会長様は別れたい

槇瀬陽翔

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39話

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「劉を送らななきゃいけないからもう行くけど一人で大丈夫?」
こうちゃんが俺を心配して聞いてくる。
「はい、大丈夫です。今、すごく落ち着てるから一人で大我を待ってられるんで」
うん、これは嘘じゃない。昨日までは酷い状態だったけど、今の俺はすごく落ち着ている。
「わかった、ゆいちゃんのその言葉を信じるよ。でも、何かあったらちゃんと大ちゃんに連絡するんだよ」
少しだけ心配性なこうちゃん。まぁ、俺が酷い状態になるの知ってるからなんだけどね。
「うん、大丈夫。劉くん行ってらっしゃい、頑張ってね」
俺は劉くんと同じ目線になって声を掛けた。
「うん、また今度、大ちゃんと一緒に遊びに来てね」
劉くんは大きく頷く。
「勿論、大我にお願いして一緒に遊びに行くよ」
俺が劉くんの言葉に返事をするとこうちゃんは劉くんを学校に送って行くために帰っていった。


シンとなる部屋の中。


不思議と落ち着いていた。この場所に来た時は酷い状態で、涙腺だって壊れてたのに、昨夜、夢を見て、朝起きてこうちゃんたちと一緒にいただけで、不思議と落ち着いている。
「こうちゃんが片付けもやってくれたからすることないんだよな」
そう、こうちゃんがご飯の準備も片付けも全部やってくれたからすることがない。しかも丁寧にお昼のご飯まで作っていってくれたのだ。俺も大我も自分でできるの知ってるはずなのにね。でも、ありがたい。
「うん、することないし、大我が帰ってくるまでベッドでゴロゴロしてよう」
そう思いながら俺はまたベッドに逆戻り。ベッドのサイドボードに大我が読んでる本が置いてあった。
「これ、俺が読んでみたかったやつじゃん」
本の題名が俺が読んでみたいと思っていたやつだった。それを手に取りしおりの場所を確認したら、一番最後に挟まっていて、そこは筆者のあとがきの場所だった。
「あれ?」
そのあとがきを読んで顔が熱くなった。
「…これ…ダメだろ…」
あとがきはまるで恋文のようなもの。読んだ読者がどう感じるかはその人にもよるが…。俺にはそれが盛大に愛の告白に感じた。
「よし、最初から読もう」
あとがきにしおりが挟んであるってことは大我は読み終えてるはずだからと、俺は解釈してその本をはじめから読むことにした。そうしてる間に大我が帰ってくるだろうなって思ったんだ。


「…はぁ…」
集中して、本を全部読み終えてしまった。本を抱きしめ天井を見上げる。読み終えた余韻が全身を包み込んでいた。ポロリと、自然と涙が零れ落ちた。
「泣くほど感動したのか?」
なんて言葉が飛んできてビックリして飛び起きれば、机で作業をしてる大我がいた。
「いつの間に戻ってきたんだ?」
大我が帰って来たのにも、この部屋に入って来たのにも気が付かないほど俺は集中してたんだろうか?
「かれこれ20分ぐらい前かな?声かけても返事しないぐらい集中して読んでたな。だから昨夜の続きしてた」
俺の方を見て小さく笑う大我に苦笑が浮かぶ。
「それは…この作者に文句を言ってくれ」
苦笑を浮かべたまま本を大我に見せる。
「なんだ、気に入らなかったのか?」
一瞬、驚いた顔をしたがまた小さく笑う。
「そうじゃないけど…大我…」
何かを言おうとして大我の名を呼んで失敗した。
「…っ…お前…」
大我が左目を押さえた。うん、ごめん。
「悪気はないんです。ホントに悪気はない…」
感情の高ぶりが毒となる。今まさにそんな状態。俺の気持ちの高ぶりが無意識にフェロモンを強くした。大我にとって毒になるそれに…。
「覚悟はしてたからいい」
大我の溜め息交じりの言葉にますます苦笑が浮かぶ。でも、そんな感情の高ぶりとかを起こす相手は一人しかない。俺がそんなことをするのは神尾大我ただ一人だけなのだ。
「…これについて…聞いたら…教えてくれるのか?」
俺は大我に持っていた本を見せながら聞いてみた。
「教えるって?」
なんのことだとキョトリ顔をする。うん、大我さん、キョトリ顔が劉くんに似てます。さすが叔父さんだけあって血がつながってますね。
「これ…盛大に愛の告白…」
俺は最後のあとがきを大我に見せてみる。
「愛の告白かぁ…俺はいつも本人にしてるけど?」
とさりと俺をベッドの押し倒し、俺の手から本を奪い取りサイドボードに置くと、俺の指にキスを落とす。
「たっ、たっ、たたた、たい、が、さん!!!」
あまりにも突然の行動で頭が付いてこない。
「そこまでどもるかなぁ。あー、ゆいはキャパオーバーしたままだっけ」
なんて、笑いながら言われた言葉に、そういえばって思った。嬉しいことも悲しいことも両方一度に起きて頭の中がキャパオーバーして飛んだんだって思った。
「そうだよ。それの加えてあの本。どういうこと?」
ホントにこの男の事が謎すぎて俺は驚いてばかりだ。まだまだこの男には俺が知らない秘密があるらしい。
「さぁ?俺に聞かれても?」
なんてしらを切るけどその顔は憎らしいほど楽しそうだ。
「大我は時々意地悪になる」
ぶすってしながら呟けば
「それは唯斗が好きだから」
なんて額にキスされた。ビックリして額を押さえれば
「唯斗…好きだよ…初めてあの日…逢ってから俺は唯斗に恋をしてる…」
ふって小さく笑いそん言葉をくれる。ぶわって全身に鳥肌が立つぐらい甘い囁き。

あぁ、ヤバい。この囁きは俺には毒だ。

って、思った時には遅かったらしい。さっきとは比じゃない位のフェロモンが溢れた。
「っ」
大我の眉間に皺が寄る。キレイな藍色の瞳がシルバーに変わっていた。
「自業自得…だからな」
俺にはそれを言うのが精一杯だった。


そう、心は神尾大我を欲しているから…

大我に触れてほしい。

そんな想いが俺の中には溢れかえっていた…



『これからも、ずっと一緒にいよう』

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