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探してもないはずだ
しおりを挟む風子は次の日も、その次の日も来なかった。電話番号もSNSをしているかも知らない。連絡の取りようがなかった。
ギターを弾いている内にクリスマスイブになる。俺は珍しく朝から活動していた。
「ルイくん、久しぶりね。今日はよろしくね!」
肩を叩くのは少しぽっちゃりしている看護師長さんだ。
俺がやって来たのは、親父が入院していた大きな病院だった。ギターケースも肩に担いで来ている。
この病院では、毎年クリスマスイブには病気で入院している子供たちの為にパーティが開かれる。談話室にツリーと手作りの色紙で作った輪っかのロープが飾られていた。椅子に座って子供たちは看護師さんたちの劇を見て楽しんでいた。
俺も親父がこの病院に転院してきたときから参加していた。パーティがあると聞いて音楽が必要だろうと、俺に歌えと親父が命じたのだ。最初は渋々だったが、親父も子供たちも楽しそうにしている笑顔が忘れられなかった。それから毎年参加している。
サンタの帽子を被った俺がギターを持って一人で前に出ると、ルイくーんと長年入院している子から声援が上がる。手を上げて声援に応え、俺はギターをかき鳴らし始めた。
まずは定番のジングルベルを歌う。サビでは子供たちも一緒に。子供たちが大きな口を開けて歌う。ここで長期入院している子供たちは音楽の授業もない。大きな口を開けて歌う機会はこのパーティぐらいだろう。
ふと、奥で椅子に座っているショートカットの女の子と目が合った。車いすにも乗っていないし、点滴も受けていない。
「ルイくん! 次はなに?」
「お、おう! 次はあわてんぼうのサンタクロースだ」
アレンジを加えたイントロを弾きながら、意識は女の子に向かっていた。彼女は楽しそうに手拍子を叩いている。楽しいパーティはあっという間に過ぎた。
「楽しかったね!」
子供たちが親や看護師さんたちに連れられて病室に戻って行く。その波に乗って談話室を出て行く一人に声を掛けた。
「風子」
振り返ったのは、ショートカットの素朴な顔をした女の子だ。この前まで会っていた風子とは正反対の印象の子。だけど、特別何も言わずに俺はポケットの中から赤い手袋を取り出す。
「これ、忘れていたぞ」
「……はは。ルイが持っていたんだ。探してもないはずだ」
風子は短い髪を触りながら苦笑いした。
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