人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

槇瀬陽翔

文字の大きさ
108 / 185

戸惑い

しおりを挟む
自分の部屋に来た梅村をそのまま寝室に連れ込みベッドの上に押し倒し両手を拘束した。


「なんでだよ!」
さすがだな梅村。突っ込みが早い。

「イヤ、暴れられると面倒だからよ。だから縛った」
これは間違いじゃねぇ。


最近のこいつは癇癪を起こすじゃねぇが、暴れだすから、今は大人しくしといてもらおう。


「なぁ、お前、自分で気が付いてるか?最近のお前は言葉が乱暴になってきてんぞ?」
梅村の顔の横に両手を置き顔を覗き込みながら言えば、その顔は驚きの色が濃くなる。


「嘘…だろ?」
驚いたまま紡がれる言葉は途切れ途切れだ。


「嘘じゃねぇよ。みんなの噂はそれが理由だ。まぁ、後はちょっと凶暴化してるな」
こいつがキレやすいのもそのせいだ。まぁ、その原因をわかってる俺や鍋屋、二村は気にせずに普段どおりに接してるので、こいつが気付かないのもわかる。


「なんで?…俺…そんなつもり…ないのに…」
理由がわからない梅村の顔色がドンドン悪くなる。


「お前ん中に眠ってるもんだ、つったらどうする?」
俺が起こしたいのがそれだとわかるように問えば

「菊池は…それを待ってるのか?」
反対に聞き返してきやがった。

「そうだな、それもある。だが、もっと別のもんだな」
それ以外にもあるんだと告げれば

「今の…今の俺じゃ…ダメなのか?」
戸惑いながら、でも聞かなくてはと言う感じで聞いてくる。

「イヤ、このままでも十分だぜ?だがよぉ、取り戻したいお前を取り戻せば、もっと楽しみが増える。ただそれだけだ」
そう、今でも十分だ。だがもっと楽しみたい。


ただ単にそれが理由だ。


「そう…なのか?」
不安げに聞いてくる言葉に笑みが浮かぶ。


「そりゃそうだろ?今のお前で不満だったらこうやって押し倒してねぇし、お前を部屋に連れ込んでねぇよ。俺はそこまで節操無しじゃねぇ」
拘束してある両手に唇を寄せ小指を甘噛みすれば、驚いて手を引っ込めようとするが今の状況じゃどうやっても逃げられないのをわかっているので大人しくなる。


「菊池は…俺で遊んでる…のか?」
急にそんなことを聞いてくるから驚いた。
「なんで?」
その理由を問えば


「謎ばかり俺に与えて肝心な答えはくれない。それどこか不安ばっかり植え付けてくる」
不安で少しだけ瞳が潤み出した顔で俺を見てくる。


「そう思うか?」
静かに聞けば戸惑いながら頷く。
「信用ねぇなぁ俺…好きなヤツほど苛めたくなるってガキみてぇなことはしねぇよ。ただ、本当に待ってるだけだ。綻び出した紐がほどけるのをな」
そう、梅村の中で確実に目覚め出してるモノが完全に目覚めるのを…。失くした記憶が完全に戻るのを…。


「意味わかんねぇし」
ついに梅村がぶう垂れる。その頬は不満げに膨れてる。

「まぁ、そのうちイヤでもわかる。だから、そう怒るな」
その膨れた頬に唇を寄せ拘束していた手を解放してやれば


「なんでだよ!」


叫びながらドンと肩を殴られた。


だから拘束しといたんだけどな。


この後はまぁ、言わずもながら梅村の八つ当たりを大人しく受けてた。


それで気が済むならそれでいい。


梅村を手放す気なんてこれっぽっちも俺にはないんだから。


怒り疲れて大人しくなるまで俺はずっと梅村の好きなようにさせていた。



Fin




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

処理中です...