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お願いだから…

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2人で菊池の部屋に帰った。自分の部屋が隣だから気にしない。


「なんか飲むか?」
制服の上着を脱ぎながら聞かれる言葉に俺は首を振った。今はそんな気分じゃない。
「じゃぁ、飯はどうする?」
その言葉にも俺は首を振った。小さな溜め息をついて

「上着置いてくる」
菊池は上着を持って寝室へと向かった。俺はその後を追った。クローゼットを開けて、上着をハンガーにかけてる菊池をボーッと見てた。

「上着、脱いで貸せ」
不意にそう言われて俺は慌てて上着を脱いで菊池に渡せば俺の分の上着も同じようにハンガーにかけてクローゼットの中にしまった。

「で?どうした?」
俺に向き合って、俺の顔を見て聞く菊池。俺はそんな菊池を傍にあるベッドに押し倒した。
「大胆だな」
馬乗りになった俺を見上げながらニヤリと笑う。

「今から俺のすることに口出すなよ」
俺は菊池のシャツのボタンを外していく。

「っ」
シャツをはだけさせればそこに現れるのは幾つもの傷痕。シャツを握る手が震える。身体だって震えてくる。
「無理すんな」
そっと、俺の手に自分の手を重ねる。

「いいから、口出すな」
俺は侑司の手を振り解き、傷跡が見えるようにシャツを完全にはだけさせた。
「無理しねぇ方がいいんじゃねぇのか?」
俺が傷痕を見るのを怖がってるのをわかってるからこその言葉。俺は首を振る。

「いいから…頼むから…口出さないでくれ…」
俺はこの傷痕と向き合わなきゃいけないんだ。じゃないと俺はこの先きっと後悔する。

この男の身体に傷痕を幾つも残させたのは俺の罪だから…。

俺がその傷痕から目を背けてるのはダメなんだ。

俺自身が受け入れないと…。

「無理する必要はねぇと思うんだけどなぁ。それに俺はこうやって生きてるし、お前にも触れられる」
そんな言葉と共に俺の身体が反転して組み敷かれる。そして、そっと頬を撫でられ重ねられる唇。

俺はその唇の熱を受け止めながら侑司の首に腕を回す。

「…侑司…お願いだから…その傷痕ごと…俺を愛して…」
唇が触れそうな場所で告げれば驚いた顔を見せたが
「わかったよ。お前の希望道理にしてやる」
ハッキリと言って再び唇が塞がれた。



お願いだから…


俺が怖がってもいいから…


俺が嫌がってもいいから…


俺にその傷痕ごと愛して欲しい…


お願いだから…


Fin

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