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不時着キキョウ便
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ピンポーン
『はーい、どちら様?』
インターホン越しに叔母さんの声が返ってきた。
「こんにちは、鬼灯です。朝顔は今日も部屋ですか?」
『そうよー今鍵開けるから待っててね』
ブツっと通話が切れ、少ししてから玄関の扉がゆっくりと開いた。
「今日もありがとうねー、鬼灯……くん?」
いつものおっとりとして眠たげな目が普段より大きく開かれたまま首を傾げる叔母さんを置いて青園の部屋へ向かった。
「青園……じゃなくて、青園ちゃん。今大丈夫かしら?」
精一杯の高い声で扉に向けて話しかけた。
「木那乃?」
俺の予想に反して青園は案外すんなりと扉を開き、俺を見るや叔母さん同様目を開いて首を傾げた。
「木那乃、だよね? どうしたのその格好」
「青園ちゃんが、秘密を教えてくれたでしょ? だから私の秘密も教えちゃおうかなって。私実は女装趣味有ったのよね。女の子に憧れてたっていうか、自分を女と思ってたのよね」
勿論、大嘘であるが、本当の事の様に前髪を軽く掻き上げ話した。
「そうだ! 高校出たら一緒に起業しましょうよ。従業員は女性だけで、何するかは……特に決めてないけど」
声の練習はしてないし、才能なさそうだが、それでも俺は高い声を出し続けた。
「あっはは、良いねそれ。じゃあ私、式場建てたいな、真っ白の」
青園は、今度こそ本当に笑いながらそう言った。
それから芸大を辞めてお金を稼ぎながら経営について学んで、やっとここまで来れたんだ。
「これで何で青園ちゃんがあんたを好きな理由も、私が女装してる理由の全てよ」
「分かった。分かったが……やっぱり青園が好きなのは俺じゃないな」
「じゃああの女の子が聞いたのは何だったっていうの? ただの勘違いとでも言うつもり? あんたのせいであいつは男に近付けなくなったっていうのに!」
私は目を見開いてバンッと机を叩いて詰め寄る。
「いや、確かにそれらしい話を図書室で話した事は有ったが。完全に誤解だ。俺のせいで男性恐怖症になったって言うのも含めてな」
「んなっ、じゃあ何で青園は」
「そもそも、俺はあいつから完全に警戒を解かれた事はたったの一度だってねぇよ。正真正銘、青園が好きなのは鬼灯さん、あんただよ。多分今もな」
「ちょっと待ちなさい」
俺は出て行こうとする川波の手を掴むと、ポケットからメモを取り出して、ささっと電話番号を書いて渡した。
「これは?」
「あの時会った2人の電話番号よ、使うかどうかはあんたが決めなさい」
「……ありがとう、貰っておくよ」
そう言って川波は式場を出てタクシーに乗ってしまった。
「にしても、彼が理由じゃないなら何で青園ちゃんは男の人が苦手になったのかしら」
「それ以前に別で男の人に何かされたとかですかね?」
「だったら私だって気づいてるわよ、その頃は普通の男の姿だったのよ? でもあの日まではそんなそぶり私に対して一切してなかったもの」
「……じゃあ、鬼灯さんにじゃなくて、例えば店員とかに対してはどうですか?」
「店員?」
「先輩、男性の店員にも発症してそうだったので」
「店では昔から私が注文してたから、特に感じなかったわね。昔から人見知りで店員とも話せて無かったのよね、だから私がするのが癖ついちゃって」
「それっていつからですか? 本当に生まれてからずっとですか?」
「え? そうねぇ、そういえば、ほんとーに前だけど、幼稚園生位の頃は誰にでも懐いてたわねぇ」
確か青園の両親が離婚した時から青園は人見知りする様になった筈だ。
「そういえば、青園ちゃんが小学校1年生の時両親が離婚しててね、言われてみればあの頃から人見知りになってた気がするわね」
「じゃあ、もしかしたら父親と何か有って、それが原因で男性恐怖症になったんじゃ無いですか?」
「いや、それなら俺があの日まであいつから怖がられてるのに気付かない訳が無い」
「……あー、もしかしたら、青園先輩にとって鬼灯さんは男の格好とか、女の格好とか関係なく、この世で唯一近くにいても大丈夫な、安心できる男性なんじゃないですかね」
