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24:ジュリウスへの診察
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「では、ジュリウス様。ご飯は美味しいですか?」
「へ? はい、美味しいです。我が家は体を使う職に就いているので、僕にはちょっと濃いなと思う時がありますけど」
「なるほど。人は汗をかく程、塩味を欲しがるものです。だからジュリウス様には味が濃いのでしょうね。では、家で出る食事で何が好きですか? 私はサンドイッチです。片手で掴んで、片手でペンを握れるでしょう。食事を摂るのすら煩わしい時に、役に立ちます」
そう言ってアンドレは笑う。サンドイッチは、神が作りたもうた効率の塊なのだと。そんなわけがないだろうと思いつつ、アンドレがあまりに真剣に熱弁するものだから、ジュリウスは笑った。
「お土産にサンドイッチを用意させますね。僕は、牛肉のワイン煮が好きです。長時間煮込んだ牛肉がほろほろと崩れて。我が家は味が濃いですけど、パンを浸して食べると丁度良くなって、すごく美味しいです」
「そうですか、とても美味しそうなので、今度行きつけの店にあるか確認してみます。では、夜はよく眠れていますか? ちなみに私は三日くらい眠らない日が多々あります」
それは死んでしまうのではないだろうかと、ジュリウスは思った。
「先生ほどではないですけど、寝付くのに時間がかかる日はあります」
「寝たいのに、寝られないのは辛いですね。私は好きで眠らずにいるのですが。人は、食と、運動と、睡眠。そして、心の健康によって健全な体が作られると思っています。食事をする事で、生きるために必要な物を取り込み、運動する事で、生きていくのに必要な筋肉をつけます。そして、眠る事によって、日々迫ってくる身体的疲労や精神的疲労を癒す事が出来ます。それらは、心が健康であることによって正常に機能されるのだと」
「おや、食事を摂るのを良く忘れて、日中の大半を座って過ごし、三日間寝るのを忘れる私は人にお説教する立場にありませんね。心身の健康状態だけは良好なのですけれど」とアンドレは可笑しそうに笑った。
「では、毎日は楽しいですか?」
「……あまり、楽しくはなかったです。僕は武官一族のラグダンに生まれたのに、体が弱くて、両親や兄を心配させるしか出来なくて。僕が生まれてきたことで、親族にも、他家にも馬鹿にされていることが申し訳なくて。皆が僕を指差して嗤っているような気がして」
でも、最近は辛いことばかりでないのだとジュリウスは語る。
「婚約者が出来たんですけど。暴風のような方で、僕の弱さごと認めて、引き上げてくれる人なんです。貴方は貴方のままで良いと」
そう言ってくれるのだと、ジュリウスははにかんだ。
「っく! こんな幼子ですら、愛しい人が居るってのに。ああ、眩しい、目が痛い!」
苦虫を噛みつぶした顔で、心底羨ましそうにアンドレはそんな事を言った。
「ふ、ふふ。先生は恋人がいらっしゃらないんですか?」
「そうです、残念ながら。でも、良いんです。私はこの仕事が恋人のような物ですから。ええ、けして、憎まれ口でも悔し紛れでもありませんとも」
そう言って、アンドレはやはり悔しそうにした。
「ふふっ」
「……その御仁を大事になさいませ。自分の命よりも深く、手放すことなく、愛されますよう」
「それが貴男の心の健康にとって、何よりも効く薬となるでしょう」とアンドレは言った。
「さて、ひとまず診察はこれくらいにしましょうか。明日からは運動を始めましょう。まずは、離れや庭などの近場を最長三十分までの散歩からです」
「! はい、よろしくお願いします」
「ふふ、素直で結構。少しでもしんどいと感じたら散歩は中止ですからね。早く剣を握りたいのなら、だれよりも自分の体を愛してあげることですよ。“焦らず、急がずゆっくりと、されど確実に”が合言葉ですからね」
