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サバイバル以外でお願いします
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「…とりあえず、あなたの現状と、この『世界』の説明はこんな感じです」
「…さいですか…」
もはや溜息も出ない。
…何か、3日くらい体調不良でのたうちまわった後くらいの疲労感だわ…。
「差し当たり、服を替えましょうか。どうします? 女の子みたいですし、ドレス的な?」
「男の子用で頼みます」
スカートとか、もうヤダ。雨で張り付いてめっちゃくそ動きにくかった。
即答した私にくすりと小さな笑いを落としたお兄さんが手を軽く振ると、私のふわりと柔らかな風に包まれ…一瞬でお着替えが完了した。
何それすごい。私も出来るようになりたい。
黒のミドルネックのアンダーシャツは某ユ◯クロっぽくて薄くて伸びる。素材が気になり、思わずタグを探したが無かった。悔しい。
サンドベージュのチュニックは深めのキーネック部分で革紐首周りの調整ができるようになっている。袖は六分丈くらいで、革紐と同じ焦げ茶の太いポーチ付きベルトでウエストマークされている。
ボトムも黒で、アンダーシャツと同じように伸びる素材だがシャツより厚めだ。
そこに焦げ茶の脹脛丈のエンジニアブーツ。
身体に合ったまともな服…! テンション上がるー!
そして、そんな事に驚く程感動できる自分にテンション下がるー!
…上がって下がってフラットになった所で生活拠点をどこら辺にするかとか考えよっと。
「…えぇっと…まず、どこら辺りに降ろすか、という話の前に…あなたの『器』は『人間』なので…『ヒト族』の生活してる所でいいんですよね?」
「ですね。いくら人恋しいからって『魔人族』ばっかの『黒雲大陸』に降ろされても困りますよ。降りた瞬間抹殺されそうだし」
絶対いい感情持たれてないやろ、人間は。絶対やめて、ハードモードはもう嫌だ!
「じゃぁ、『エッジア』もやめた方がいいですね。あそこは『人間』たちから逃れた亜人種が固まってる所なので。あ、でも今あそこは僕の眷族と他の亜人種の混血である『龍牙族』が王をしてるはずなので…案外イケる…かも…?」
「不確定要素でオススメすんなよ」
こちとら命かかっとんやぞ。
「うーん、やっぱりセンティアス帝国かサウスディア王国ですかね。差し当たり言語に関しては問題ないと思います。『亜神』としての能力が開花してる時点で恐らくどの言語もわかるようになってると思います」
おぉぉ言語チートキターーー!
…まぁ、マジで通じるかどうかわからんけども。
「通貨は…共通のモノかどうか…よくわかりません。まぁ差し当たりコレ差し上げますね」
物価とかわかんない、だって僕使いませんし、じゃねーわ。役にたたねぇな!(怒)でもありがとう!
渡されたのは小さな鈍色の硬貨が大小合わせて20枚と、銀色の硬貨大小合わせて20枚。この時点で割と重いわ。それに金ピカ硬貨2枚。金ピカ硬貨は模様ついてるな。
巾着袋も出してもらって、腰のポーチに入れ…めっちゃ押し込んだ。ギュッてなった。
「…マジックバッグとか無いの? ファンタジーの定番でしょ?」
「僕が使ってるの、『神力』なんで、そういう『魔法』的なこと言われてもちょっと…」
「役にたたねぇな、おい」
あ、ついに口から出ちゃった。
ひどーい(棒)じゃねぇわ。せめて感情を込めろ。
そう言う私を、お兄さんは楽しげに見ていた。
再び『地図』を見ながらどこに行こうか考える。
そのついでに教えてもらったのは、『神力』は大抵のことは出来るが、『地上』に干渉するような事は出来ない…と言うか、してはいけないらしい。
ソレをやっちゃうとどこかの女神のようなことになる。
…うん、碌なもんじゃないね。
「…私、腕生やしたみたいだけど大丈夫かな…」
「完全にあなた個人の事だし、完全な『神』の『神力』じゃないので大丈夫だと思いますよ」
マジックバッグみたいなモノは『地上以外』で『神』が『神力』を使って作ってしまうと、バレた時が面倒らしい。でも『役に立たない発言』は撤回しない(笑)
「その『器』は『人間』ですし、バカ…じゃない、あの女神の『余計な加護』で『魔力器官』がありますから、『魔法』が使えるハズですよ」
……アムアイ ア ウィザード? あれ、ウィッチだっけ? どっちゃでもえぇわ。
「魔法が…使える…だと?!」
テンション上がるぅーーー!!
…だがしかし、待て。落ち着け自分。
「…サバイバル生活してる時に魔法なんざ使えんかったぞ?! それこそ「異世界来たわ…」って絶望した後に試さなかったと思うのか?!」
そんな訳は無い! 試した! めっちゃ試した!!
脳みそフル回転で想像したし、恥ずかしいけど色々叫んだ! 主に火とか火とか火のために!! ◯ラとかファイヤーボールとかフレイムとか思いつく限り色々やった!
「全滅でしたけど?!」
「あれ? そうなんです? おかしいなー? でも…あなた、今ちゃんと魔力ありますよ?」
なん…だと…?