『はーい、どちら様?』
インターホン越しに叔母さんの声が返ってきた。
「こんにちは、鬼灯です。朝顔は今日も部屋ですか?」
『そうよー今鍵開けるから待っててね』
ブツっと通話が切れ、少ししてから玄関の扉がゆっくりと開いた。
「今日もありがとうねー、鬼灯……くん?」
いつものおっとりとして眠たげな目が普段より大きく開かれたまま首を傾げる叔母さんを置いて青園の部屋へ向かった。
「青園……じゃなくて、青園ちゃん。今大丈夫かしら?」
精一杯の高い声で扉に向けて話しかけた。
「木那乃?」
俺の予想に反して青園は案外すんなりと扉を開き、俺を見るや叔母さん同様目を開いて首を傾げた。
「木那乃、だよね? どうしたのその格好」
「青園ちゃんが、秘密を教えてくれたでしょ? だから私の秘密も教えちゃおうかなって。私実は女装趣味有ったのよね。女の子に憧れてたっていうか、自分を女と思ってたのよね」
勿論、大嘘であるが、本当の事の様に前髪を軽く掻き上げ話した。
「そうだ! 高校出たら一緒に起業しましょうよ。従業員は女性だけで、何するかは……特に決めてないけど」
声の練習はしてないし、才能なさそうだが、それでも俺は高い声を出し続けた。
「あっはは、良いねそれ。じゃあ私、式場建てたいな、真っ白の」
青園は、今度こそ本当に笑いながらそう言った。
それから芸大を辞めてお金を稼ぎながら経営について学んで、やっとここまで来れたんだ。
「これで何で青園ちゃんがあんたを好きな理由も、私が女装してる理由の全てよ」
「分かった。分かったが……やっぱり青園が好きなのは俺じゃないな」
「じゃああの女の子が聞いたのは何だったっていうの? ただの勘違いとでも言うつもり? あんたのせいであいつは男に近付けなくなったっていうのに!」
私は目を見開いてバンッと机を叩いて詰め寄る。
「いや、確かにそれらしい話を図書室で話した事は有ったが。完全に誤解だ。俺のせいで男性恐怖症になったって言うのも含めてな」
「んなっ、じゃあ何で青園は」
「そもそも、俺はあいつから完全に警戒を解かれた事はたったの一度だってねぇよ。正真正銘、青園が好きなのは鬼灯さん、あんただよ。多分今もな」
「ちょっと待ちなさい」
俺は出て行こうとする川波の手を掴むと、ポケットからメモを取り出して、ささっと電話番号を書いて渡した。
「これは?」
「あの時会った2人の電話番号よ、使うかどうかはあんたが決めなさい」
「……ありがとう、貰っておくよ」
そう言って川波は式場を出てタクシーに乗ってしまった。
「にしても、彼が理由じゃないなら何で青園ちゃんは男の人が苦手になったのかしら」
「それ以前に別で男の人に何かされたとかですかね?」
「だったら私だって気づいてるわよ、その頃は普通の男の姿だったのよ? でもあの日まではそんなそぶり私に対して一切してなかったもの」
「……じゃあ、鬼灯さんにじゃなくて、例えば店員とかに対してはどうですか?」
「店員?」
「先輩、男性の店員にも発症してそうだったので」
「店では昔から私が注文してたから、特に感じなかったわね。昔から人見知りで店員とも話せて無かったのよね、だから私がするのが癖ついちゃって」
「それっていつからですか? 本当に生まれてからずっとですか?」
「え? そうねぇ、そういえば、ほんとーに前だけど、幼稚園生位の頃は誰にでも懐いてたわねぇ」
確か青園の両親が離婚した時から青園は人見知りする様になった筈だ。
「そういえば、青園ちゃんが小学校1年生の時両親が離婚しててね、言われてみればあの頃から人見知りになってた気がするわね」
「じゃあ、もしかしたら父親と何か有って、それが原因で男性恐怖症になったんじゃ無いですか?」
「いや、それなら俺があの日まであいつから怖がられてるのに気付かない訳が無い」
「……あー、もしかしたら、青園先輩にとって鬼灯さんは男の格好とか、女の格好とか関係なく、この世で唯一近くにいても大丈夫な、安心できる男性なんじゃないですかね」
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