あなたの味を教えてください

藤間背骨

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第二十三話

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 折れた匕首で首に絡みつく腸を断ち切ろうとするが、腸は強く絡みつく一方だ。
 満足に息ができずに視界がぼやけ、意識が薄れていく。
 何もできないまま死んでいくというのか。
 そう諦めかけた、その時。

「那恵真!」

 クロの力強い声が響いた。
 それと同時に腸が解けて地面に落とされる。
 咽せながらも何があったのかと声の聞こえたほうを見ると、饕餮号を纏ったクロが光の剣で怪魔を後ろから貫いていた。
 怪魔は痛みに苦悶の声を上げている。

「クロ、さん……!」

 どうしてクロが再び立ち上がったのかわからない。
 しかし、今しかないことだけはわかる。
 怪魔は耳障りな悲鳴を上げながらのたうち回る。その隙を見てクロが隣に駆けつけてきてくれた。
 彼と言葉を交わすこともなく、やるべきことはわかっていた。自分は匕首に法力を纏わせて長剣を作り上げた。しかし、今にできるのはそれが限界で崩れ落ちそうになる。
 柄を取り落としそうになった手をクロが包み込んでくれ、光の剣を二人で構えた。
 自分は一人ではない。
 思い返せば、色々な人が自分を支えてくれていた。
 家族も、紫水も、環も、一心も。そう、クロも。
 孤独に戦うのではない、彼らと共に戦うのだ。
 何一つ捨てることなく、取りこぼすことなく。
 共に寄り添いながら。
 敵意を剥き出しにしてこちらに突進してくる怪魔に向け、眩いばかりに輝く光の剣を振り下ろす。
 剣は硬質化した皮膚も容易く切り裂き、核ごと怪魔を真っ二つに両断した。
 断末魔を上げながら怪魔は汚泥と化して地に落ちた。

「は、ぁ……、はぁ……」

 終わった。
 怪魔を討った。
 己の復讐を果たした。
 しかし、それ以上に。

「クロさん! よかった、生きて、いた……!」

 饕餮号を纏ったクロを見つめるが、勝手に視界がぼやける。

「ああ、生きている。お前のことも、しっかり覚えている」

 鎧で顔は見えなかったが、笑っている気がした。
 クロの答えに体に力が入らなくなって膝から崩れ落ちた。

「よかった、よかった……! 死んでしまったのかと……!」

 子供の頃は、目の前で大事な人が奪われていくのを見つめるしかできなかった。
 そして今、やっと家族の仇を取り、守りたいと思った人を守ることができたのだ。
 やがて黒い雨は上がり、暗い雲の隙間から祝福のように地上に光が差していた。
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