私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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貴方は何を考えているの?

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 また蓮司が話す。

 「美代、こっちへ、おいで……」

 なんだ、そのカウンターパンチのようなフレーズは!と、思いながら、美代は慄いた。

 「あの、その……」
 「何もしないからおいで……」
 「ええ? ありえないと思います」

 こんな密室で、しかも合意している男女がベットの上で何もないというのは、いささか美代でもおかしいと思う。

 「大丈夫。ここにくるんだ」

 ニコニコしている蓮司がベットの反対側を手で叩く。
 なんだか急に歯切れが悪くなった美代は、モゾモゾとしながら、蓮司の反対側のベットにちょこんと座った。かなり蓮司からは距離があった。しかも、顔は反対向きにしてある。

  「どうした? 美代。急に怖気付いたか?」
  「な、ひ、ひどいです!!」

  美代が振り向いて抗議しようとした瞬間、蓮司の力強い腕に掴まれた。

 「ふ、バカだな、お前は……」

 そういうと、蓮司は美代をベットのセンターに引き込んで美代を抱きしめた。蓮司の厚い胸板が美代のバスローブ越しでもわかった。お互いがベットの上に座りながら、蓮司がまたその熱い唇を美代の柔らかい白い肌や唇に落としていく。

 「い、や、ズルい!! ああ、だました……」

 そのキスに翻弄されながら、美代は抗議をする。

 「バカだな、美代。男はズルいんだ。覚えておけ」

 その意地悪な口元が美代の首もとをかなり強く吸い上げた。

 「あ、い、痛いっですよ!!」
 「教訓だ。覚えておけ」
 「な、なんで教訓だなんて!!」
 「はーー、なんてうるさい口だ。さっきから文句ばかりだな」
 「ひ、ひどっい! かいっ」

 残りの言葉は蓮司の口元に吸われていく。真っ赤になった顔の美代が目を見張る。
 蓮司が顔にかかる美代の黒髪を指ですくい上げ、ちょっと笑みを漏らしながら、美代の口を塞いだ。そして、また愛おしいそうに食べ尽くす。

 「んっ、れんじっ、なんかっ」

 美代のバスローブが段々と、はだけてきてかなり恥ずかしい格好になってきた。しかし、美代自身はそんなことよりも、どう目の前の猛獣(まあ蓮司的には、全く正反対のつもりで接していたのだが)をどう扱ってよいか、四苦八苦していた。

 「なんだ、覚悟を決めたんだろう?」

 白い肢体の腿や襟元がかなり危ない位置まで見え始めると蓮司が生唾を飲む声が聞こえたが、美代の耳には届かなかった。
 手がそのバスローブの腰紐にかかりそうだった。もう美代は先ほどの悪態をついているような状態ではなく、微かに震えながら蓮司の甘い深い口づけを受け入れていた。

ーー無理だ。抑えられない……

 蓮司は先ほど熱いシャワーを浴び、その気持ちを押しやった筈なのに、己の湧き出てくる想いが抑えられないでいた。自分の欲望の全てをその口元に抑えながらであるが発散させている。だが、今、この密室と海の上というシチュエーションが彼の自制心をガタガタと崩していく。
 最後という言葉がどんどん蓮司の頭を侵食し、美代に対して「何故わからない、この気持ちを」と、ほどんど怒りにも似た感情で美代を食い尽くす。

 「美代、お前は何を考えてるんだ」

 思わず思っていた事が口から出た。

 「え? 今ですか? ち、チャンピオン、あ、お手柔らかに……日曜、講座のおばあちゃんが……」

 ベッドで腰を抜かした美代が、蓮司に体重を支えられながら、よろよろと答えている。

 「なんだ、それ? ああ、聞くだけ無駄だな。ああ、もう面倒だ、身体に聞いてみるか?」

 さらに深いキスをしながら、美代を追い込んでいく。ただ触れているだけでたとえ無いような気持ちが溢れてきた。

ーー離さなければ、大丈夫だ。俺が美代さえ離さなければ、何も問題ある筈、ないじゃないか?ああ、やっぱりこの状況だから、最後っていう言葉は勘違いだ。そんなはずはない。俺がどんだけ美代を愛しているか、わからないというならば、大人のやり方でわからせるしかないだろ?

 蓮司の大きな手が美代の襟元に忍び寄る瞬間だった。
 その時、海が急に激しく波立ち、船がガタっと大きく揺れた。グラスは無事だったが、中に入っていた水が多少テーブルを濡らした。
 その瞬間、マスターベットルームの中に飾られてある額縁の絵がズレた。
 蓮司は驚いてその絵を見つめる。それはロシアの田舎の風景画だった。雪が降り積もっている中を少女と親らしき二人が渡り鳥を見ている風景画だった。

 おかしい話だ。船舶の中は、落ちるようなものは全て壁に接着剤でつけてある。揺れて落ちないようにしてあるのだ。蓮司が美代から離れ、何かを確かめるように額縁を見る。よく見てみると、額縁の接着剤が弱くなっていたみたいで剥がれていた。補強の為のフックが付いていたおかげで落ちなくて済んだようだった。

 「エレーナ?」

 ふと、蓮司はつぶやく。






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