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【第二話】
しおりを挟む「待っ、て……駄目だそれ、イく……っ、出ちゃう、から」
「まだイかせないよ……それに、お前が気持ちいいのはこっち。さっき中イキ覚えただろ?」
自身の男性器に手を伸ばしたアウルを引き留め、男は腰を持ち上げて接触を深めた。経験の差、それとも直感的な才能か。組み敷いた身体がなにを求めているのかを、男はすでに知り尽くしているのだろう。グリグリと雄の先を擦り当てて、その行為を見せつけるように激しく男性器を突き立てる。
「ここ俺の亀頭当たってるのわかるか?」
「やぁっ、あっぁっ……それやだ、やめろ……っ」
「大丈夫だって、こっちでイけるよな?」
下卑た嘲笑と共に舌を噛まれ、強い快感がアウルの背筋を走った。白濁を放つ男性器とは別の場所で迎えたオーガズム。今までに経験したことのない絶頂感が全身を駆け巡り、長い余韻を浸透させる。快感を覚えた蕾はヒクヒクと収縮し、まるで雌の膣のように男性器を締め付けては愛の証を求めた。
「ま、待って……イってるから……っ、一回、止まって」
「悪いけど、俺もイきそうだから」
恥を捨てて頼み込んだ嘆願は棄却され、無情にも咥内へと舞い戻る。肩を押し返し、どうにか相手を抑えようにも、男は腰を打ち付ける動きを止めない。快楽に溺れた、容赦のない追い立て。腹の奥深くへ植え付けられえた快感は膨張し、アウルは戸惑いを隠せずに汗ばむ肌へ爪を立てた。
「はぁ……っ、なあ、また中で出していいか?」
「はああああぁ? 無理無理無理! ふざけるなっ、絶対にやめろ!」
「んっぅ……やばいな、溜まってたからすんごい出そう」
「待て待て! お前……ゴムしてるんだよな?」
「馬鹿か? してたら中出しにならないだろ」
「ひいいいいぃ、最低だこいつ!」
話を聞かなければ分別もない。性的興奮は高まる一方で、太さを増した雄は敏感な肉壁を押し広げる。
感じたくはないのに、意思に反して反応を返してしまう身体。男が言うように、すでにこの快感を知っていたのだろう。オーガズムを迎えたばかりの最奥は前立腺を突かれる度に、甘く脳内を蕩けさせる。
なによりも、愛おしい者を抱くように与えられる口付けが問題だった。丁寧で、情熱的な愛の伝達は艶かしい。このまま流されてしまいたい欲求に駆られるも、失うもののリスクがあまりにも大き過ぎる。
「い、やだ……っ、止めてくれ、頼む」
アウルは真っ赤に染まった顔の中で唇を噛み締め、声を滴らせる。ライトグレーの瞳には薄っすらと涙が滲み、それを隠すように当てられた手は微かに震えていた。複雑に絡み合う羞恥心と自尊心。消え入る声での訴えは功をなしたのだろう。男は汗の滲んだアウルの額にキスを落とし、目尻に溜まった雫を指で拭った。
「泣くほど嫌か?」
「……いやだ」
「どうしても駄目?」
「絶対に駄目」
「はあ……仕方ないなあ」
盛大なため息と共に、最高潮の硬さを残した男性器が引き抜かれる。やっとのことで拭い去られた下半身の圧迫感。ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、開いたアウルの口には凶器と称せるサイズの雄がぶち込まれた。
「あっ、ぐ……ぅっ、んっ、んーんん!」
「下は嫌なんだろ? なら飲め」
「んーんっん!」
「飲まないなら中で出す」
「ん……っ、ぐ」
一瞬でも、この男に人情を求めたのが間違いだったのか。抵抗する間もなく後頭部が鷲掴まれ、喉奥に流れ込んだ雄臭い液体は容赦なく食道を流れていく。込み上げる嫌悪感は勿論のこと、えづいて溢れ出た唾液と涙は頬を濡らした。
なにがどうなってこのような状況になっているのか。目が覚めてから起こった災厄は理解の範囲を超過している。この男が医者なのか、看護師なのか、それとも軍人なのか。いまさらそんなことはどうでもいい話であり、沸点に達した殺意だけが視界を埋めた。
「てめえ……っ、ぶっ殺してやる……っ!」
鉄よりも硬く握り込まれた拳が火を吹く前に、視界を過ったものは窓から差し込む麗しげな朝焼けだった。ガラスを通してもその照度を欠かせない逞しい大陽光。じりじりと皮膚を焼く感覚がうなじに滞り、薄灰色の瞳の奥に鮮やかな菫色の光を灯らせた。
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🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
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