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ACT1:闘技場都市の支配者
械匠の叡智
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ブルゼンの街路は今や人であふれていた。神殿倒壊の轟音に驚いて家から飛び出してきた市民たちが、災厄を逃れて現場から遠ざかろうとひしめいていたのだ。
その混雑した街路を、パキラは流れに逆らって走っていた。
ヴォルターとカイルダインが空中を駆け、アースラとペイリスがそれを追ってそれぞれの護令械を起動するのを見たとき、パキラには彼らの戦いを座してただ見守ることが耐えられなくなったのだった。
(親方……親方は護令械について何でも教えてくれた。械匠として知るべきことは全て。たとえ邪神が宿っているとしても相手が護令械である以上、私にも何かできることはあるはずだわ!)
神殿のそばへ。ヴォルターとカイルダインに、自分の声が届くところまで行かなければ。
――駐械場へ向かえ! あそこなら崩れる建物はない!」
――駐械場へ!
逃げ惑う人々の間で誰かが叫び、それは市民の口から口へ、波紋が広がるように伝えられた。
群集が一つの方向へ動き始める。はじめはゆっくりと、そしてやがて駆け足に。進むべき方向と逆行するその人波に飲まれかけて、パキラはもがいた。
「通してッ……通してくださいッ!」
声もむなしく押し流されそうになり、必死で流れの外へ逃れ出る。少し離れたところで同じように人波から押し出された母子が、後ろから来た集団に踏みつぶされそうになるのをパキラはなすすべもなく目撃していた。
「いやああッ!?」
絶望と恐怖に思わず顔を伏せた彼女の耳に、次の瞬間、予期しなかったものが聞こえた。
「うひぇあっ!?」
――ガキンッ!
若い男の悲鳴と同時に、何か重いものが石畳に叩き付けられた音。
パキラが顔を上げるとそこには、母子と群衆の間に振り下ろされた鉄の腕があった。小型の輜重械――マリオンがパキラたちをデモスの手から奪還したときに使っていたものだ。
――ル、護令械!?
畏(おそ)れを含んだ声がだれからともなく上がる。それに応じて頭上から降る声には、明らかに聞き覚えがあった。
「莫迦ものめ、女子供も目に入らんとは! うろたえるな、あの怪物は帝国騎士たちが討ち果たしてくれる。落ち着いて避難するんだ」
輜重械の上にはマリオンがいた。その隣にはガラヴェインも。
「マリオン、あなた今までどこに――」
パキラの声にマリオンが振り向く。彼女のマントには、あちこちに得体の知れない黒ずんだ液体が付着していた。
「君か――私はさっきまで、神殿近くの市民を避難させていた」
「そ、そうなの」
「ああ。奴の触手が操屍鬼のような致命的な毒を持ったものでなくて、幸いだったよ。その様子、ヴォルターたちのところへ行こうというのだな?」
「ええ」
「では早く行ってやれ」
彼女はそういうと、群衆に向かって再び声を張り上げた。
「市民たちよ、道を開けろ! この娘は騎士たちの戦いを手助けに行くのだ!」
振り下ろされた鉄腕に凍り付いていた市民たちが、我に返ったように周囲を見まわして一歩ずつ退いた。ガラヴェインがその中央に飛び降りて呼ばわる。
「この娘は械匠見習いだ! 私がこれから騎士たちの元まで送り届ける――市民諸君、だれぞ私に騎雉を貸してくれぬか。後程然るべき褒賞を約束するぞ!」
ざわめく群衆の中から、やがて一頭のがっしりした騎雉が引き出された。ガラヴェインはその鳥にまたがってパキラを鞍上に引きあげると、張りのある声とともに一鞭くれて駆けさせ始めた。
「パキラ殿、落ちぬようしっかりつかまって参らせい!」
「ええ、もっと飛ばしてください!」
鞍にまたがったガラヴェインの腰に腕を回し、パキラは両足をめいっぱいに開いて膝の間に巨鳥の背中を挟み込んでいた。横乗りするようなお上品さなど、かなぐり捨てる以前に元々ない。
人混みがあまりにも続けば、騎雉はずんぐりした形状の翼を激しく羽ばたいて人と輜重械の上を飛び越え、時には七タラット以上の距離を滑空した。
「口惜しや! このような時に、渉猟械を駆ること叶わぬとは……!」
「壊れてるんじゃ仕方ないじゃないですか。今は、今できることを!」
歯ぎしりしながら騎雉の手綱をとるガラヴェインを、パキラはたしなめた。
ガラヴェインが意気込んで送ってくれるのは、彼も無力感に苦しんでいたからに違いない。だが、問題はそこからどうするかだ。
