私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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新たなる布石の登場

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 ヘリコプターは当たり前だか、その神社があるところに止まることはできない。どこに行くのかと思っていたら、まさかのまたの大邸宅。葉山の丘の上に別宅だと言われる。ヘリから見下げるその家は、大きな丘の上の一軒家いうよりちょっとした美術館かなにかと思っていたら、こちらの御曹司の別宅でした。こちらの家にもヘリポート完備とは……さすがです。組長……いえ、会長。

 騒々しいヘリから降り立ち、その小さな美術館といった趣の別邸はからは美しい相模湾が見渡せた。正直、蓮司がかわいそうに思えてきた。体ひとつなのにこんないっぱい大きな家があって、両親もすでに他界。兄弟や親戚のことはあまり聞いたことがない。彼が金に物をいわせて何かを強要したり、自慢するところは見たことがない。しかも多忙すぎてこんな別宅さえほとんど来る機会などないだろう。

 思わず、声が出てしまう。
 「蓮司会長って、体は一つなのに、こんな大きな家ってちょっとさびしいですね」
 彼の顔を見ないでいったので、どんな顔をしているかは想像できない。背後からの声しか聞こえなかった。
 「……美代」
 振り向いて返答する。
 「あ、美代って呼ばないでください。なんか変です。上司なんですから……」
 「じゃー子リスでもいいか?」
 「え? さらに呼び名が悪くなってますよ」
 「だったら、美代でいいではないか?」

 絶対にそんな馴れ馴れしく呼んでほしくない。だって自分があの白色のリビングルームに呼ばれるような女の一人に成り下がるような気分がするのだ。

 「いや、土屋でお願いします」
「……いやだ……」
「!!!!!!!」

 最近なぜかこんなやり取りが多くなってきた。それを驚いて歩美ちゃんが唖然として見ている。

 「美代!!あんたいつもそんな感じ?」
 「え?どういうこと?」
 「だから!!!あの会長さんと……」
 「エ? まずい?」
 「ま、まずいというか……これはちょっとすでに原始棒銀かも……」
 「な、なにそれ……また将棋用語?? 不安な響きしかしないんですが!!」
 「初見でその攻めを見分けるのが、かなり困難。が、奥が深い攻めなので、その対策がなければ、知った後では後の祭り……」
 「ごめん。歩美ちゃん、まったくやっぱり意味不明。つまり、なんかの対策がないとやばいってこと?」
 「んんんん……もう時すでに遅し???かも」
 「え? なんなの? それ??」

 邸宅には玄関先のU字のロータリーに黒塗りタクシーが3台あった。
 これは……と思っていたら……
 「公共機関使わないとな……誰かさんが言ったじゃないか……」
 どこかのセレブのお兄さんが私たちに話しかける。いえ、違うね。上司だったよ。

 ぐうの音も出ない。
 なにかが違うと思うが、だんだん反論する気力が失われていた。

 「いいよ。美代、乗ろうよ。もうなんだがヘリコプターで腰ぬかしたけど、なんだかこのペースなれてきたよ」

 歩美ちゃん! あなた素晴らしい! よかった友達になれて……

 「うん。わかった。乗ろう!」
 二人の会話をにこやかに眺めていた蓮司会長だったが、話が誰が前に座って、後ろに座るかで揉めると顔が険しくなる。
 「だ、だからさ!!!タクシー三台あるから、そんなに後部座席座りたかったら、もう一台あるし、私、助手席でも全然大丈夫だよ」
と、私が提言したら、キッと二人に睨まれる。
 「「そういう問題じゃない!!」」
 いたたまれない。6人ぐらいのSPさんが立ちながら苦笑して我々を見ている。
 隊長の山川さんが、
「蓮司会長……レディーファーストじゃーないですか?」
と言ったので、歩美ちゃんがニヤっと蓮司に微笑む。

