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黒色の果実は夜に咲く
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今から千年ほど昔、私は生まれました。
初めてみた景色は丸められた紙の散らばった実験室。
「やった! 成功だ!」
液体越しに見たマスターの顔は、歪んで見えた。
生まれながらに、私は完璧だった。
思考回路は人を凌駕し、四肢の柔軟さはタコにも勝る。
家事も戦闘も、どんなことでもそつなくこなせた。
私ほどの性能のアンドロイドを作り上げるというのは、まさに神の偉業だった。
マスターは私を作って自信を付けたのか、アンドロイドの作成にのめり込んでいった。
二号機は生まれた直後に、重力に耐えられず自壊した。
三号機は、言語モジュールがうまく動かなかった。
四号機も、五号機も、どこか、なにかおかしかった。
一度作れたから、またできるはず。
私という最高傑作は、マスターの思考を癌のように蝕み続けました。
けっきょく私を超えるアンドロイドは作られませんでした。
まさに奇跡の一作。
皮肉なもので、マスターはアンドロイドを作れば作るほど、私が自身の身に余る技術だった。
そう理解してしまったのです。
過去の栄光。それでもマスターは悲観的ではありませんでした。
新しいアンドロイドが完成するたびに祭りを開いて、盛大に祝いました。
町中の人を呼び、花火を打ち上げて、何日もどんちゃん騒ぎ。
私たちアンドロイドも、いろいろな屋台の経営にせわしなく動いていました。
そのときのマスターは非常に楽しそうに見えました。
先日、二号機が旅立ちました。
ここに残ったアンドロイドは私が最後。
「そこで、ツキ様にはマスターの最後の願いをかなえてほしいのです」
——話を終えたセロは振り返った。
着いたのは、あの四角い部屋の中にあった階段を下りた先。
位置でいえば、蜘蛛の中心当たりだろうか。
セロが近づくと、扉は自動で開いた。
蜘蛛の操縦室のようで、様々なレバーやボタン。外を見られる画面が張られていた。
それらを一望できる位置に、椅子がタイヨウに背を向けて置かれていた。
「それで、願いって? そんな風貌のやつに、できることなんて、私にはないよ」
「そんな風貌?」
「流石ツキ様です」
タイヨウは顔をこわばらせた。
セロが椅子を回転させた。
椅子に座っていたのは、服まで朽ち果て、骨だけになってしまった骸だった。
骸には埃ひとつ付いていない。
セロがそれをまだマスターとして、大切に扱っているのがわかった。
「最後にここで、また祭りを開きたい。それがマスターの最期の願いでございます」
「お祭り」
タイヨウはその単語にピクリと体を動かした。
「そんなん、勝手に開いたらいいじゃない」
「肝心の、花火に使う火薬が無いのです。生憎私たちアンドロイドは、ここを出ることができませんので」
「つまり、私らにあの実を取ってこいって言うんだね?」
「あの実? 火薬じゃなくて?」
「ここの花火は特別でね。サマリーっていう木の実を原料にしてるんだよ」
「左様でございます」
「で、もちろんただでとは言わないよね?」
「ちょっと、ツキ」
道中の話を聞いて、タイヨウはセロに感情移入してしまっていた。
タイヨウの中では木の実を持ってきて、祭りに参加することは、決定事項と化していたのだ。
「もちろん。叶えていただいた際には、ツキ様が必ず欲しがるものをご用意いたしておりますが、ここでは言わない方が、よろしいでしょう?」
セロは、どこか含みのある言い方で、人差し指を自身の口元につけてウィンクした。
初めてみた景色は丸められた紙の散らばった実験室。
「やった! 成功だ!」
液体越しに見たマスターの顔は、歪んで見えた。
生まれながらに、私は完璧だった。
思考回路は人を凌駕し、四肢の柔軟さはタコにも勝る。
家事も戦闘も、どんなことでもそつなくこなせた。
私ほどの性能のアンドロイドを作り上げるというのは、まさに神の偉業だった。
マスターは私を作って自信を付けたのか、アンドロイドの作成にのめり込んでいった。
二号機は生まれた直後に、重力に耐えられず自壊した。
三号機は、言語モジュールがうまく動かなかった。
四号機も、五号機も、どこか、なにかおかしかった。
一度作れたから、またできるはず。
私という最高傑作は、マスターの思考を癌のように蝕み続けました。
けっきょく私を超えるアンドロイドは作られませんでした。
まさに奇跡の一作。
皮肉なもので、マスターはアンドロイドを作れば作るほど、私が自身の身に余る技術だった。
そう理解してしまったのです。
過去の栄光。それでもマスターは悲観的ではありませんでした。
新しいアンドロイドが完成するたびに祭りを開いて、盛大に祝いました。
町中の人を呼び、花火を打ち上げて、何日もどんちゃん騒ぎ。
私たちアンドロイドも、いろいろな屋台の経営にせわしなく動いていました。
そのときのマスターは非常に楽しそうに見えました。
先日、二号機が旅立ちました。
ここに残ったアンドロイドは私が最後。
「そこで、ツキ様にはマスターの最後の願いをかなえてほしいのです」
——話を終えたセロは振り返った。
着いたのは、あの四角い部屋の中にあった階段を下りた先。
位置でいえば、蜘蛛の中心当たりだろうか。
セロが近づくと、扉は自動で開いた。
蜘蛛の操縦室のようで、様々なレバーやボタン。外を見られる画面が張られていた。
それらを一望できる位置に、椅子がタイヨウに背を向けて置かれていた。
「それで、願いって? そんな風貌のやつに、できることなんて、私にはないよ」
「そんな風貌?」
「流石ツキ様です」
タイヨウは顔をこわばらせた。
セロが椅子を回転させた。
椅子に座っていたのは、服まで朽ち果て、骨だけになってしまった骸だった。
骸には埃ひとつ付いていない。
セロがそれをまだマスターとして、大切に扱っているのがわかった。
「最後にここで、また祭りを開きたい。それがマスターの最期の願いでございます」
「お祭り」
タイヨウはその単語にピクリと体を動かした。
「そんなん、勝手に開いたらいいじゃない」
「肝心の、花火に使う火薬が無いのです。生憎私たちアンドロイドは、ここを出ることができませんので」
「つまり、私らにあの実を取ってこいって言うんだね?」
「あの実? 火薬じゃなくて?」
「ここの花火は特別でね。サマリーっていう木の実を原料にしてるんだよ」
「左様でございます」
「で、もちろんただでとは言わないよね?」
「ちょっと、ツキ」
道中の話を聞いて、タイヨウはセロに感情移入してしまっていた。
タイヨウの中では木の実を持ってきて、祭りに参加することは、決定事項と化していたのだ。
「もちろん。叶えていただいた際には、ツキ様が必ず欲しがるものをご用意いたしておりますが、ここでは言わない方が、よろしいでしょう?」
セロは、どこか含みのある言い方で、人差し指を自身の口元につけてウィンクした。
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