人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

槇瀬陽翔

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腕の中

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「んっ」
闇に堕ちていた意識がふわりふわりと戻ってきた。眼を開ければそこには見知った傷跡があって一瞬、驚いたけどそのまま、その傷跡に噛みついた。
「っ、いてぇよ。寝惚けてんのか?」
その声と共に頭を撫でられた。いつもなら服を着てる身体も今日は着ていない。だから自然と傷に目が行くのだけど何故か今日は平気だった。

「…ん…イヤ…つい…傷があったから…」
自分でも意味の分からない言い訳をしてるなって思った。
「まぁ、いいんだけどよ。寝起きに噛むなや。ビックリするわ」
怒るわけでも文句を言うわけでもなく寝起きに噛むなと言われた。

「どうした?」
ぴたりと動かなくなった俺が心配になったのか顔を覗き込んできた。

特にこれという理由はなかった。


「んっ…なんでもない…ただ、自分でつけた歯形がすごいなって…」
自分でも驚くほどの痕があった。

「お湯が沁みるぐらいには酷いな」
言われた言葉にやっぱりかって思った。

「服…今日は着てないんだ…」
いつもなら着てるのに今日は服を着てないからそう呟いたら
「覚えてねぇのかよ」
って言われた。


はて?どういうこと?


「俺…なんかしたのか?」
本当に記憶が無い。
「俺が着ようとしたら着るなって怒りながら脱がしてきたんだよ」
溜め息交じりの言葉に眩暈がした。


自分が言っておきながら忘れるとか…


俺は小さく息を吐きその身体に抱き着いた。


「どうした?」
俺の身体を抱きしめながら聞かれ
「んっ…なんでもない…侑司のことがやっぱり好きだなって…」
俺は抱き着いた腕に力を込めた。

「そうか、俺も陽葵が好きだぞ」
俺を撫でながら紡がれる言葉に喜びが増す。
「なぁ…もう大丈夫だから…俺はこの傷痕もちゃんと見れるから…」
侑司を見上げて言えば

「お前は変なところで頑固になるからな。また、怖くなったらお前自身が塗り替えろ」
小さく笑いながら額にキスをされる。それが今日はなんだか恥ずかしい。だから俺は侑司の胸に顔を埋めた。
「今日は休みだし、このままもう少し寝るか」
そんな俺を抱き寄せ頭を撫でながら聞かれ
「うん。寝る。侑司の腕の中で寝る」
俺は頷きながらそう宣言した。


侑司の腕の中に抱きしめられ、トクトクと聞こえる心音を子守歌にしながら俺はまた眠りの中に墜ちていった。


やっぱり侑司の腕の中にいるのは落ち着く…


もっと…もっと…抱きしめていて欲しい…。


この腕の中に…


Fin

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