声優召喚!~異世界に召喚された声優は最強の精霊使いです~

白川ちさと

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シルフ編

第六十六話 まさかの再会

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 わたしとイオとエルメラは数日間、針葉樹で覆われた島を調べて回った。

 木の実が生っているのを見つけて食べてみたり、魚釣りをして塩焼きにしたり。島は霧が出てすごく寒い日もあれば、日差しが強くて暑くてしょうがない日もあった。暑い日は川で水遊びをする。



「あははは! ユメノ、それー」

「やったな、エルメラ! えーい!」



 わたしとエルメラは、パシャパシャと水をかけあって遊ぶ。イオは足だけを水につけて、大きな葉っぱで自分を仰いでいた。



「あはははは。楽しいなぁ! て! ちがーう!!」



 わたしは急に我に返る。



「どうしたの、ユメノ?」

「わたしたち、ウキウキキャンプをしに来たんじゃないよね!? シルフを探しに来たんだよね!?」

「そうだけど……、全然見つからないんだからしょうがないじゃない」



 エルメラが言うのは正論だ。この島は隈なく調べているけれど、人もいないのでは聞き込みもできない。



「精霊も襲ってこないから、ついのんびりしてしまったな」



 イオまで締まりのない顔をしている。のんびりするにも、し過ぎだ。きっと連戦続きだったせいだろう。わたしは早くシルフを見つけて、ウンディーネを見つけて、元の世界に帰る手段を見つけないといけないのだから。



「この島には何もいなさそうだな。明日、サラマンダーに次の島に連れて行ってもらおう」

「「うん!」」



 わたしとエルメラは大きく頷いた。そのときだ。



「きゃあああああ!!」



 突然、森から悲鳴が聞こえてきた。



「え!? な、なに?!」

「誰かいるみたいだな」



 イオが杖を持って警戒する。



「精霊が暴れているのかな」

「どうだろう。これまで、どいつも大人しかったが。それより、あれは人の悲鳴だった」



 人がここに居ること自体が珍しいことだ。その人もシルフを探しに来たのだろうか。わたしたちは急いで服を整えて、悲鳴がした森の奥へと向かった。










 滝のそばの水辺よりも、ひんやりした空気の森の中を慎重に歩く。



「もしかして、精霊使いかな」

「その可能性が高いだろうな。この島に来られる人間自体限られている」



 それもただの精霊使いじゃない。人を乗せてこんな上空まで飛べるなんて、強い精霊の証だ。以前出会ったシュルカさんはひとっ飛びだろうけれど、Sランクぐらいの、それも風の精霊使いじゃないとここには来られない。

 そんな強い精霊使いが、悲鳴をあげる事態なんて想定外の精霊が出て来たのかもしれない。わたしはぎゅっと杖を握りしめる。

 しばらく歩くと、また何か叫んでいる声が聞こえてきた。




「――うッ! ――て、――ユ!」




 なにか一人で叫んでいるみたい。精霊に襲われている雰囲気ではない。わたしたちは、さらに近づいていく。森の間に人が立っているのが見えた。

 緑色の袖がひらひらした衣装だ。ふと、既視感を覚える。



「あれ? どこかで見たことがあるような……」

「もう! 何か言いなさいな! ミルフィーユ!!」



 一人の女の子がプンプンと怒って、目の前の小鳥に話しかけていた。



「え。あなたは!」



 ハーフアップにした髪に二つのお団子頭。間違いない。ルーシャちゃんだ。

 ルーシャちゃんはわたしたちを振り返った。目を見開いて、あんぐり口を開ける。



「あなたは、ど素人さん! どうしてこんな所に!?」

「どうしてこんな所にはこっちのセリフだよ。ルーシャちゃん」



 そう。そこにいたのは、サラマンダーに会いに行く前に知り合った、精霊使いのルーシャちゃんだった。わたしがまだ精霊の解放のことも知らなかった頃に、いろいろと教えてもらったのだ。勝手に技術を盗んだともいうけれど。



「な、なな、何でって、ここに居る以上、あなた方と同じ目的だと思いますことよ?」



 何だか知らないけれど、すごく動揺している。でも、確かにこんな所に精霊使いがいる以上、目的は同じはずだ。



「ルーシャちゃんも、シルフを鎮めに来たんだね」

「そ! そうですことよ! まあ、あなた方には無理でしょうけれど!」



 でも、ルーシャちゃんはサラマンダーとノームが味方にいる。わたしたち以外には難しいんじゃないだろうか。そうは思ったけれど、ルーシャちゃんも、ここまで来られるほどの精霊使いだ。

 以前も、わたしのことを助けてくれたし、きっと精霊ギルドのランク以上に実力があるのだろう。後ろにいたイオが前に出て来る。



「ユメノの友達だったか。前に何度か会ったことがあるな。俺はイオだ」



 たぶん、前に紹介したはずだけど、改めて自己紹介するみたいだ。



「わたくしは風の精霊使いのルーシャですわ。ど素人さんの保護者ですのね。浮島は油断するとあっという間に飲み込まれますことよ。お気をつけなさい」



 わたしは、ん?と思った。

 何だか詳しいような言い草だ。初めて来たって訳じゃなさそう。



「それで、あなた方はどこにキャンプを張っているのかしら? お呼ばれされてもよくってよ」



 でも、すぐに相変わらず、ルーシャちゃんはルーシャちゃんだと思う。疑問に思ったことをすぐに聞きそびれて、ルーシャちゃんを滝の近くに張ってあるキャンプ地へと案内した。










