54 / 105
魔法が使えたって
リーゼロッテの魔法 3
しおりを挟む
「イメージは、そうねぇ。水の中から石を拾い上げるような、すくうような? 伝わるかしら」
魔法を使うには何よりもそのイメージを正しく作り上げることが必要で、それが最も重要なこと。
誰かに見せてもらうのが一番なのだが、それをできる者はここにはいない。
リーゼロッテだけが、その魔法を使うことができるというのだから、やるしかない。
リーゼロッテは胸元で光る魔力石に視線を落とした。
ベルンハルトからもらった魔力石のネックレスは、あの日以来リーゼロッテの胸元で淡く光り、その光がその存在感を際立たせている。
魔法の使えないリーゼロッテが、初めて自分のものとして持った魔力石。ベルンハルトから貰った、何よりも大切なもの。
その石を拾い上げるイメージを頭の中で緻密に描く。そして、手のひらから魔力を放った。
「きゃっ」
リーゼロッテの手から一気に放たれた魔力は、一陣の風を巻き起こし、半月状の広場全体に行き渡り、その後、土の中から湧き出るように姿を現した大量の魔力石が、リーゼロッテの足元へと転がってきた。
「こ、こんな大きな力だなんて」
リーゼロッテが初めて使う魔法を身近に見たレティシアが、目を見張る。
これまで、幾人ものロイエンタール当主が使う魔法を見てきたであろうレティシアが驚くほどの力。
白く見えるほどの金髪を持ったリーゼロッテの、強大な魔力に息を呑んだ。
「レ、レティシア様。わたくし、どうすれば」
「どうすればって、良かったじゃない。魔法、使えたのよ」
「あ、そ、そうでした。わたくし、魔法が」
リーゼロッテは気が抜けたのか、そのまま地面へと座り込んでしまった。
その周りを取り囲むのは、大量の魔力石。大きさはどれも小ぶりで、リーゼロッテがイメージしたネックレスの魔力石と同等の大きさのものばかり。
ベルンハルトからもらった魔力石と同じ大きさのものばかりを作り出したことを、いじらしいととるべきだろうか。リーゼロッテの頭の中に思い描く魔力石は、それしかなかったのだ。
「まさかここまでうまくいくなんて思ってもいなかったわ。布袋を、持ってくるべきだったわね」
レティシアはため息混じりに息を吐くと、大きく息を吸ってどこからともなく音を出した。それはまるで口笛のような、レティシアの歌声のような、聞いたこともない音色。所々に聞こえない音は、人間の聞こえる音域を超えているのだろう。
レティシアがその音楽を奏で終わる頃には、一頭の龍がその場に姿を現した。
「クラウス。城へ飛んでベルンハルトを連れてきてちょうだい。それから、大きな袋を持ってくるように伝えて」
「かしこまりました」
クラウスと呼ばれた一頭の龍は、レティシアの言葉に素直に従い、すぐにその翼を広げる。
「ベルンハルトに迎えにきてもらいましょ。そして、この魔力石も持ち帰ると良いわ」
「べ、ベルンハルト様は、怒っていらっしゃるでしょうか」
城から飛び出してきたベルンハルトを放って、レティシアの背中に飛び乗ったのは自分だ。
それでも、ベルンハルトに責め立てられたら、仮面の下のあの顔が、憎々しさで歪んだらと、そんな恐怖が心を占める。
「怒りはしていないんじゃない? 心配はしてるだろうけど。それに、もし怒られるなら私ね。貴女じゃないわ」
「レティシア様が?」
「そうでしょう。勝手に貴女のことを連れ出したのだもの」
「そんな……」
「まぁ、どうってことないわ。そんなことよりも、それ、ベルンハルトから?」
座り込んでるリーゼロッテに視線を合わせるように屈んで、レティシアが胸元で光るネックレスを指差した。
「え、えぇ。お守りだそうです。わたくしは魔法が使えませんので、守護の魔法がかけてあると」
「あのベルンハルトが? こんな小さな魔力石に?」
「はい。そう仰ってました。何かありましたか?」
「ふふ。ううん。いいの。本当に貴女のことが好きなのね」
「どういうことですか?」
「うふふ。これは貴女には内緒なのかもしれないわ」
レティシアは一人わかったような口ぶりで話をするが、リーゼロッテには何のことだかさっぱりだ。
「教えてください!」
「そうねぇ。ベルンハルトには内緒よ。こんなことを伝えたなんて知られたら、本当に怒られちゃうわ」
「わかりました! 秘密は守ります!」
「その魔力石、小さいじゃない? その大きさの石に、ベルンハルトの魔力を注ぎ込んだら途端に割れてしまうわ」
「割れる?」
リーゼロッテは思わず自らの胸元で光る石を見つめる。割れてなど、ないはずだ。
「そう。だからね、その石を割らないように魔力を小さくして注いでいくのよ。でもね、小さな魔力で魔力石を染めるのって大変なの。相当時間がかかるはずだわ。魔力の大きさをコントロールしながら、どれだけ時間を費やしたのかしらね」
まさかベルンハルトがそんな苦労をしていただなんて思ってもみなかった。ただ、守護の魔法がかけてあると、それどころか気に入らなければ捨てれば良いと、少し赤く染まった顔で何事もなく言われた。
レティシアが言うような大変さを、微塵も感じさせずにリーゼロッテに贈られたもの。
(わたくし、ベルンハルト様にそんなに思われているの?)
ベルンハルトから向けられる情の深さを、改めて実感した。
魔法を使うには何よりもそのイメージを正しく作り上げることが必要で、それが最も重要なこと。
誰かに見せてもらうのが一番なのだが、それをできる者はここにはいない。
リーゼロッテだけが、その魔法を使うことができるというのだから、やるしかない。
リーゼロッテは胸元で光る魔力石に視線を落とした。