「…じゃぁ…もしかして…」
「使えるでしょうねぇ。試しに何かやってみては? あ、破壊力は小さめでお願いします」
…震える手を胸の高さまで上げ…指先に炎が出るようにイメージする。ちなみに叫ばない。アラサーは人前でソンナコトシナイ。
ゆらり…とイメージ通りに現れる、蝋燭のような炎。
お兄さんの方へ視線だけで訴える。
…出ました。
出ましたね。
こくり、と二人で頷き合う。
「………ち…ちくしょおぉぉぉぉぉっ!!」
ーーー私は泣いた。
「…さいですか…」
もはや溜息も出ない。
…何か、3日くらい体調不良でのたうちまわった後くらいの疲労感だわ…。
「差し当たり、服を替えましょうか。どうします? 女の子みたいですし、ドレス的な?」
「男の子用で頼みます」
スカートとか、もうヤダ。雨で張り付いてめっちゃくそ動きにくかった。
即答した私にくすりと小さな笑いを落としたお兄さんが手を軽く振ると、私のふわりと柔らかな風に包まれ…一瞬でお着替えが完了した。
何それすごい。私も出来るようになりたい。
黒のミドルネックのアンダーシャツは某ユ◯クロっぽくて薄くて伸びる。素材が気になり、思わずタグを探したが無かった。悔しい。
サンドベージュのチュニックは深めのキーネック部分で革紐首周りの調整ができるようになっている。袖は六分丈くらいで、革紐と同じ焦げ茶の太いポーチ付きベルトでウエストマークされている。
ボトムも黒で、アンダーシャツと同じように伸びる素材だがシャツより厚めだ。
そこに焦げ茶の脹脛丈のエンジニアブーツ。
身体に合ったまともな服…! テンション上がるー!
そして、そんな事に驚く程感動できる自分にテンション下がるー!
…上がって下がってフラットになった所で生活拠点をどこら辺にするかとか考えよっと。
「…えぇっと…まず、どこら辺りに降ろすか、という話の前に…あなたの『器』は『人間』なので…『ヒト族』の生活してる所でいいんですよね?」
「ですね。いくら人恋しいからって『魔人族』ばっかの『黒雲大陸』に降ろされても困りますよ。降りた瞬間抹殺されそうだし」
絶対いい感情持たれてないやろ、人間は。絶対やめて、ハードモードはもう嫌だ!
「じゃぁ、『エッジア』もやめた方がいいですね。あそこは『人間』たちから逃れた亜人種が固まってる所なので。あ、でも今あそこは僕の眷族と他の亜人種の混血である『龍牙族』が王をしてるはずなので…案外イケる…かも…?」
「不確定要素でオススメすんなよ」
こちとら命かかっとんやぞ。
「うーん、やっぱりセンティアス帝国かサウスディア王国ですかね。差し当たり言語に関しては問題ないと思います。『亜神』としての能力が開花してる時点で恐らくどの言語もわかるようになってると思います」
おぉぉ言語チートキターーー!
…まぁ、マジで通じるかどうかわからんけども。
「通貨は…共通のモノかどうか…よくわかりません。まぁ差し当たりコレ差し上げますね」
物価とかわかんない、だって僕使いませんし、じゃねーわ。役にたたねぇな!(怒)でもありがとう!
渡されたのは小さな鈍色の硬貨が大小合わせて20枚と、銀色の硬貨大小合わせて20枚。この時点で割と重いわ。それに金ピカ硬貨2枚。金ピカ硬貨は模様ついてるな。
巾着袋も出してもらって、腰のポーチに入れ…めっちゃ押し込んだ。ギュッてなった。
「…マジックバッグとか無いの? ファンタジーの定番でしょ?」
「僕が使ってるの、『神力』なんで、そういう『魔法』的なこと言われてもちょっと…」
「役にたたねぇな、おい」
あ、ついに口から出ちゃった。
ひどーい(棒)じゃねぇわ。せめて感情を込めろ。
そう言う私を、お兄さんは楽しげに見ていた。
再び『地図』を見ながらどこに行こうか考える。
そのついでに教えてもらったのは、『神力』は大抵のことは出来るが、『地上』に干渉するような事は出来ない…と言うか、してはいけないらしい。
ソレをやっちゃうとどこかの女神のようなことになる。
…うん、碌なもんじゃないね。
「…私、腕生やしたみたいだけど大丈夫かな…」
「完全にあなた個人の事だし、完全な『神』の『神力』じゃないので大丈夫だと思いますよ」
マジックバッグみたいなモノは『地上以外』で『神』が『神力』を使って作ってしまうと、バレた時が面倒らしい。でも『役に立たない発言』は撤回しない(笑)
「その『器』は『人間』ですし、バカ…じゃない、あの女神の『余計な加護』で『魔力器官』がありますから、『魔法』が使えるハズですよ」
……アムアイ ア ウィザード? あれ、ウィッチだっけ? どっちゃでもえぇわ。
「魔法が…使える…だと?!」
テンション上がるぅーーー!!
…だがしかし、待て。落ち着け自分。
「…サバイバル生活してる時に魔法なんざ使えんかったぞ?! それこそ「異世界来たわ…」って絶望した後に試さなかったと思うのか?!」
そんな訳は無い! 試した! めっちゃ試した!!
脳みそフル回転で想像したし、恥ずかしいけど色々叫んだ! 主に火とか火とか火のために!! ◯ラとかファイヤーボールとかフレイムとか思いつく限り色々やった!
「全滅でしたけど?!」
「あれ? そうなんです? おかしいなー? でも…あなた、今ちゃんと魔力ありますよ?」
なん…だと…?
「…じゃぁ…もしかして…」
「使えるでしょうねぇ。試しに何かやってみては? あ、破壊力は小さめでお願いします」
…震える手を胸の高さまで上げ…指先に炎が出るようにイメージする。ちなみに叫ばない。アラサーは人前でソンナコトシナイ。
ゆらり…とイメージ通りに現れる、蝋燭のような炎。
お兄さんの方へ視線だけで訴える。
…出ました。
出ましたね。
こくり、と二人で頷き合う。
「………ち…ちくしょおぉぉぉぉぉっ!!」
ーーー私は泣いた。
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