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EX.ACT「キツネとウサギの防衛線」
謎の秘力
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〈アイェエエエ!? 剣が!!〉
「クソッ、何が起きた!?」
ロギの悲鳴が響き、エルゴンの口からも悪罵が漏れる。目の前で起きた現象は、恐るべき事実を示していた。
(間違いない、こいつは『秘力』だ――)
秘力――それは古い時代に作られ保存されている古護令械や、ディアスポリアにもわずか十数機しか存在しない希少な闘将械が有する、超常の力だ。
エルゴンは近衛だったころに一度、アースラ王女の「サーガラック」が秘力を行使する場面に居合わせたことがある。それは、深海の底に等しい圧力で敵の動きを封じ、あるいは圧し潰すものだった。
だが、目の前のこれが行使したものはいったい何なのか? それに、秘力を使うからには目の前のものもまた古護令械、あるいは闘将械であると考えるのが論理的。各国が保有するそうした特別な械体は、これまでにいずれもその存在が公開されている。
(だが! 俺はやはりこいつを知らんのだ――そんなことがあるものなのか?)
だとすれば――こいつは、何処から現れた?
彼の思考が迂闊にも目の前の戦いを離れかけた、その時。
〈エルゴン殿!! この剣をお使いあれ!!〉
叫びとともに風を切って飛来する物体がある。我に返ったエルゴンは、危うくも械体の手でそれを掴んだ。右腕に加わった途方もない重さが、操縦桿を通して伝わってくる。
(これは!?)
視覚器から映像板へと伝えられたのは、身幅広く重く、そして先ほどまで使ったものより幾分短い、粗末な造りの大剣だ。一瞬戸惑ったのち、エルゴンはその正体に気づいた。
「かはっ」
咳き込むように息を吐く――一瞬遅れて、エルゴンは自分が笑ったのだと知った。
スクロス・マイが投げてよこしたものは、今砕いたばかりの魔甲兵が携えていた剣だ。何ということか。エルゴンが疑心暗鬼の陥穽にはまっていく一方で、パーシヴァム・ロギはいち早く最初の衝撃と驚愕から立ち直っていたのだ。
〈護令械の秘力は! いかなるものであっても、時を置かずに連続で放てるものではありません、そうおそわれました!!〉
また噛んでやがる――苦笑するが、言っていることは間違っていない。
〈だから、今は時間を与えない事! 攻撃の緩めず押し続けることです!!〉
その声を打ち消そうとするかのようにマグナ・ガルバが剣を抜き、メイザフォンに斬りかかる。エルゴンは魔甲兵の得物を上段に掲げてそれを受けた。斬撃は拍子抜けするほどに軽く太刀筋も甘かったが、それでも剣なしでは受けられなかった、と思われた。
「助かったぞ、ロギ! だがおまえはどうする?」
〈問題なし! スクロス・マイには――このかかとがあります!〉
ロギはそう叫ぶと、械体を宙に躍らせて右脚を槍のごとく敵に叩きつけた。魔甲兵の傘型をした頭部が砕け、再生を始めるために一時動きを止める。
更にその腰中央部を貫いて、左足が突き込まれた。
これまでの動きを見る限り、スクロス・マイの跳躍力は高さにして少なくとも二百タラットに及ぶものだ。その高さからの落下を支えてなお砕けぬ主骨とかかとの剛性は、徒手格闘の武器としても十分な威力を発揮した――霊力中枢を失った傀儡は再生を半ばで止め、そのまま崩れ落ちた。
「やるじゃないか……よし、そっちは任せたぞ!」
魔甲兵の剣は重心が先端に寄りすぎて扱いにくかったが、それでもエルゴンは間に合わせの武器で勇躍、黄金の護令械に再び肉迫した。刃を合わせにくい低い軌道から、横ざまに振り抜く一閃。
マグナ・ガルバはその斬撃を、水が杭の周りをすり抜けるような奇怪な動きでぬるりとかわした。
「なっ……!?」
〈ふははは……面白い、いや、まったく楽しませてくれる……良い騎士たちであることよ。我が陣営に招きたいほどだ〉
伝声管を通じて、マグナ・ガルバの佩用者がうそぶく。エルゴンは血液が沸騰したかと錯覚した。
(……ふざけるな!!)