ベルンハルトからもらった魔力石のネックレスは、あの日以来リーゼロッテの胸元で淡く光り、その光がその存在感を際立たせている。
魔法の使えないリーゼロッテが、初めて自分のものとして持った魔力石。ベルンハルトから貰った、何よりも大切なもの。
その石を拾い上げるイメージを頭の中で緻密に描く。そして、手のひらから魔力を放った。
「きゃっ」
リーゼロッテの手から一気に放たれた魔力は、一陣の風を巻き起こし、半月状の広場全体に行き渡り、その後、土の中から湧き出るように姿を現した大量の魔力石が、リーゼロッテの足元へと転がってきた。
「こ、こんな大きな力だなんて」
リーゼロッテが初めて使う魔法を身近に見たレティシアが、目を見張る。
これまで、幾人ものロイエンタール当主が使う魔法を見てきたであろうレティシアが驚くほどの力。
白く見えるほどの金髪を持ったリーゼロッテの、強大な魔力に息を呑んだ。
「レ、レティシア様。わたくし、どうすれば」
「どうすればって、良かったじゃない。魔法、使えたのよ」
「あ、そ、そうでした。わたくし、魔法が」
リーゼロッテは気が抜けたのか、そのまま地面へと座り込んでしまった。
その周りを取り囲むのは、大量の魔力石。大きさはどれも小ぶりで、リーゼロッテがイメージしたネックレスの魔力石と同等の大きさのものばかり。
ベルンハルトからもらった魔力石と同じ大きさのものばかりを作り出したことを、いじらしいととるべきだろうか。リーゼロッテの頭の中に思い描く魔力石は、それしかなかったのだ。
「まさかここまでうまくいくなんて思ってもいなかったわ。布袋を、持ってくるべきだったわね」
レティシアはため息混じりに息を吐くと、大きく息を吸ってどこからともなく音を出した。それはまるで口笛のような、レティシアの歌声のような、聞いたこともない音色。所々に聞こえない音は、人間の聞こえる音域を超えているのだろう。
レティシアがその音楽を奏で終わる頃には、一頭の龍がその場に姿を現した。
「クラウス。城へ飛んでベルンハルトを連れてきてちょうだい。それから、大きな袋を持ってくるように伝えて」
「かしこまりました」
クラウスと呼ばれた一頭の龍は、レティシアの言葉に素直に従い、すぐにその翼を広げる。
「ベルンハルトに迎えにきてもらいましょ。そして、この魔力石も持ち帰ると良いわ」
「べ、ベルンハルト様は、怒っていらっしゃるでしょうか」
城から飛び出してきたベルンハルトを放って、レティシアの背中に飛び乗ったのは自分だ。
それでも、ベルンハルトに責め立てられたら、仮面の下のあの顔が、憎々しさで歪んだらと、そんな恐怖が心を占める。
「怒りはしていないんじゃない? 心配はしてるだろうけど。それに、もし怒られるなら私ね。貴女じゃないわ」
「レティシア様が?」
「そうでしょう。勝手に貴女のことを連れ出したのだもの」
「そんな……」
「まぁ、どうってことないわ。そんなことよりも、それ、ベルンハルトから?」
座り込んでるリーゼロッテに視線を合わせるように屈んで、レティシアが胸元で光るネックレスを指差した。
「え、えぇ。お守りだそうです。わたくしは魔法が使えませんので、守護の魔法がかけてあると」
「あのベルンハルトが? こんな小さな魔力石に?」
「はい。そう仰ってました。何かありましたか?」
「ふふ。ううん。いいの。本当に貴女のことが好きなのね」
「どういうことですか?」
「うふふ。これは貴女には内緒なのかもしれないわ」
レティシアは一人わかったような口ぶりで話をするが、リーゼロッテには何のことだかさっぱりだ。
「教えてください!」
「そうねぇ。ベルンハルトには内緒よ。こんなことを伝えたなんて知られたら、本当に怒られちゃうわ」
「わかりました! 秘密は守ります!」
「その魔力石、小さいじゃない? その大きさの石に、ベルンハルトの魔力を注ぎ込んだら途端に割れてしまうわ」
「割れる?」
リーゼロッテは思わず自らの胸元で光る石を見つめる。割れてなど、ないはずだ。
「そう。だからね、その石を割らないように魔力を小さくして注いでいくのよ。でもね、小さな魔力で魔力石を染めるのって大変なの。相当時間がかかるはずだわ。魔力の大きさをコントロールしながら、どれだけ時間を費やしたのかしらね」
まさかベルンハルトがそんな苦労をしていただなんて思ってもみなかった。ただ、守護の魔法がかけてあると、それどころか気に入らなければ捨てれば良いと、少し赤く染まった顔で何事もなく言われた。
レティシアが言うような大変さを、微塵も感じさせずにリーゼロッテに贈られたもの。
(わたくし、ベルンハルト様にそんなに思われているの?)
ベルンハルトから向けられる情の深さを、改めて実感した。
34
あなたにおすすめの小説
普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜
神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。
聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。
イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。
いわゆる地味子だ。
彼女の能力も地味だった。
使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。
唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。
そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。
ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。
しかし、彼女は目立たない実力者だった。
素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。
司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。
難しい相談でも難なくこなす知識と教養。
全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。
彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。
彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。
地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。
全部で5万字。
カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。
HOTランキング女性向け1位。
日間ファンタジーランキング1位。
日間完結ランキング1位。
応援してくれた、みなさんのおかげです。
ありがとうございます。とても嬉しいです!
妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。
向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。
幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。
最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです!
勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。
だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!?
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。
木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。
その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。
本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。
リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。
しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。
なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。
竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)
【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。
鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。
さらに、偽聖女と決めつけられる始末。
しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!?
他サイトにも重複掲載中です。
【完結】令嬢は売られ、捨てられ、治療師として頑張ります。
まるねこ
ファンタジー
魔法が使えなかったせいで落ちこぼれ街道を突っ走り、伯爵家から売られたソフィ。
泣きっ面に蜂とはこの事、売られた先で魔物と出くわし、置いて逃げられる。
それでも挫けず平民として仕事を頑張るわ!
【手直しての再掲載です】
いつも通り、ふんわり設定です。
いつも悩んでおりますが、カテ変更しました。ファンタジーカップには参加しておりません。のんびりです。(*´꒳`*)
Copyright©︎2022-まるねこ
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~
志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。
自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。
しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。
身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。
しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた!
第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。
側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。
厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。
後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる