人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

槇瀬陽翔

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甘えられる腕

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菊池の部屋に戻って来て、俺は
「あの…侑司…さっきはごめん…」
菊池の制服の裾を掴み謝る。


だって、イラ立っていたとはいえ、退院したばかりのヤツを殴るとかありえないことをしたんだ。


「大丈夫だ、気にしてねぇよ。まぁ、まだ背中は生で見せてやれねぇけど、殴られた場所も数時間すれば元に戻る」
菊池はそう言いながら俺を抱き寄せる。
「ん、でも、ごめん」
だから俺はもう一度謝った。


「気にするな。飯はどうする?」
俺を抱きしめたまま聞いてくるけど
「飯より甘えたいんですが?」
菊池を見上げて答えれば

「だろうな。ほら、ベッドに行くぞ」
菊池はわかってるのかあっさりとそんなことを言い寝室へと向かう。


「ほい、お前の着替え」
クローゼットから俺専用の服を取り出し渡してくる。制服から着替えろということだ。
「ん」
俺は短く返事をして、言われたとおりに制服から普段着に着替えた。勿論菊池も着替えてる。

俺が着替え終えると、制服は菊池のと一緒にしまわれる。


「さて、どっちでの抱き着きをご希望ですかね陽葵くん」
俺と同じようにベッドに座り菊池が聞いてくるから俺は悩んだ。後ろから抱き付こうか、前から抱き付こうかと…。


でも顔が見たいし、声が聞きたいんだ…


「前がいい。顔が見たいし、声も近くで聞きたい」
後ろだと少し遠く感じる。
「了解。布団の中に入るか?」
って聞かれるから頷くから小さく笑って俺は菊池に布団の中に入れられて抱きしめられた。

「飯も食わずにこのまま甘えた状態でお前寝ちゃうそうだな」
俺の頭を撫でながら言われる言葉に
「んっ、そうかも。でもいい。こうやって甘えるのが目的だから」
俺は素直に返事をする。


本来の目的は甘えるのが目的なんだから飯も食べなくてもいい。抱きしめられたまま寝れるのがいい。6年に比べたら1週間なんて短いけど、俺にしてみれば1週間も長いんだ。それは俺が菊池に依存してるから…。


「約束はしたからな。待ってたら甘えさせてやるって」
俺を撫でていく手は優しい。抱きしめてくれる温もりは安心する。
「おかえり、侑司」
抱き付いたまま、もう一度おかえりを告げれば

「おう、ただいま陽葵」
ただいまの言葉と共に頭に小さなキスが降りてきた。
「なんで頭?」
だからつい聞いたら

「だって、顔が見えねぇから」
なんて言われた。
「じゃぁ、キス」
キスだってしたい。ちょっと不満げに見上げれば小さく笑いながら額にキスされて、そのまま唇を塞がれた。

「…会いたかった…」
ポツリと呟いた言葉は喉の奥に逆戻り。触れるだけのキスを繰り返されもう一度、額に小さなキスが送られ少しだけ強く抱きしめられた。
「身体の傷痕は消えねぇけど、これでもう大丈夫だ。お前が俺の身体を見て傷付くことはねぇよ」
その言葉に俺は小さく頷いて、ギュッと服を握りしめた。

俺がいまだに傷のことを気にしてるのをわかってるからこその言葉。背中の傷も、もう大丈夫だから心配するなという。もう以前のように簡単に血は流れないと…。


「侑司、ありがとう」
だから素直にこの言葉が出た。
「おう、眠くなってきたなら寝ていいぞ。こうやって抱きしめててやるから」
その言葉に俺は頷く。


菊池の腕に抱きしめられ、1週間ぶりに感じる温もりは俺を簡単に眠りの中に誘っていく。


俺はこのまま本当に眠ってしまった。


ちゃんと戻って来てくれたことに安心して緊張の糸がぷっつりと切れたんだ。


今度また、ちゃんと甘えるから覚えてろよ侑司!


Fin

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