返す刃を空中で変化させ、斜め上から叩き付ける――その瞬間、足元の岩山が硬さを失い、メイザフォンの重量を支えることをやめた。
「クソッ、何が起きた!?」
ロギの悲鳴が響き、エルゴンの口からも悪罵が漏れる。目の前で起きた現象は、恐るべき事実を示していた。
(間違いない、こいつは『秘力』だ――)
秘力――それは古い時代に作られ保存されている古護令械や、ディアスポリアにもわずか十数機しか存在しない希少な闘将械が有する、超常の力だ。
エルゴンは近衛だったころに一度、アースラ王女の「サーガラック」が秘力を行使する場面に居合わせたことがある。それは、深海の底に等しい圧力で敵の動きを封じ、あるいは圧し潰すものだった。
だが、目の前のこれが行使したものはいったい何なのか? それに、秘力を使うからには目の前のものもまた古護令械、あるいは闘将械であると考えるのが論理的。各国が保有するそうした特別な械体は、これまでにいずれもその存在が公開されている。
(だが! 俺はやはりこいつを知らんのだ――そんなことがあるものなのか?)
だとすれば――こいつは、何処から現れた?
彼の思考が迂闊にも目の前の戦いを離れかけた、その時。
〈エルゴン殿!! この剣をお使いあれ!!〉
叫びとともに風を切って飛来する物体がある。我に返ったエルゴンは、危うくも械体の手でそれを掴んだ。右腕に加わった途方もない重さが、操縦桿を通して伝わってくる。
(これは!?)
視覚器から映像板へと伝えられたのは、身幅広く重く、そして先ほどまで使ったものより幾分短い、粗末な造りの大剣だ。一瞬戸惑ったのち、エルゴンはその正体に気づいた。
「かはっ」
咳き込むように息を吐く――一瞬遅れて、エルゴンは自分が笑ったのだと知った。
スクロス・マイが投げてよこしたものは、今砕いたばかりの魔甲兵が携えていた剣だ。何ということか。エルゴンが疑心暗鬼の陥穽にはまっていく一方で、パーシヴァム・ロギはいち早く最初の衝撃と驚愕から立ち直っていたのだ。
〈護令械の秘力は! いかなるものであっても、時を置かずに連続で放てるものではありません、そうおそわれました!!〉
また噛んでやがる――苦笑するが、言っていることは間違っていない。
〈だから、今は時間を与えない事! 攻撃の緩めず押し続けることです!!〉
その声を打ち消そうとするかのようにマグナ・ガルバが剣を抜き、メイザフォンに斬りかかる。エルゴンは魔甲兵の得物を上段に掲げてそれを受けた。斬撃は拍子抜けするほどに軽く太刀筋も甘かったが、それでも剣なしでは受けられなかった、と思われた。
「助かったぞ、ロギ! だがおまえはどうする?」
〈問題なし! スクロス・マイには――このかかとがあります!〉
ロギはそう叫ぶと、械体を宙に躍らせて右脚を槍のごとく敵に叩きつけた。魔甲兵の傘型をした頭部が砕け、再生を始めるために一時動きを止める。
更にその腰中央部を貫いて、左足が突き込まれた。
これまでの動きを見る限り、スクロス・マイの跳躍力は高さにして少なくとも二百タラットに及ぶものだ。その高さからの落下を支えてなお砕けぬ主骨とかかとの剛性は、徒手格闘の武器としても十分な威力を発揮した――霊力中枢を失った傀儡は再生を半ばで止め、そのまま崩れ落ちた。
「やるじゃないか……よし、そっちは任せたぞ!」
魔甲兵の剣は重心が先端に寄りすぎて扱いにくかったが、それでもエルゴンは間に合わせの武器で勇躍、黄金の護令械に再び肉迫した。刃を合わせにくい低い軌道から、横ざまに振り抜く一閃。
マグナ・ガルバはその斬撃を、水が杭の周りをすり抜けるような奇怪な動きでぬるりとかわした。
「なっ……!?」
〈ふははは……面白い、いや、まったく楽しませてくれる……良い騎士たちであることよ。我が陣営に招きたいほどだ〉
伝声管を通じて、マグナ・ガルバの佩用者がうそぶく。エルゴンは血液が沸騰したかと錯覚した。
(……ふざけるな!!)
返す刃を空中で変化させ、斜め上から叩き付ける――その瞬間、足元の岩山が硬さを失い、メイザフォンの重量を支えることをやめた。
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