前方にカイルダインと、対峙するモルドヴォスが見えてきた。もう一械、双角を備えた朱色の護令械がいる。あれがアースラのサーガラックだろうか。
「思い出した! サーガラックって確か……闘将械じゃないの。王国に十二械しか存在しないっていうあの――」
「さよう。極秘任務ゆえ、すぐにはわからぬよう装甲を変えてあるが……」
闘将械を交えた布陣でいまだ倒せないということは、よほど厄介な相手なのだ。その理由はすぐに分かった。
カイルダインがモルドヴォスの手首をもぎ取るのが見えた。そしてその手がすぐさま、膨れ上がった肉塊で保管されるのも。
「再生してるんだ……そうか」
神殿地下でマリオンが話していたことを思い出す。モルドヴォスに巣食った邪神の肉は、熱と水気を好む、と。
それはどちらも、護令械に不可欠のものだ。熱晶石は刻まれた卦によって、高い熱量を安定して放ち続ける。それを吸えば、あの肉はいくらでも、そして速やかに増殖できるのだろう。
(でも、でもよ……その熱が一気に解放されたら?)
遺跡での戦いでカイルダインが破壊した渉猟械を思い出す。あれの熱晶石は冷却水を失って、激しく熱を発していた。
「決め手が見えたわ。ガラヴェイン卿、市壁の外へお願いします! ヴォルターたちに伝えなきゃ!」
* * * * * * *
「あのクラゲみたいな光は何だ、カイルダイン」
(……まずいですね。人間には行使できない種類の魔法を使って、この世界の外、異次元へとつながる門(ゲート)を開こうとしています。恐らく眷属を呼び寄せるか、あるいはより上位の存在の元へ合流するか、と言ったところでしょう)
「すると、どうなる?」
(どちらにしてもこの町を住民もろとも食らい尽くす――そういう表現がふさわしいような結果になるかと)
「想像したくもないな。何とか止められないのか?」
(ゲートが開き切る前にアレを滅ぼすしかありませんが――お待ちください、佩用者。お連れ様が近くにおいでのようです)
「パキラが!?」
カイルダインが映像面の一角に別の光景を投影して見せる。そこには、騎士ガラヴェインとともに騎雉にまたがってこちらを見上げながら駆ける、パキラの姿があった。口を大きく開け、何か叫んでいる。
「あの音声を拾ってくれ」
(了解しました)
――ヴォルター! あいつの械体内の熱晶石を砕くか、冷却水を奪うのよ! そうすれば、銅を融かし気化させるほどの熱が発生するわ!
パキラの声が操縦籠内に響いた。
「なるほど! さすがは械匠だ。そんな熱に触れて無事で済む生体組織は滅多にあるもんじゃない!」
(熱晶石、ですか。私自身にはない機構ですが、確かにあの械体内にはそれらしい熱源が。実際の映像に重ねて表示しましょう)
モルドヴォスのシルエットにオーバーラップする形で、明るい輝点が映し出された。操縦籠があったと推定される位置からやや下がった、人間でいえば胃のあたりに相当する場所だ。
(さすがにこの部分の装甲は厚いようですね。初撃を加えた部位の二倍はあります――完全械態ならばその能力の一つで突破できますが、今は)
「今使えない能力のことを考えても仕方ないさ――」
その時、俺は不意に廃墟での戦いを思い出していた。カイルダインの完全械態で発現される能力――あの時に使ったものは確か、三つ。
――斥力球
カイルダインが認識できる範囲の、任意の場所に発生させられる球形の力場。力場の半径は小さいが、絶対的な防御力を発揮。
――星幽光翼
背部副腕から展開する光の翼。30mの巨体をして空中へ舞い上がらせ、確認した限りでも時速135kmの速度で移動可能。
――欺陽槍
半ば物質化したエネルギーの投槍。威力は小さいが飛距離と貫通力に優れる。完全械態でなくとも使えるが霊力を消費し、現在撃てる限度は十本程度。
(そうだ! 欺陽槍は今でも使える――)
一つだけ問題があるが、それは確認するしかない。
「カイルダイン! 欺陽槍は既に物体が存在する空間に発生させられるか?」
(可能です。ただ、生成の瞬間そこに固体もしくは高密度の液体があれば、槍を形成した瞬間に爆発的にエネルギーを放出して……なるほど、そういうことですか)
「頭の中を勝手に覗かれるのは癪にさわるが、話が早くて助かるぜ!」
これまで数体を観察した限り――護令械の胴体の装甲は、西洋風の騎士甲冑とおおむね同様に、内部のフレームに対して被せるように取り付けられている。
腰部分などは特に、重力に逆らわず吊り下げられた形だ。大きな可動性を得るために装甲と装甲の間には隙間があり、各パーツには必ず、固定されていない部分がある。
(その隙間に、腕を突き込んでやる!)
