私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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歩美と真田とロープの関係

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 地下に降りた歩美と真田はまだ手を繋いだままだった。
 手を離すタイミングが歩美には全くわからない。

 「行きは急ぎだったので、正面玄関で矢崎に車を回してもらいましたが、帰りはまあゆっくりと帰りましょう」
 「よ、よくわからないわ。さっきまで美代を心配していたかと思えば、のんびり帰ろうだなんて」

 真田は自分のポケットから鍵を出し、スマートキーで車の位置を確認した。

 「あ、ありました。行きましょう。まあそうですね、あなたが必要な時だと思うんです。今の美代様は……」
 「え? 」
 「あなたの言う通り、蓮司様のことですから、美代様の場所などはすぐにわかります。でも、彼の覚悟がまだ、どうなんでしょうか、ああ、私が口を挟むべき問題ではないですね」
 「え? 美代の覚悟じゃないの?」
 「……そうですね。普通は、財閥の御曹司の妻になるなら、それなりの覚悟っとなりますよね。でも、この蓮司様と美代様の場合、私は、結局、蓮司様のほうが、まあ……美代様よりそれなりの覚悟が……」

 「……ふーーん、変なの」

 そんな歩美を見て苦笑しながら、車の方へ歩いていく。
 歩美は自分の足元を見ながら歩き始め、真田に手を引かれながら、ついていく。
 真田の言葉の真意を聞きたいと思ったが、いきなり現れたスポーツカーにびっくりしていまい、歩美が唖然とする。

「これって、真田さんの? こう言う趣味なの?」

 歩美の目の前に現れたのは、いかにも高価たかそうな外国製のスポーツカーだった。歩美は知らないがアストンマーチン社の最高級クラスの車体で、シルバーの輝きとその高級感溢れる流線美が美しかった。

 「ああ、これですか? いえいえ、蓮司様の所有物です。今日は急ぎとありまして私がお借りしてきました。歩美さんは車酔いとかはしませんか? 安全運転をいたしますので、ご心配なく」

 当たり前だと言うように、真田は歩美側のドアを開け、まるで彼女の執事のように礼をした。

 「どうぞ、お嬢様」

 手をわざとなのか歩美に差し出す。

 「な、なんなの! やめてよ!」
 「ふふっ、歩美さんはお隠しかもしれませんが、私はあなたが何者か知っていますよ。別にこう言う扱い、昔はよく受けていませんでしたか?」
 「え?」
 「すみません、余計な事、言い過ぎましたね。ああ、でも、きっと蓮司様が女の子だったら、きっと貴方のような方で、私はお仕えしていたんでしょうね……」

 真田がそう言いながら、歩美を見つめていると、
 「何、たわごと言っているのよ!」
と歩美が言いながら、真田の手を取らずに、オレンジ系な総革張りの車内へと自ら座った。
 真田はそんな歩美を柔らかな目線で見ながら、自分は運転席に乗り込んだ。
 全てのことに驚いている歩美は今、自分がなににこんなに興奮しているのかがわからなくなる。

 自分の正体?
 それとも、いきなり真田と二人きりで密接な空間にいるから?
 全てが頭の中でぐるぐると回り出す。
 エンジンを動かし、真横の歩美を微笑みながら、真田は見た。

 「大丈夫ですか? もう転べないから、心配ないと思いますが……あ、申し訳ありませんが、シートベルトをしていただけますか?」
 「あっ、そうね」

 焦っている歩美が急いでシートベルトをはめようとするが、頭が混乱しているのと、初めての車のため、すぐにシートベルトが上手く締められない。

 「ご、ごめんなさい」
 手でベルトともがいている間に、また自分の躰にふわっと、あのコロンの匂いが香る。
 「え! あ、ちょっと、さ、真田さん!!」

 真田がいきなり襲いかかってきたかのような格好で、歩美がパニックになっていた。
 だが一方の真田は、平然としているようで、上半身をもっと歩美に擦り寄せ、シートベルトのバックルをカチンっと金具に差していた。
 彼の吐息でさえ感じる距離は、歩美にとって衝撃的すぎた。

 「はい、出来ましたよ。行きましょうか」
 「……」

 歩美は、ただ火照る顔を横に向け、真田からの視線を避けた。
 とてもまともに彼の顔なんて見れなかった。

 無言のまま、車は走り出す。
 時々、ちらっと車を運転する真田を盗み見る。

 「どうかされましたか?」

 え、運転しているのに、どうして見ているのが、わかっちゃうの?
 ま、まさかデートみたいなどと言えない、歩美は、
 「あ、あんたが運転するなんて、知らなかった」
と言った。
 「ああ、そう言うイメージですか? 私は? まあ、必要なことはできるように訓練してあります。それに私もいい大人ですので、歩美さんが思っているほど、ひ弱ではないんですよ」

