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求婚
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昼間はまだ暖かい日差しがあるため、このようにテラスで日向ぼっこしながらお茶をできるのだが、そのいきなりの殿下の求婚に、嵐の予感を殿下以外の三人が感じた。
「一目惚れっいうのかな。信じられないけど。しかも、エルはもうじき公爵令嬢になるなら、僕に嫁ぐのになにも問題ない。王家に嫁いでも、公爵家は継げる。子供をいっぱい作って、そのひとりに公爵にすればいいし」
「で、殿下、そうは言っても……」
ギデオンが言葉に詰まっていると、そこにひとりの人が現れた。
第一王子のマルクスだった。
「おい、ミハエル、口が軽すぎるぞ」
「あ、マルクス。なに、盗み聞きしていたの? それってちょっと卑怯じゃない」
「なにが卑怯だ。お前がしっかりあのマリアを管理していなかったから、こんなことになったんじゃないか? お前の監督不届きのせいだぞ」
「ええ、僕は女性には優しいように努めている、マルクス。だから、浮気したいっと思っていてもそれは止めないよ。でもこちらから、手は切らしてもらうけどね……」
「エメラルド嬢に関する婚約はまだダメだ。それは王家もまだ認められない。お前はいま婚約を破棄したばかりで、すぐに違う公爵令嬢と婚約なんてするわけにはいかないだろう。お前が浮気していたと思われるからな。王家だって、体裁というものがあるんだ」
「ええ、あっちが不義を働いていたのに、無理なの? マルクス」
「お前、私の耳に入っているんだぞ。今、マリアをどうしているんだ?」
「え、うわ、地獄耳だね。マルクスは……。まあちょっとね。牢屋に入れちゃっているかな……」
「何を企んでいる……? ミハエル。不義の罪は確かに重いがそこまでではないはずだ……」
「うーーん、まあ臭いものを除去するには、彼女は適任なんだよ。わかるかい? マルクス」
「……」
二人の会話についていけないエルが、ちょっと声を出す。
「あのーー」
まさか自分の問いに対して、ここで発言を許されていないマティアス以外の男たちから追及されるとは思ってもみなかった。
「「「なんだ?」」」
「え、あ、あのー。マルクス殿下、私はもうこれで夜会も無事に終わり、ミハエル殿下の身辺もよろしいようなので、これで公爵領に戻っていいのでしょうか?」
エルの疑問になぜかギデオンとマルクスが目を合わせる。
「殿下、それについてちょっとお話が……」
ギデオンがマルクス殿下に話しかけた。
「……うむ。二人でちょっと話そう……」
「マティアス、エメラルドを頼む……」
と言って、二人は 残りのものを置いていく。
マティアスはただ立ち上がり、殿下とギデオンに礼をするだけだった。
だが、ここで一番の窮地に立ったのは、エルではなく、マティアスだった。
「おい、マティアス。お前はもう下がっていいぞ」
ミハエルはちょっと意地悪な笑みを浮かべて立ち尽くす従者を見る。
「……いえ、私はここにいます……ギデオン様に頼まれましたので……」
「うーーん、忠誠心があるのは結構だがね、マティアス……。正直、視界に入っては、口説きにくいからね……」
「ミハエル殿下……。エメラルド様は、まだデビュー前ですので、後見人が介添人がいなければ、男性と二人きりは避けるべきかと……」
「うーーん、でも、私がいなくなったら、今度は君達だけだよ。それはいいのかな……」
「……」
下を向いたマティアスが何か言いたそうだが、自分の立場をわきまえてか、何も言わない。
「あの……」
エルがようやく口を開いた。
「殿下は、結婚したいのですか? 私と……」
「え、エメラルド、いい? 本人の承諾を得ちゃえば、あの石頭のギデオンも堅物マルクスも、ちょっとは考えが変わるかもな……」
「殿下、申し訳ありませんが、立って後ろを見せていただけます?」
「? それが、君の結婚に重要なのかい?」
「ええ、そうなんです」
まさかと思うマティアスが、「よせ!」と言った顔をする。
ミハエルが立ち上がるが、外套が邪魔して肝心なものが見えない。
「殿下、申し訳ありませんが、外套をちょっと前にしていただけます?」
言われた通り、外套を前に持っていく。
「……うーーん、……無理です。殿下とは結婚出来ません」
えええっと振り返ってみると、エルがにこやかの微笑んでその答えを言おうとしていた。
でも、それが何かを察したマティアスが、慌てていた。
「だって、殿下のおケツが……」
「ああああ、け、ケツ、結構が、肩こり~~じゃないかなーってエル様はご心配しています」
えっとまたミハエルが驚いている。
「え、エメラルドって後ろ姿で肩こりなんて、わかるの?」
なんかやらかしちゃったと思ったエルは、扇で口元を隠して、
「オホホホ、そうなんです……」
とにこやかの答えていた。
まさか「蹴りがいがなさそうだから、結婚は無理です」と言わなかった自分をエルは褒めたかった。
心の中で、私、成長したかも……とエルは思った。
「一目惚れっいうのかな。信じられないけど。しかも、エルはもうじき公爵令嬢になるなら、僕に嫁ぐのになにも問題ない。王家に嫁いでも、公爵家は継げる。子供をいっぱい作って、そのひとりに公爵にすればいいし」
「で、殿下、そうは言っても……」
ギデオンが言葉に詰まっていると、そこにひとりの人が現れた。
第一王子のマルクスだった。
「おい、ミハエル、口が軽すぎるぞ」
「あ、マルクス。なに、盗み聞きしていたの? それってちょっと卑怯じゃない」
