野蛮令嬢は貧弱令息に恋をする

雨夜りょう

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7:クッキー作り2

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「お嬢様、クッキー作りの準備が出来ました。厨房へお願いします」

「ああ、行こうか」

「では失礼して」

 休憩中に外していたエプロンをつけさせようと、リンダが新たなエプロンを持ってくる。

「またか」

 先程見せられたハートのエプロンを取り出してくる。ただし、先ほどとは違いフリルもたっぷりな上、ウエストひもにまでフリルが付けられている。
 段々とレベルが上がっている気がするのだが、最早何も言うまいと、手渡されたエプロンに袖を通し、厨房へと向かった。

「待たせてすまない、料理長」

「ぶっ……ん、んん。いえ、お気になさらず。では休ませていた生地がここにありますので、麺棒で伸ばしてください」

 アリシアのエプロンに噴き出しそうになった料理長の肩が震えている。給料を減らすように父に提案してやろうかと料理長を睨めつけながら、麺棒を受け取る。

「……っ、ふん!」

 料理長への鬱憤を込めてゴリゴリと生地を伸ばしていく。薄くなりすぎる所で料理長から「もう結構です」と声がかかった。

「では成形に入りましょうか」

 料理長が丸や四角と言った型を持ってくる。途端に不服そうに口を引き結んだリンダが、大きな声で手を上げる。

「はい、料理長!」

「なんだ、ファーバリー」

「愛らしいお嬢様には、愛らしい型抜きが必要だと思います!」

「ほんと、お前はブレねえな……まあ、何かそれっぽいのがあったはずだ」

 アリシア自身が甘味を欲することは殆ど無いが、令嬢を呼んだお茶会は開催される。その時に喜ばれるのは、うさぎやクマと言った動物や花の形をした可愛らしく成形されたクッキーなのだ。
 ガチャガチャと音を立てて、料理長がいくつかの型を持ってくる。

「お嬢様、ハートがありますよ! これなんかどうですか! ご令息との愛も深まるはずです!」

「よし、クマのクッキー型にしよう」

 リンダの要望は聞くだけ無駄だと、クマ型を持ってドンと生地に差し込む。

「ん? 抜けた? いや、無いな?」

 勢いよく突き立てられた生地は型の中に押し込まれ、生地が型の中に残っていた。

「ああ、ここにあったのか。おりゃ!」

 型から取り出そうと勢いをつけて振ると、型崩れを起こした生地がべしゃりと天板に落ちた。

「ええい、イライラする! こんな物、手で丸めれば良いではないか!」

 同じ轍は踏むまいと、慎重に優しく型を抜こうとすれば、今度は型が生地の下まで行かずに、上手に抜けない。上手な力の入れ方が分からずに何度も失敗を繰り返したせいで苛立ったアリシアは、とうとう手で平たく成形し始めた。
 可愛らしい形でもなく、形が整っているわけでもないクッキーに、リンダが肩を落とすのが視界の端に映ったがそんなものは関係ない。きちんと人が口に出来るものが出来上がっていれば良いのだ。

「よし、出来たぞ」

「……ああ」

 料理長は、もはや何も言うまいという顔で頷いた。

「お上手でございました。ここから先は火を使うので、私が行いましょう」

「ああ、よろしく頼む」

 出来上がったクッキーは午後のお茶の時間に提供され、クッキーは素人が初めて作ったにしてはまずまずの出来だった。
 見栄え以外は非常に良い出来だ、さすが料理長。
 クッキーを持ってきたメイドが「クッキーが美味しく食べられる限度は、せいぜい一週間です。婚約者様に提供したいのであれば、お早めに招待状をお送りする方が良いかと存じます」と料理長からの伝言を伝えに来たため、アリシアは急いでジュリウスへと手紙をしたため、人に出しても恥ずかしくない程度の出来にするため訓練に励むことになったのだった。
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