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第四十七話
しおりを挟む「あれ?」
真咲が家に戻ると、玄関の前に紙袋に入った荷物が置かれていた。中身を見ると、爽次郎に頼んでいた資料と写真が入っている。
メモが添えられていた。
『頼まれていた資料と以前取った写真です。今日は少し体調が優れないので、申し訳ないですが帰らせていただきました。 尾形』
そう書かれている。ここまで来たなら、ちょっとぐらい待ってくれたらよかったのに。
高校時代の友人、朝丘礼を見送くりに十分ほど離れただけだ。
爽次郎と食べようとコンビニの新作スイーツを買ったのに。それに、話したいこともいっぱいあった。
そう思うと苛立ちが募って、真咲は家の中に入るとすぐにスマートフォンを取り出す。爽次郎に文句を言おうと、電話を掛けようとした。
しかし、通話ボタンをタップする寸前で思いとどまる。
さきほど、朝丘に相談したとき言われたのだ。
相手が編集者なら世話になってばかりじゃ、意識されないんじゃないか。
押しつけがましくない程度に、相手のことも労わってやるといい、その上で仕事以外のことに誘ったらと言われたのだ。
特に神経が図太い真咲の場合と付け足したのは、何だかムカッと来たので一発はたいておいた。
「えーと……」
電話をするのは止めて、メッセージを送ることにする。体調が優れないと書いているのだから、それぐらいは気遣わなくてはいけないだろう。
『資料は受け取ったけど、体調は大丈夫?』
なんだか凝り固まって可愛くない文面だ。だけど、普段が可愛げがないのにいきなり媚びた文章など書けない。冷蔵庫に買ってきたスイーツを入れているときに返事が届いた。
『はい。大丈夫です。何も言わずに帰ってしまって、すみません』
『いいけど、パーティまでには治してよ』
送っておきながら、すぐにこれではわがままを言っているようだと思い直す。取り消して別の言葉を送ろうとするが、すぐに既読がついてしまった。
返事もすぐに来る。
『パーティ、僕が行くとお邪魔じゃないですか?』
お邪魔? むしろパーティは爽次郎に会うための口実だ。
二人きりでイブに会うことは出来ないから、真尋に無理を言って皆でパーティをすることにしたのだ。真咲はすぐに返信をする。
『邪魔な訳ないじゃない』
『でも、真咲さんの仲のいい人が来るんじゃ』
真咲は仲のいい人という言い回しに首を捻る。
『カナデのこと? カナデなら来るけど、別に初めて会うわけじゃないからいいでしょ』
『他の高校のときのお友達は来られないんですか?』
『ああ。ちょっと誘ってみたけれど、結構みんな忙しくて来られないみたい』
彼らは地元にいなかったり、仕事で忙しかったりする。さっき朝丘を誘ってみたが、仕事での約束があるらしい。
『そうですか。じゃあ、以前真咲さんもお会いした春中さんと宮下さんと一緒に行きますね。ふたりは真咲さんのアシスタントを希望していますし』
スマホの画面の名前を見て固まる。春中と宮下。二人はまだデビューしていない新人で、爽次郎が担当している。春中とは書店で会ったときには爽次郎と親し気に見えたし、宮下とはかなりの頻度で作品を見ているらしい。
恋のライバル。そんな言葉が頭をかすめた。
しかし、すぐに頭を振って意識から消し去る。勝手に決めつけるのは良くない。
マイナスなイメージで二人に接したら、またケンカしてアシスタントとして協力してくれないかもしれない。
「仕事でもなんでも協調性、協調性」
そうつぶやいて、真咲はメッセージを綴る。
『了解。二人が来るの楽しみにしている』
でも、クリスマスパーティでは一番そばにいるのは自分でいたい。真咲はそう念じてメッセージを送信した。
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