 実はこの歩美……あの二日酔いに倒れている真田から連絡をもらった時に一言彼から言われていた。

**

 歩美サイドのストーリー

 いつもの寮の狭い部屋で寝正月をしているところに、けたたましい携帯の電話が鳴る。昨日は大晦日の特番を見ていたら、そのまま小さいソファーで寝落ちしてしまっていた。

 「工藤歩美様。元旦早々から申し訳ありません」

 寝不足から頭痛がするので、電話口の口調からそんなんだったら、寝かしてほしいと歩美は思う。電話を切ろうとしたら、

 「あのご友人の美代様のことで身体に関わる大事な内容でございまして……」
と、この変に慎重な口調で話す男に思い当たることがあった。

 「あなた……もしかして真田さん?」

 「……はい、私、土屋美代様の同僚の真田と申します。ただいま、お時間いただきまして、お話したいことと早急にお願いしたい……ぅうっ……いえ、すみません。お願いしたいことがあります」

 電話口の美代の真田は具合が悪そうだが、それを抑えて話をしている感じがあった。

 「工藤歩美様。あたらめまして、土屋美代様の同僚の真田と申します。あの初対面で、しかも電話口で大変失礼しますが、しかも、ちょっと美代様に関して事情がありまして、最近大変親しくされている歩美様にちょっとご相談とお願いがございます」

 「なに? お願いって。正月早々なんだから、かなりのことじゃないと私、キレるわよ」

 「ふぅうう。それがですね……美代様の上司、つまり私の上司の話なんですが……」

 真田という男は、時々なにかの具合が悪そうな気配も見せながらも、自分の上司、御曹司が美代にベタ惚れなことを説明した。だが、その気持ちはまだ美代には伝わっていないし、それを自分はお手伝いしたいが、いまの状況だとその蓮司会長の気持ちと行動が先走りすぎて、害にしかなりえないことを歩美に説明する。だから、害から美代を守って欲しいということだった。

 そのお願いとはかなり歩美を仰天させるものだったが、彼女の棋士マニアいや、勝負事がすきな性格が相まって、
「わかりました。お受けします。美代を守ります。おたくの変態系鬼畜のご主人様から……」
と答えた。

 ちょっと絶句した真田は、
「さ、さすが美代様がご友人とされる方ですね。頼もしいです。でも、まあそんなはっきりと第三者から変態系鬼畜と言われるとちょっと従事しているものとしては、かなり複雑な気持ちになりますが、まあその辺り、執着が強い主人ぐらいに訂正していただけますとありがたいです……」

 歩美はそんな提言をする真田には沈黙で返答した。

 「あ、真田さん!!」
 「なんでしょう……」
 「あんたのご主人……本当に美代のこと大切に思っているの?遊びだったら、マジ許さないよ!!」

 美代の苦労を知っている歩美は、鋭い目線で真田を見る。

 「はい。それは本当です。恥ずかしながら、主人の遅き初恋だと思います。だから、どうしていいかわからないのです。へたに権力と財力、それにあの容姿……すべてを持っている人なのに、それをもてあましながら、美代様という存在にどう接していいのか混乱しているのです。でも、美代様が傷つくようなことをするということは考えられません」
 「わかった。協力する。でも、私、あんたのとこの御曹司の味方でないからね。美代の味方だから……」

 真田がゆっくりと口角を上げる。

 「結構です。それぐらいの方でないと……こちらとしても、お願いした甲斐がありません」

 歩美が疑問を思って質問する。

 「でもさ、真田さん。美代がそんな蓮司会長って人に気持ちが持てないで、彼の元から去ってしまったらどうするの?」

 電話口で真田の沈黙が続く。

 「……そうならないように……こうやって私が努力している次第ですが、まあ……歩美さんにははっきりお伝えしたほうがいいかもしれませんが、蓮司会長……いままで欲しいと思ったものを取り逃がしたことは一切ありません。私の知る限り……」

 今度は歩美が沈黙してしまった。



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