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えっ、間違われるとか不本意…

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 念願の調味料を手に入れてから、私の日常は激変した。

「魚に! 塩!! こっちは! 醤油!!」

 焼いて塩と醤油で食べるだけだが。

「ヒャッハーーーーー!!」

 それでも、初っ端からヒデブされる雑魚キャラ並にヒャッハーできるぜ☆

「よっしゃもう一匹いくぜぇぇ!! セイッ!」

『だから! 何故我で魚を捌くのだーーっ!!』
「切れ味と使いやすさ」
《パネェっス》


 あぁ、味のあるご飯って本当に素敵☆(※ただの塩焼き)






『…む?』
「ん? どしたの?」
『…大樹さまのテリトリーに…誰ぞ侵入したな』
「ふーん」
《驚くほど興味無いっスね》

 どうも、最近魚に味噌をつけて焼くのがマイブームなアスです。


 調味料を手に入れてから、街には行っていない。だって用ないもん。
 あれから食事量がさらに減ったここ最近、この調味料全部使い切るまでに私の身体は食物を必要としなくなるのでは…? と少々不安に思っている。
 ちなみに調理用具は購入していないので、魚に直に調味料である。調理器具は今後不要になると思うと…買うのが面倒だったのだ。

 味があればいいのよ、味があれば。どうせそのうち食べられなくなるのに、飯テロとかする気無いし。
 そう、私は調味料のしもべ(嘘)


『…何だ…? 変な気配だ…』
「へー」
《天晴れなまでの無関心》

 いやー、こっちに実害なければどうでも良いもんで。

『…我らと同じような…気配…いや、別物…? とりあえず魔獣でも『普通の生き物』の気配では無い』


 …うわ、厄介ごとのにおいがぷんぷんする…。やだー。





『何だアレは…』
《…やべーヤツっス…。アレはやべーヤツっス!!》
「…よし、帰って寝よう」

《全力で同意したいっスけど、アレ放置してたらうちもやべーんじゃねぇっスか…? だって何か…》


 アレ、大樹お家に、向かって来てますよねー…。



 黒い…靄のような、異形の怪物のような、はたまた海洋生物のような…とにかく、言葉で言い表せそうに無い、不気味な塊。大きさはリューほどでは無いが、ドラゴンサイズだろう。リュー以外のドラゴン知らんけど。
 アレが辿ってきただろうと思われる場所は、木々が薙ぎ倒され、何だか黒く変色している。

「…ただひたすらきしょい」
《全力同意っス…》
『うむ…』

 禍々しいとしか言いようのない姿に、チキン肌になっちゃいますよ…。
 どうしようか、と3人(?)で考え込んでいると、ふいにそのよくわからないモノの歩み(?)が止まった。
 何だ? と思わずヤツを凝視すると…


『ーーーーーーーーーっ!!!』

 音にならない、しかし咆哮とわかる『声』。
 凄まじいまでの衝撃が私たちを襲い、それをモロに浴びたリューは流石に耐えきれず苦しげなうめき声を上げながら落下した。

「…リュー!!」

 ズ…ズゥゥン…!! と言う音と、かなりの範囲を揺れが襲う。生物や魔獣達が慌てふためくのが見えるが、そんなモンに気を取られているわけにはいかない。
 抉れた地面に倒れ伏す黒い巨体。

「リュー!! リュー、大丈夫?!」

 必死に鼻面をバシバシしていると、カフッ! と息を吐き出した。

《…姐さんの張り手の方で昇天しそうっス…》
「あっ、大丈夫そう。よかったあぁぁ…」

 私も一緒に吹っ飛んだせいで、落下の衝撃を完全に消すことが出来なかったから心配したよ…よかった、生きてて。

『…いや、そなたがトドメを刺しそう、という話であろうに』

 ソンナコトナイヨ☆



「…こっちに向かってきてんな…」

 動きを止めていたが動き出したのを感じる。

「…ダガー、リューとここにいて」

 ベルトに付けていた短剣ダガーを鞘ごと外して地面に置く。ついでにリューはミニマムエディションにメタモルフォーゼさせた。

『そなた一人で行くつもりか?!』
《姐さん! 危ないっスよ! アレ、尋常じゃないっス!》

 慌てる人外2名。すっかり仲良しやんね、と微笑ましくなる。
 だが…


「アレ、『私』を目指してきてるみたいだから」


 奴がいる方向に、強く地面を蹴った。






「…へいへーい、ご機嫌…ナナメっぽいねぇ」

 私の姿を認めた瞬間、またさっきの『咆哮』がきた。避けたけど。背後の木々が吹っ飛ぶ。すげー、コレが極大魔法か(違)

「…こういう場合、こう…なんだ。デカブツを上空から見下ろす方がカッコつくんだろうな」

 私は特に新たな魔法とか開発も練習もしてない。そして、残念ながら舞◯術も会得していない。
 残念無念、と思っていたら、もいっちょ『咆哮』ぶちかまされた。やだ、森林破壊…。


「…やっぱりか…。お前…」


 きしょい見た目で、がどんな姿だったのか全くわからない。ただただ、苦しみと怨みと憎しみの感情だけで出来上がってるような黒い塊。
 その感情がダイレクトに『私』に向けられている。

 いや、『私』の中の『クソ女神ヤツ』の残滓に。

「…ヤツクソと間違われるとか…ちょー不本意なんですけど!!」

 イライラするわぁ~。

「ねぇ、ヤツなら、私がしばき回して燃やしてやったよ。別に、あんたのためにやった訳じゃないし、完全なる私怨でやったけど、もう、アイツは居ないんだって…」


 貴女を苦しめたあの女神は…消え去ったんだよ。


「…と、言われても、通じてなさそうやねぇ…」


 あいつは、一体、自分の欲望だけで、どれ程の者を…不幸のどん底に堕としたのだろう。


「…あっさり消しちゃったのは…勿体無かったかな」

 と言っても、無意識だったからどうしようもないんだけど。
 アレだわ、私、怒りとかでパワーアップするタイプだったんだね。ク◯リンのことかーー! とか言うべきだったんだろうか…(笑)


「ね、もうさ、アイツがめちゃくちゃにした、『こんな世界』で苦しみ続ける必要ないよ」


 少しでも、声が届くかもしれない、と、話しかける。聞いてくれては…いなさそうだけども。
 ちょ、連続攻撃受けてるんですけどー。森林破壊が捗るわー。




「もう、休みなよ」



 攻撃の合間の一瞬。一足跳びにヤツに近づき、その身に触れる。実体があるのか無いのか、温度があるのか無いのか。ただ、ずっとぶつけられていた、怨み辛みじゃなく…深い、深い後悔と悲しみが流れ込んできた。



「燃えろ」



 白金の焔が瞬く間にその巨体を包み込む。
 声にならない、幾つもの悲鳴が周囲の空気を震わせる。
 鱗粉の如く輝く金の光が、黒い靄を消し去っていく。

 黒い、感情を、浄化するように。

 焔が巨体を焼き削ることで、身体が縮んでいく。
 初めは暴れていたソレは、小さくなるごとに静かになり、やがてーーー


「…それが…元の姿?」

 青銀に輝く毛並みの美しい獣。
 大きさはそれでも象くらいあるんじゃないかな…。え、元からデカいのね…。やだ踏み潰されちゃう(棒)

 白金の焔の中、静かに佇む姿は…とても神々しい。

『……ありがとう』

「うん」


 美しい獣は、一声吠えると、焔と共に消え去った。


 …その後には、何も残らなかったーーー






「………」

 私、神さま燃やし要因としてこの『世界』に来た訳じゃ無いんですけどね。

 獣の神のが色々ぶっ飛ばしたせいで風通しが良くなった場所から空を見上げる。


 何一つわからないまま放り込まれて、焦って、苦労して、絶望して…望まないまま『力』を手に入れてーーー


「…ま、今さらどうしようもないしなぁ…」


 リューとダガーの気配が近づいてくる。
 『今』の私の『家族』となりうる存在が。


「…次会った時の…私の機嫌によっては、燃やすかもしれないので、お覚悟召されよ! なーんてね☆」


 天空そらに向かって、宣言しておいた。
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