 「いえ、そう言う意味ではないっ、です」

 ドキドキしながら、歩美は答えた。
 二人はあまり会話もせず、都会の喧騒の中を静かな車内で過ごした。
 いくつもの信号のライトが流れていく様子を歩美は見ていた。
 彼の大きな手がギアシフトにかかっている。
 指輪ないもんね……。

 あれ、真田さんって彼女いるの?
 こんな初期的な質問、しなくちゃならないなんて、自分が策士して、かなり抜けていることに気がつく。
 前に、ちょっと何気無く美代に聞いてみたことがあったけど、好みの女性のタイプって話になったら、なんだかそわそわして、話を誤魔化された感じだった。
 あれ、もしかして、真田さんってかなりの変態かマニア趣味なの?
 ありえるわね。

 「真田さんはさーー、あの、彼女とかいるの?」
 
 なるべく感情を込めないで歩美は聞いてみた。
 車を滑らかに走らせながら、真田は答えた。

 「……不思議な質問ですね。歩美さんは、自分を誘拐する男に付き合っている女がいるかって気にするんですか?」
 「!!!!ち、違うわよ! 暇潰しよ。退屈だから、ちょっと興味があっただけ」
 「なるほど、世代のギャップを感じますね。今の若者は暇潰しにそのような会話をするのですか?」
 「煩いわね。細かく考えないでよ。いるの? いないの?」
 「……君のような若い方に話すのには、なにか恥ずかしいですが、いませんよ。そういう方は特に……」

 君っと言われてドキッとする。でも、いないと言われて、ものすごい安堵する歩美だった。でも、素直になれない歩美は口からは違う言葉が出てしまう。
 「ああ、かわいそうね。あんな人使いの荒い上司だと、そんな彼女を作る時間なんて無さそうだし、出来ても会えなくて、彼女にすぐフラれちゃいそう!」
 ちょうど、信号のために、車は止まった。
 真田が苦笑いをしている。

 「歩美さんは……可愛いですね。まだ……知らないのでしょうね? 男はね、単純な生き物なんですよ。時間が無くたって、好きな女のためなら、死にものぐるいで時間なんて作るもんなんですよ。だから、もし将来貴方に好きな人ができて、その彼が時間が無いから会えないなどと言うのなら、よっぽどの理由がない限り、そいつは眉唾ものだ。覚えておきなさい、お嬢さん。貴方はしっかりしてそうだが、案外、美代様よりも危なっかしいですね」

 信号が青になりまた発進する。

 「な、何よ! 馬鹿にして! その上から目線! 自分が年上だからって威張ってない?」
 「え? 確かに年上ですし、人生経験は貴方よりはありますから、ちょっと美代様のご親友である歩美さんが悪い男に引っかからないように、進言をさせて頂きました」

 歩美はその悪い男が貴方なんですけど!! と心の中で叫んでいた。
 そんなことを考えていると、全く見覚えがあり過ぎる場所に車が止まる。
 
 「え! ここ、私の寮の前なんですけど……」

 パーキングブレーキを入れながら、真田がその微笑を歩美に注ぐ。

 「あれ、やっぱり誘拐されたかったですか?」
 「なぁ! 違うわよ、覚悟していたから、気が抜けたのよ。送ってくれたのね、ありがとう。よかったわ、やっぱり、冗談なの……」
 言葉が終わる前に、車から出ようとした歩美の手首を真田がぐっと捕まえる。

 「いえ、冗談じゃないですよ。 歩美さん、泊まる荷物を持ってきてください。一週間分泊まる用意でお願いします」
 「え、なに? じゃーここには」
 「一応、女性ですから、いろいろなものが必要だと思いまして……」
 「!!」
 「……でも、10分以内に帰ってきてくだい。そうでなければ、私が乗り込みますよ」
 「!!! それって犯罪者じゃない! 警察呼べるわよ。あんなロープとか怪しげなものを持っているんだし!」
 「そうですかね、歩美さん。警察にが一緒にこのロープを使う関係なんですっとも、言えるんですよ」

 その言葉の意味を理解するのに、歩美は数秒かかった。
 急激に体の体温が上がり、顔が真っ赤になる。

 「さ、真田って、かなり変態なのね! 信じられない…」
 「さあ、早く、その変態がロープをもってあなたの部屋に忍込まれないように、早く支度をしてください。今日は美代様のために人肌、脱いでください。お願いします。ああ、それとも貴方の部屋の周りで、どのようにこのロープがでいろいろ使えるか、周りの寮生の方にもご説明しましょうか? ちょっと刺激が強過ぎるかもしれませんが……」

 「ふ、ふざけるな! 絶対ここにいなさいよ。一歩足りとも、動くんじゃないわよ。速攻で帰ってくるから!」

 まんまと真田の手中にはまり、プンスカ怒った歩美は速攻で準備を整えに行った。
 ただ、車内で真田はひとり、
 なんで「女子会を美代様として欲しいから、きてください」
って言えなかったんだろうと自己自問していたのであった。

 そんな感じで、歩美はお泊まりの準備万端で大原家を訪れることになった。



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