だが、そう簡単ではなかった。踏み込んだカイルダインの攻撃動作はモルドヴォスの触手でさえぎられた。右前腕に肉色の太いロープめいたものが絡みつき、締め上げられる。
「……くそッ! カイルダイン、欺陽槍を左手に!」
(了解!)
左手に生成された光の槍で二械をつなぐ触手を薙ぎ払う。触手が消えて右手が自由になると同時に、左手の槍もフラッシュをたいたような閃光と衝撃を残して消失した。
「消えた!? 流賊の遊猟械と戦った時は、刺さってもそのままだったのに」
(あの時は限定解放とはいえ、完全械態の力を出せていましたからね。本来なら欺陽槍は一本や二本出して使うようなものではないですし)
モルドヴォスは新たな触手を伸ばしつつある。こんな調子で戦っていたらカイルダインの霊力が枯渇し、停止してしまうに違いない。
――ヴォルター殿、これを使われい!
後方から声が響いた。空を切る回転音とともに何かが頭上から落下してくる。カイルダインの足元に突き立ったそれは、右腕と左足を殺されて這いつくばっていた、渉猟械ザインガルスの長剣だった。
その混雑した街路を、パキラは流れに逆らって走っていた。
ヴォルターとカイルダインが空中を駆け、アースラとペイリスがそれを追ってそれぞれの護令械を起動するのを見たとき、パキラには彼らの戦いを座してただ見守ることが耐えられなくなったのだった。
(親方……親方は護令械について何でも教えてくれた。械匠として知るべきことは全て。たとえ邪神が宿っているとしても相手が護令械である以上、私にも何かできることはあるはずだわ!)
神殿のそばへ。ヴォルターとカイルダインに、自分の声が届くところまで行かなければ。
――駐械場へ向かえ! あそこなら崩れる建物はない!」
――駐械場へ!
逃げ惑う人々の間で誰かが叫び、それは市民の口から口へ、波紋が広がるように伝えられた。
群集が一つの方向へ動き始める。はじめはゆっくりと、そしてやがて駆け足に。進むべき方向と逆行するその人波に飲まれかけて、パキラはもがいた。
「通してッ……通してくださいッ!」
声もむなしく押し流されそうになり、必死で流れの外へ逃れ出る。少し離れたところで同じように人波から押し出された母子が、後ろから来た集団に踏みつぶされそうになるのをパキラはなすすべもなく目撃していた。
「いやああッ!?」
絶望と恐怖に思わず顔を伏せた彼女の耳に、次の瞬間、予期しなかったものが聞こえた。
「うひぇあっ!?」
――ガキンッ!
若い男の悲鳴と同時に、何か重いものが石畳に叩き付けられた音。
パキラが顔を上げるとそこには、母子と群衆の間に振り下ろされた鉄の腕があった。小型の輜重械――マリオンがパキラたちをデモスの手から奪還したときに使っていたものだ。
――ル、護令械!?
