うそぶく君の唇は寂しいと震えている

槇瀬陽翔

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プロローグ

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20XX年、世は困窮していた。

増えすぎた人口、そこを突き始めた食料。住む場所もなく、路上で暮らす人々。元々の富裕層だけが贅沢をする。貧困者は野垂れ死にする。
市街地の裏路地にはそのまま捨てられた死体が山のようになっていた。


そんな折、政府は非常な判断を下した。


【人口の減少】
それは人口を減らすための無差別殺人。政府の命令を受け軍隊が軍事力を使い人々を虐殺し始めたのだ。そして、そこは地獄絵と化した。


それが数百年前の出来事である。


100年前、政府の虐殺が原因で人口が減り、子供がいなくなってしまった。政府は人工的に人口を増やそうと研究を始めた。その研究で未知なるウイルスが発見され、それはたちまち、街中に広がった。

そこで生まれたのが第2の性と呼ばれるものだった。第2の性にはアルファ、オメガ、ベータと3種類あった。
その第2の性で徐々に人口が増えつつあった。だが、なぜだか、オメガだけは他の第2の性に比べると数が少なかったのだ。

そこで政府が新たな研究を始めた。人工的にオメガを作ろうとしたのだ。第2の性に目覚める前の幼子たちを実験にし、遺伝子を操り強制的にオメガを作ることができたのだった。
だが、その研究にも欠点があった。人工的に作られたオメガの一部で、欠陥品と呼ばれる者たちがいたからだ。
オメガでありながら、妊娠することができなかったのだ。番であったとしてもアルファがオメガを妊娠させることができなかったのだ。欠陥品のオメガの中に入ってしまえば、例え番のアルファの種でさえも死んでしまうのだ。オメガの中でアルファの種が生き残れず死んでしまう。それがこの研究の代償だった。

それが50年前の出来事。



25XX年。時は流れ、平穏な生活を過ごす街。今では政府の研究も何処かへ追いやられていた。人口も増減を繰り返しながらも問題なく過ごしていた。第2の性も3種類それぞれ均等に生まれて来ていた。

だが、数100人に1人という確率で欠陥品のオメガが生まれることがあった。それは政府の代償として消えることはなかったのである。

そして、その欠陥品を人は『レムリナ』と呼んだ。欠陥品は生まれた時はわからないが、初めて発情したその時に身体の何処かしらに剣のような痣が浮き出るのだ。一度浮き出たら、二度とその痣は消えない。

欠陥品という名の烙印だった。


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