今日はこれで失礼すると、アンドレは退室していった。
「へ? はい、美味しいです。我が家は体を使う職に就いているので、僕にはちょっと濃いなと思う時がありますけど」
「なるほど。人は汗をかく程、塩味を欲しがるものです。だからジュリウス様には味が濃いのでしょうね。では、家で出る食事で何が好きですか? 私はサンドイッチです。片手で掴んで、片手でペンを握れるでしょう。食事を摂るのすら煩わしい時に、役に立ちます」
そう言ってアンドレは笑う。サンドイッチは、神が作りたもうた効率の塊なのだと。そんなわけがないだろうと思いつつ、アンドレがあまりに真剣に熱弁するものだから、ジュリウスは笑った。
「お土産にサンドイッチを用意させますね。僕は、牛肉のワイン煮が好きです。長時間煮込んだ牛肉がほろほろと崩れて。我が家は味が濃いですけど、パンを浸して食べると丁度良くなって、すごく美味しいです」
「そうですか、とても美味しそうなので、今度行きつけの店にあるか確認してみます。では、夜はよく眠れていますか? ちなみに私は三日くらい眠らない日が多々あります」
それは死んでしまうのではないだろうかと、ジュリウスは思った。
「先生ほどではないですけど、寝付くのに時間がかかる日はあります」
「寝たいのに、寝られないのは辛いですね。私は好きで眠らずにいるのですが。人は、食と、運動と、睡眠。そして、心の健康によって健全な体が作られると思っています。食事をする事で、生きるために必要な物を取り込み、運動する事で、生きていくのに必要な筋肉をつけます。そして、眠る事によって、日々迫ってくる身体的疲労や精神的疲労を癒す事が出来ます。それらは、心が健康であることによって正常に機能されるのだと」
「おや、食事を摂るのを良く忘れて、日中の大半を座って過ごし、三日間寝るのを忘れる私は人にお説教する立場にありませんね。心身の健康状態だけは良好なのですけれど」とアンドレは可笑しそうに笑った。
「では、毎日は楽しいですか?」
「……あまり、楽しくはなかったです。僕は武官一族のラグダンに生まれたのに、体が弱くて、両親や兄を心配させるしか出来なくて。僕が生まれてきたことで、親族にも、他家にも馬鹿にされていることが申し訳なくて。皆が僕を指差して嗤っているような気がして」
でも、最近は辛いことばかりでないのだとジュリウスは語る。
「婚約者が出来たんですけど。暴風のような方で、僕の弱さごと認めて、引き上げてくれる人なんです。貴方は貴方のままで良いと」
そう言ってくれるのだと、ジュリウスははにかんだ。
「っく! こんな幼子ですら、愛しい人が居るってのに。ああ、眩しい、目が痛い!」
苦虫を噛みつぶした顔で、心底羨ましそうにアンドレはそんな事を言った。
「ふ、ふふ。先生は恋人がいらっしゃらないんですか?」
「そうです、残念ながら。でも、良いんです。私はこの仕事が恋人のような物ですから。ええ、けして、憎まれ口でも悔し紛れでもありませんとも」
そう言って、アンドレはやはり悔しそうにした。
「ふふっ」
「……その御仁を大事になさいませ。自分の命よりも深く、手放すことなく、愛されますよう」
「それが貴男の心の健康にとって、何よりも効く薬となるでしょう」とアンドレは言った。
「さて、ひとまず診察はこれくらいにしましょうか。明日からは運動を始めましょう。まずは、離れや庭などの近場を最長三十分までの散歩からです」
「! はい、よろしくお願いします」
「ふふ、素直で結構。少しでもしんどいと感じたら散歩は中止ですからね。早く剣を握りたいのなら、だれよりも自分の体を愛してあげることですよ。“焦らず、急がずゆっくりと、されど確実に”が合言葉ですからね」
今日はこれで失礼すると、アンドレは退室していった。
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