人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

槇瀬陽翔

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戸惑い

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自分の部屋に来た梅村をそのまま寝室に連れ込みベッドの上に押し倒し両手を拘束した。


「なんでだよ!」
さすがだな梅村。突っ込みが早い。

「イヤ、暴れられると面倒だからよ。だから縛った」
これは間違いじゃねぇ。


最近のこいつは癇癪を起こすじゃねぇが、暴れだすから、今は大人しくしといてもらおう。


「なぁ、お前、自分で気が付いてるか?最近のお前は言葉が乱暴になってきてんぞ?」
梅村の顔の横に両手を置き顔を覗き込みながら言えば、その顔は驚きの色が濃くなる。


「嘘…だろ?」
驚いたまま紡がれる言葉は途切れ途切れだ。


「嘘じゃねぇよ。みんなの噂はそれが理由だ。まぁ、後はちょっと凶暴化してるな」
こいつがキレやすいのもそのせいだ。まぁ、その原因をわかってる俺や鍋屋、二村は気にせずに普段どおりに接してるので、こいつが気付かないのもわかる。


「なんで?…俺…そんなつもり…ないのに…」
理由がわからない梅村の顔色がドンドン悪くなる。


「お前ん中に眠ってるもんだ、つったらどうする?」
俺が起こしたいのがそれだとわかるように問えば

「菊池は…それを待ってるのか?」
反対に聞き返してきやがった。

「そうだな、それもある。だが、もっと別のもんだな」
それ以外にもあるんだと告げれば

「今の…今の俺じゃ…ダメなのか?」
戸惑いながら、でも聞かなくてはと言う感じで聞いてくる。

「イヤ、このままでも十分だぜ?だがよぉ、取り戻したいお前を取り戻せば、もっと楽しみが増える。ただそれだけだ」
そう、今でも十分だ。だがもっと楽しみたい。


ただ単にそれが理由だ。


「そう…なのか?」
不安げに聞いてくる言葉に笑みが浮かぶ。


「そりゃそうだろ?今のお前で不満だったらこうやって押し倒してねぇし、お前を部屋に連れ込んでねぇよ。俺はそこまで節操無しじゃねぇ」
拘束してある両手に唇を寄せ小指を甘噛みすれば、驚いて手を引っ込めようとするが今の状況じゃどうやっても逃げられないのをわかっているので大人しくなる。


「菊池は…俺で遊んでる…のか?」
急にそんなことを聞いてくるから驚いた。
「なんで?」
その理由を問えば


「謎ばかり俺に与えて肝心な答えはくれない。それどこか不安ばっかり植え付けてくる」
不安で少しだけ瞳が潤み出した顔で俺を見てくる。


「そう思うか?」
静かに聞けば戸惑いながら頷く。
「信用ねぇなぁ俺…好きなヤツほど苛めたくなるってガキみてぇなことはしねぇよ。ただ、本当に待ってるだけだ。綻び出した紐がほどけるのをな」
そう、梅村の中で確実に目覚め出してるモノが完全に目覚めるのを…。失くした記憶が完全に戻るのを…。


「意味わかんねぇし」
ついに梅村がぶう垂れる。その頬は不満げに膨れてる。

「まぁ、そのうちイヤでもわかる。だから、そう怒るな」
その膨れた頬に唇を寄せ拘束していた手を解放してやれば


「なんでだよ!」


叫びながらドンと肩を殴られた。


だから拘束しといたんだけどな。


この後はまぁ、言わずもながら梅村の八つ当たりを大人しく受けてた。


それで気が済むならそれでいい。


梅村を手放す気なんてこれっぽっちも俺にはないんだから。


怒り疲れて大人しくなるまで俺はずっと梅村の好きなようにさせていた。



Fin




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