畏(おそ)れを含んだ声がだれからともなく上がる。それに応じて頭上から降る声には、明らかに聞き覚えがあった。
「莫迦ものめ、女子供も目に入らんとは! うろたえるな、あの怪物は帝国騎士たちが討ち果たしてくれる。落ち着いて避難するんだ」
輜重械の上にはマリオンがいた。その隣にはガラヴェインも。
「マリオン、あなた今までどこに――」
パキラの声にマリオンが振り向く。彼女のマントには、あちこちに得体の知れない黒ずんだ液体が付着していた。
「君か――私はさっきまで、神殿近くの市民を避難させていた」
「そ、そうなの」
「ああ。奴の触手が操屍鬼のような致命的な毒を持ったものでなくて、幸いだったよ。その様子、ヴォルターたちのところへ行こうというのだな?」
「ええ」
「では早く行ってやれ」
彼女はそういうと、群衆に向かって再び声を張り上げた。
「市民たちよ、道を開けろ! この娘は騎士たちの戦いを手助けに行くのだ!」
振り下ろされた鉄腕に凍り付いていた市民たちが、我に返ったように周囲を見まわして一歩ずつ退いた。ガラヴェインがその中央に飛び降りて呼ばわる。
「この娘は械匠見習いだ! 私がこれから騎士たちの元まで送り届ける――市民諸君、だれぞ私に騎雉を貸してくれぬか。後程然るべき褒賞を約束するぞ!」
ざわめく群衆の中から、やがて一頭のがっしりした騎雉が引き出された。ガラヴェインはその鳥にまたがってパキラを鞍上に引きあげると、張りのある声とともに一鞭くれて駆けさせ始めた。
「パキラ殿、落ちぬようしっかりつかまって参らせい!」
「ええ、もっと飛ばしてください!」
鞍にまたがったガラヴェインの腰に腕を回し、パキラは両足をめいっぱいに開いて膝の間に巨鳥の背中を挟み込んでいた。横乗りするようなお上品さなど、かなぐり捨てる以前に元々ない。
人混みがあまりにも続けば、騎雉はずんぐりした形状の翼を激しく羽ばたいて人と輜重械の上を飛び越え、時には七タラット以上の距離を滑空した。
「口惜しや! このような時に、渉猟械を駆ること叶わぬとは……!」
「壊れてるんじゃ仕方ないじゃないですか。今は、今できることを!」
歯ぎしりしながら騎雉の手綱をとるガラヴェインを、パキラはたしなめた。
ガラヴェインが意気込んで送ってくれるのは、彼も無力感に苦しんでいたからに違いない。だが、問題はそこからどうするかだ。
前方にカイルダインと、対峙するモルドヴォスが見えてきた。もう一械、双角を備えた朱色の護令械がいる。あれがアースラのサーガラックだろうか。
「思い出した! サーガラックって確か……闘将械じゃないの。王国に十二械しか存在しないっていうあの――」
「さよう。極秘任務ゆえ、すぐにはわからぬよう装甲を変えてあるが……」
闘将械を交えた布陣でいまだ倒せないということは、よほど厄介な相手なのだ。その理由はすぐに分かった。
カイルダインがモルドヴォスの手首をもぎ取るのが見えた。そしてその手がすぐさま、膨れ上がった肉塊で保管されるのも。
「再生してるんだ……そうか」
神殿地下でマリオンが話していたことを思い出す。モルドヴォスに巣食った邪神の肉は、熱と水気を好む、と。
それはどちらも、護令械に不可欠のものだ。熱晶石は刻まれた卦によって、高い熱量を安定して放ち続ける。それを吸えば、あの肉はいくらでも、そして速やかに増殖できるのだろう。
(でも、でもよ……その熱が一気に解放されたら?)
