですか?」
魔法使いは馬鹿にしたような顔で私を見る。
「今度の王子様は何が気に入らなかったんです?」
「……何がって言われると難しいわ。悪い人ではないんだけど、見た目も好みじゃなかったし無神経なところも嫌だったし……というかそもそも、正妻がいたのよ。私、妾なんて嫌だわ! お互いを一番に思い合って愛し合える、そんな王子様じゃなくちゃ嫌なの!」
魔法使いに呪いをかけてもらったのは、今回で何回目になるだろう。
悪い魔法使いに呪いをかけられて眠り続けるお姫様を助け出す、そんな理想的な場面で理想的な王子様に出会うために。
「でも今回理想の王子様じゃなかったのは、あなたにも責任があるのよ?」
話を聞いているんだか聞いていないんだかわからない魔法使いに、私はことの顛末を話した。
魔法使いは話を聞くと、さもおかしそうに笑い出す。
「なるほど、あの王子の考えそうなことだ!」
「なに笑ってるのよ! そもそもあなた、王子のことを知っていたの? ああいう感じの王子は私の好みじゃないって、知ってるくせに!」
「いやだって前回、もっと強そうな王子様がいいって言ってたじゃないですか。だから今回は姫の眠る森に魔物を放ったりして、武力に優れた王子じゃないと辿り着けないようにしたんですよ」
「だって前回の時の王子は、ちょっと理屈っぽすぎたんだもの。顔は好みだったんだけど、頭でしかものを考えていないというか……」
「それだって前々回の時にもう少し頭が良い王子がいいって、姫が言ったんですよ。だから謎解きを仕掛けて、頭の回る王子じゃないと辿り着けないようにしたのに」
「だって前々々回の時の王子が、ちょっとお馬鹿すぎたんだもの! 優しくはあったんだけど、頼りなかったっていうか……」
何回呪いをかけてもらっても、なかなか理想の王子様には出会えない。私の、私だけの王子様――いったいどこにいるのだろう。
「ねえ、だからお願い。もう一度、私に呪いをかけて欲しいの」
「はあ……本当に、仕方がないですね」
魔法使いは面倒そうではありながら、呪いをかける準備をしてくれる。
「ありがとう、あなたって本当に頼りになるわ! でも、頼りがいがありすぎるのも問題なのよね……私の理想の王子様は、私の周りの誰よりも強くて賢くて優しくて、私の好みであって欲しいの。だからあなたが比較対象になっちゃうと、どうしても理想が高くなっちゃうのよね」
「はあ、そうですか」
魔法使いは私に背を向けたまま、何やらぶつぶつ呪文を唱えている。
「はい、準備できましたよ。姫のご準備もよろしいですか?」
「ええ! 今まで通り、目を覚ますきっかけは手を握るだけにしてね。好みじゃない人にキスなんてされたくないもの」
「もちろん、わかってますよ。では、いきますからね」
「次は私のことだけを愛してくれる、理想の王子様に出会えますように――……あ、ちょっと待って! そういえば、あなたに銃って効くの?」
「銃? まさか。姫が眠っている間に、私はまた強くなったんですよ。銃だろうが何だろうが、ただの人間に私を倒すことなんて出来ません」
「そうよね、良かった! もしあの王子に倒されちゃったらと思って、心配になっちゃった」
「それは……ご心配ありがとうございます。では、良い夢を。おやすみなさい……―――――」
眠りにつく前に見た魔法使いの顔は、なんだかいつもと違って見えた。いつもは馬鹿にしたような、恨みがましいような、憎たらしいような顔をしているけれど、今回はどことなく嬉しそうだ。
なんだかとても良い夢が見られそう。
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