「なにが卑怯だ。お前がしっかりあのマリアを管理していなかったから、こんなことになったんじゃないか? お前の監督不届きのせいだぞ」
「ええ、僕は女性には優しいように努めている、マルクス。だから、浮気したいっと思っていてもそれは止めないよ。でもこちらから、手は切らしてもらうけどね……」
「エメラルド嬢に関する婚約はまだダメだ。それは王家もまだ認められない。お前はいま婚約を破棄したばかりで、すぐに違う公爵令嬢と婚約なんてするわけにはいかないだろう。お前が浮気していたと思われるからな。王家だって、体裁というものがあるんだ」
「ええ、あっちが不義を働いていたのに、無理なの? マルクス」
「お前、私の耳に入っているんだぞ。今、マリアをどうしているんだ?」
「え、うわ、地獄耳だね。マルクスは……。まあちょっとね。牢屋に入れちゃっているかな……」
「何を企んでいる……? ミハエル。不義の罪は確かに重いがそこまでではないはずだ……」
「うーーん、まあ臭いものを除去するには、彼女は適任なんだよ。わかるかい? マルクス」
「……」
二人の会話についていけないエルが、ちょっと声を出す。
「あのーー」
まさか自分の問いに対して、ここで発言を許されていないマティアス以外の男たちから追及されるとは思ってもみなかった。
「「「なんだ?」」」
「え、あ、あのー。マルクス殿下、私はもうこれで夜会も無事に終わり、ミハエル殿下の身辺もよろしいようなので、これで公爵領に戻っていいのでしょうか?」
エルの疑問になぜかギデオンとマルクスが目を合わせる。
「殿下、それについてちょっとお話が……」
ギデオンがマルクス殿下に話しかけた。
「……うむ。二人でちょっと話そう……」
「マティアス、エメラルドを頼む……」
と言って、二人は 残りのものを置いていく。
マティアスはただ立ち上がり、殿下とギデオンに礼をするだけだった。
だが、ここで一番の窮地に立ったのは、エルではなく、マティアスだった。
「おい、マティアス。お前はもう下がっていいぞ」
ミハエルはちょっと意地悪な笑みを浮かべて立ち尽くす従者を見る。
「……いえ、私はここにいます……ギデオン様に頼まれましたので……」
「うーーん、忠誠心があるのは結構だがね、マティアス……。正直、視界に入っては、口説きにくいからね……」
「ミハエル殿下……。エメラルド様は、まだデビュー前ですので、後見人が介添人がいなければ、男性と二人きりは避けるべきかと……」
「うーーん、でも、私がいなくなったら、今度は君達だけだよ。それはいいのかな……」
「……」
下を向いたマティアスが何か言いたそうだが、自分の立場をわきまえてか、何も言わない。
「あの……」
エルがようやく口を開いた。
「殿下は、結婚したいのですか? 私と……」
「え、エメラルド、いい? 本人の承諾を得ちゃえば、あの石頭のギデオンも堅物マルクスも、ちょっとは考えが変わるかもな……」
「殿下、申し訳ありませんが、立って後ろを見せていただけます?」
「? それが、君の結婚に重要なのかい?」
「ええ、そうなんです」
まさかと思うマティアスが、「よせ!」と言った顔をする。
ミハエルが立ち上がるが、外套が邪魔して肝心なものが見えない。
「殿下、申し訳ありませんが、外套をちょっと前にしていただけます?」
言われた通り、外套を前に持っていく。
「……うーーん、……無理です。殿下とは結婚出来ません」
えええっと振り返ってみると、エルがにこやかの微笑んでその答えを言おうとしていた。
でも、それが何かを察したマティアスが、慌てていた。
「だって、殿下のおケツが……」
「ああああ、け、ケツ、結構が、肩こり~~じゃないかなーってエル様はご心配しています」
えっとまたミハエルが驚いている。
「え、エメラルドって後ろ姿で肩こりなんて、わかるの?」
なんかやらかしちゃったと思ったエルは、扇で口元を隠して、
「オホホホ、そうなんです……」
とにこやかの答えていた。
まさか「蹴りがいがなさそうだから、結婚は無理です」と言わなかった自分をエルは褒めたかった。
心の中で、私、成長したかも……とエルは思った。
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みんなの感想(3件)
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ヒロインがぶっ飛んでて闇人は謎で気になります。
続きを書いて頂けるのを楽しみにお待ちしています~!
hiyo さま
更新遅いですよね。すいません。
スランプ中の時に、こういった感想、ありがたいです。
読んでいただいてありがとうございます。作者は結構気に入っている作品なので、楽しみと言われると嬉しいです。
この作品は設定がかなり他の(自分の)作品に比べて、構想手帳が分厚いくせに、手が遅くなっております。 しばしお待ちください。
退会済ユーザのコメントです
マリリア様
感想ありがとうございます。
ちょっとこの作品はスローな展開で読書の皆様にご迷惑をかけております。
ただいまフル回転?で進めています。
マリア、思ったより悪でしたね。
またよろしくお願いいたします。
とても面白いです。
続き楽しみに待ってます(^^)
ありがとうございます。
感想、めちゃ嬉しいです。
先ほど読み直してみると、誤字脱字があり過ぎて、卒倒しています。
多分、もっとあるでしょう。
もっと構成がうまくいきたいんですが、なかなか難しい。
そんななかこういう一言はありがたいです。
更新ゆっくりめな作品ですがよろしくお願いします。