遺跡での戦いでカイルダインが破壊した渉猟械を思い出す。あれの熱晶石は冷却水を失って、激しく熱を発していた。
「決め手が見えたわ。ガラヴェイン卿、市壁の外へお願いします! ヴォルターたちに伝えなきゃ!」
* * * * * * *
「あのクラゲみたいな光は何だ、カイルダイン」
(……まずいですね。人間には行使できない種類の魔法を使って、この世界の外、異次元へとつながる門(ゲート)を開こうとしています。恐らく眷属を呼び寄せるか、あるいはより上位の存在の元へ合流するか、と言ったところでしょう)
「すると、どうなる?」
(どちらにしてもこの町を住民もろとも食らい尽くす――そういう表現がふさわしいような結果になるかと)
「想像したくもないな。何とか止められないのか?」
(ゲートが開き切る前にアレを滅ぼすしかありませんが――お待ちください、佩用者。お連れ様が近くにおいでのようです)
「パキラが!?」
カイルダインが映像面の一角に別の光景を投影して見せる。そこには、騎士ガラヴェインとともに騎雉にまたがってこちらを見上げながら駆ける、パキラの姿があった。口を大きく開け、何か叫んでいる。
「あの音声を拾ってくれ」
(了解しました)
――ヴォルター! あいつの械体内の熱晶石を砕くか、冷却水を奪うのよ! そうすれば、銅を融かし気化させるほどの熱が発生するわ!
パキラの声が操縦籠内に響いた。
「なるほど! さすがは械匠だ。そんな熱に触れて無事で済む生体組織は滅多にあるもんじゃない!」
(熱晶石、ですか。私自身にはない機構ですが、確かにあの械体内にはそれらしい熱源が。実際の映像に重ねて表示しましょう)
モルドヴォスのシルエットにオーバーラップする形で、明るい輝点が映し出された。操縦籠があったと推定される位置からやや下がった、人間でいえば胃のあたりに相当する場所だ。
(さすがにこの部分の装甲は厚いようですね。初撃を加えた部位の二倍はあります――完全械態ならばその能力の一つで突破できますが、今は)
「今使えない能力のことを考えても仕方ないさ――」
その時、俺は不意に廃墟での戦いを思い出していた。カイルダインの完全械態で発現される能力――あの時に使ったものは確か、三つ。
――斥力球
カイルダインが認識できる範囲の、任意の場所に発生させられる球形の力場。力場の半径は小さいが、絶対的な防御力を発揮。
――星幽光翼
背部副腕から展開する光の翼。30mの巨体をして空中へ舞い上がらせ、確認した限りでも時速135kmの速度で移動可能。
――欺陽槍
半ば物質化したエネルギーの投槍。威力は小さいが飛距離と貫通力に優れる。完全械態でなくとも使えるが霊力を消費し、現在撃てる限度は十本程度。
(そうだ! 欺陽槍は今でも使える――)
一つだけ問題があるが、それは確認するしかない。
「カイルダイン! 欺陽槍は既に物体が存在する空間に発生させられるか?」
(可能です。ただ、生成の瞬間そこに固体もしくは高密度の液体があれば、槍を形成した瞬間に爆発的にエネルギーを放出して……なるほど、そういうことですか)
「頭の中を勝手に覗かれるのは癪にさわるが、話が早くて助かるぜ!」
これまで数体を観察した限り――護令械の胴体の装甲は、西洋風の騎士甲冑とおおむね同様に、内部のフレームに対して被せるように取り付けられている。
腰部分などは特に、重力に逆らわず吊り下げられた形だ。大きな可動性を得るために装甲と装甲の間には隙間があり、各パーツには必ず、固定されていない部分がある。
(その隙間に、腕を突き込んでやる!)
だが、そう簡単ではなかった。踏み込んだカイルダインの攻撃動作はモルドヴォスの触手でさえぎられた。右前腕に肉色の太いロープめいたものが絡みつき、締め上げられる。
「……くそッ! カイルダイン、欺陽槍を左手に!」
(了解!)
左手に生成された光の槍で二械をつなぐ触手を薙ぎ払う。触手が消えて右手が自由になると同時に、左手の槍もフラッシュをたいたような閃光と衝撃を残して消失した。
「消えた!? 流賊の遊猟械と戦った時は、刺さってもそのままだったのに」
(あの時は限定解放とはいえ、完全械態の力を出せていましたからね。本来なら欺陽槍は一本や二本出して使うようなものではないですし)
モルドヴォスは新たな触手を伸ばしつつある。こんな調子で戦っていたらカイルダインの霊力が枯渇し、停止してしまうに違いない。
――ヴォルター殿、これを使われい!
後方から声が響いた。空を切る回転音とともに何かが頭上から落下してくる。カイルダインの足元に突き立ったそれは、右腕と左足を殺されて這いつくばっていた、渉猟械ザインガルスの長剣だった。
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