「ここだよ。水がすぐに取れるから便利なの」

「あら。こんな所に滝があるのね。涼しくてちょうどいいわ」



 ルーシャちゃんを連れて来た滝のそばのキャンプ地。そばに水の精霊のカニがうようよいるけれど、あんまりルーシャちゃんは気にしていないみたい。

 ここに来る前に、違う浮島に寄ったのかもしれない。太陽が近いせいか、浮島の昼間は短い。辺りはすぐに暗くなってきた。わたしたちは釣った魚で晩御飯を食べる。

 ルーシャちゃんが、おもむろに話し始めた。



「ところで、要塞都市ゲーズでは大変でしたわね。ど素人さんなのに、虹声の巫女だなんて担ぎ上げられて」

「ああ。うん、あのときは大変だったね」



 もう随分と前のことを思い出す。サラマンダーを呼び出されるようになったわたしは、ゲーズの市長に敵国と戦うように仕向けられたんだ。サラマンダーの機転で上手く抜け出せたけれど。

 ルーシャちゃんが、魚の串焼きを振りながら話す。



「あなたがサラマンダーを呼び出して、背中に乗って逃げて行ったなんて滑稽な噂まで立っていましたのよ。そんなこと、あるはずありませんじゃないの。ど素人さんの精霊でそれっぽく見せたのでしょう。でも、戦場からさっさと逃げたのは正解でしたわ」



 わたしとイオは顔を見合わせた。どうやら、あれだけ目撃者がいたけれどサラマンダーが出たというのは、ただの噂話だと思われているようだ。結構派手にやってやったけれど、あの市長がもみ消したのかもしれない。でも、その方が都合もいいかなと思ったときだ。



「ユメノは逃げ出したんじゃないよ!」

「エルメラ!」



 ルーシャちゃんと再会してから今まで、わたしの後ろに隠れていたエルメラが顔を見せた。



「妖精!? な! どこからやって来たのですの?!」



 突然目の前に現れたエルメラに、ルーシャちゃんは目を丸くしている。



「ユメノは戦争を止めて、それからノームのところに行ったの。イオと一緒に暴走していたノームだって止めちゃったんだから!」



 エルメラはふふんと胸を張った。だけど、ルーシャちゃんはエルメラに向けて怪しげな目を向ける。



「何を言っていますの、この妖精。ノームは、以前は大人しかったらしいですけれど、今は相当な暴君になっているらしいじゃありませんの。それをど素人さんが止めるなんて」



 本当にルーシャちゃんは情報通だ。最新とは言えないけれど、ノームのことまで詳しい。



「ユメノはど素人さんじゃないもん! 声優で、みんなに夢を与える存在なんだから!」

「せいゆう? この妖精、本当に頭がおかしいんじゃありませんこと?」

「むきーッ! わたしはエルメラ! 頭おかしくないもん!」



 エルメラは小さな手でポカポカとルーシャちゃんの頭を叩く。

 その後も、エルメラとルーシャちゃんとの言い争いが続いた。結局寝る直前までいがみ合い、わたしはルーシャちゃんにいろいろ聞きたかったけれど聞きそびれてしまった。









 朝。霧が出ていて、ずいぶん今日は冷えるようだ。



「それでは次の島に向かおうか」



 イオが火の始末をして、わたしを振り返った。わたしも、うんと頷く。



「ど素人さん」

「ユメノ!」



 ルーシャちゃんがわたしをど素人さんと呼ぶと、エルメラがすかさず訂正した。ルーシャちゃんは少し口を尖らせて言い直す。



「……ユメノは火の精霊使いだったではありませんこと? 強力な風の精霊でないと、島は渡れませんことよ」



 当然の疑問だ。イオだって土の精霊使い。普通だったら、空を飛ぶなんて出来ない。



「うん。見ていて。サラマンダー、召喚!」



 わたしは杖を掲げた。しかし、精霊石は無反応だ。わたしには分かっている。これは拗ねている反応だ。



「ちょっとサラマンダー! 出てきてよ!」



 わたしは精霊石を通してサラマンダーに叫んだ。



「何をしていますの?」

「いいから、黙っていて」



 首をかしげるルーシャちゃんに、エルメラが口に指を当てて言う。



「最近おざなりになっているようであるが、吾輩こんな登場の仕方は嫌である。ちゃんと正規の手順を踏んでもらわねば吾輩は出て来ぬ」

「ぐぬぬぬ。分かったわよ! 歌えって言うのね!」



 わたしは両手で杖を掴み、マイクのように見立てた。

 そして心をこめて歌う。





 教えて どうして戦うの
 空を見上げれば 星は瞬き、月は輝くのに
 争わないで かつての友たちよ
 あなたが気づけば 風が吹き、大地は歌う
 友よ、答えて どうして憎むの
 あなたの心はここにある 
 一時でもいい 憎しみは忘れて 共に歌いましょう





「綺麗な歌声……」



 歌い終わると、ルーシャちゃんがそうつぶやくのが聞こえた。それと同時に、わたしの目の前の精霊石が燃えるように光だす。掴んだ杖を天に掲げた。



「サラマンダー、召喚!」



 赤い光が精霊石から飛び出てくる。

 ヴォオオオ! と、サラマンダーが力強い咆哮を上げた。



「うむ! では共に行こうぞ、我が友ユメノよ!」

「……虹声の巫女って、ユメノが……本当に?」



 巨大なサラマンダーの出現にルーシャちゃんは腰を抜かしていた。どんな大仰な噂か本当は気にはなるけれど、聞くのは止めておくことにする。



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