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貴重なものをみすみす渡すわけ、ありませんよ
リーゼロッテの決断 4
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「リーゼ。無理をしなくていい。ちゃんと、私が何とかするから」
心を決めたリーゼロッテに優しい言葉をかけてくれるベルンハルトの手を握り返した。
先程まで見つめられるのが恥ずかしくて仕方なかったベルンハルトの瞳を、改めて見つめ返す。
「ベルンハルト様。わたくし、大丈夫です。やっと、ベルンハルト様やロイスナーのお役に立てます」
「そ、そのようなことを気にしなくてもよい」
「いいえ。それだけではありません。わたくし、ベルンハルト様に一緒に悩み、一緒に乗り越えたいと、そう申し上げました。それが実現できるんですよ」
まだ涙の残る瞳をそのままに、リーゼロッテは鮮やかに微笑んだ。それは、リーゼロッテが王族らしく作り出す笑顔とは違う。眩しいぐらいに輝いたその顔に、今度はベルンハルトが視線を外さずにはいられない。
「そ、それでも、あんなに嫌がっていたのに」
「えぇ。あの国王のためと思えば、今でも嫌です。それでも、ロイスナーの皆のために、ベルンハルト様のために、わたくしができることはやらないわけには参りません」
「だ、だが……」
「それに、もしわたくしが再び魔力を失ったとしても、皆はわたくしと一緒にいてくださるでしょう? それとも、魔力のなくなったわたくしは今度こそ必要とされなくなりますか?」
「そんなことはない。魔力など無くたって構わない。そのようなもの、必要ない」
「ふふっ。そうですね。ベルンハルト様やレティシアがいらっしゃれば、ロイスナーは平和ですもの。だから、今回の結界だけは、わたくしが何とかします。いつまでも、守られてばかりではいられませんから」
リーゼロッテの決断は固く、もう誰の意見にも揺さぶられることはない。
「わかった。それならば、私も覚悟を決めよう」
「覚悟とは?」
「リーゼが作り出した魔力石。ただ渡すだけではつまらぬ。せっかくの機会をみすみす手放すのももったいないだろう?」
「まぁっ。それもそうですね。いつまでも見下されてばかりはいられません」
顔を見合わせて笑い合う二人を見ながら、驚いた顔をしたのはレティシアだ。
「あ、あなた達でもそんなことを考えるのね」
「おかしいですか?」
「おかしくはないけれど、ちょっと意外で」
「先日国王と謁見してきて、少々腹の虫がおさまらないだけだ」
「そういうことね。ま、その辺りの事情は二人に任せるわ。私ができることは、魔力石を作り出す場所まで案内することぐらいでしょうし」
「それは、どうだろうか」
レティシアのあっさりとした態度に、何やら含みをもたせるような言葉を返したのはベルンハルトだ。
それがどういう意味なのか、何を考えているのか、リーゼロッテには知る由もない。
ただ、間違いなくレティシアにとっても悪い話にはしないだろう。
「どういう意味?」
「なに、うまく算段がつけばそのときには話す。確証がなければ、無駄に期待を持たせるだけだからな」
貴族達を前に自分を隠し、リーゼロッテを前に顔を赤くしていたベルンハルトとは違う。
自分に自信をつけたベルンハルトの、新たな一面にリーゼロッテの心が捕らわれた。
「ふふ。楽しみにしておくわ」
「あぁ。まずは国王に連絡をとらねば。魔力石について、あちらで解決していれば、何も気にする必要はない。アルベルトやヘルムートにも話をしよう。あの二人に隠したままでは、動きづらくて仕方ない。レティシアにはまた連絡する。それまで魔獣の動きを注視しておいてくれないか?」
「わかったわ。連絡を待てば良いのね。良い連絡を待ってるから」
レティシアが来たときと同じように窓から飛び立てば、ベルンハルトがリーゼロッテの様子を伺うように向かい合う。
「リーゼ。あのように言ってしまったが、貴女の気持ちを聞かせてくれないか? リーゼが国王のことをよく思っていないのは知っている。だがそれでも生んで育ててくれた実の両親だ。何の取引もなく魔力石を渡すことだってできる」
「ベルンハルト様。わたくし、ベルンハルト様のやりたいようにやれば良いと思っております。わたくしは、ロイスナーでたくさん素敵な思いをさせていただきました。ですから、ベルンハルト様がロイスナーにとって良いと思う取引をなされば良いと思いますわ」
先程までの自信に満ちた顔を隠したベルンハルトに、リーゼロッテが背中を押した。
「それでは、貴女のためにならないのではないか?」
「そんなことありませんが。そしたら、今度こそ常に側にいさせてください」
「常に?」
「えぇ。ベルンハルト様は再び国王と話をする場を設けられるでしょう? その場にわたくしを参加させていただきたいのです」
「そ、それは構わないが、そのようなことでいいのだろうか」
「もちろんです。そのように大切な場に、わたくしのような者が参加することになったら……ふふっ。国王の顔が見てみたいですわ」
リーゼロッテがベルンハルトに見せたのは、何か企みをたたえ、それでいてどこか晴れやかな顔。
ロイスナーでは誰にも見せないようにと、ひた隠しにしてきた本音。
何があっても自分を受け入れてくれる人がいる。そんな自信が、リーゼロッテから王族らしさを取り外す。
「ははっ。やはりリーゼは大物だな。国王相手にどこまでやれるかわからないが、今度こそ側にいると誓おう」
「うふふ。ありがとうございます」
リーゼロッテはこれまでで一番鮮やかに、そして美しく微笑む。これまでに抱くことのできなかった自信をまとったリーゼロッテは他の何ものよりも美しい。
王城の温室、そこでベルンハルトを魅了した大輪の花は、ロイスナーの城で再び、大きく花開いた。
心を決めたリーゼロッテに優しい言葉をかけてくれるベルンハルトの手を握り返した。
先程まで見つめられるのが恥ずかしくて仕方なかったベルンハルトの瞳を、改めて見つめ返す。
「ベルンハルト様。わたくし、大丈夫です。やっと、ベルンハルト様やロイスナーのお役に立てます」
「そ、そのようなことを気にしなくてもよい」
「いいえ。それだけではありません。わたくし、ベルンハルト様に一緒に悩み、一緒に乗り越えたいと、そう申し上げました。それが実現できるんですよ」
まだ涙の残る瞳をそのままに、リーゼロッテは鮮やかに微笑んだ。それは、リーゼロッテが王族らしく作り出す笑顔とは違う。眩しいぐらいに輝いたその顔に、今度はベルンハルトが視線を外さずにはいられない。
「そ、それでも、あんなに嫌がっていたのに」
「えぇ。あの国王のためと思えば、今でも嫌です。それでも、ロイスナーの皆のために、ベルンハルト様のために、わたくしができることはやらないわけには参りません」
「だ、だが……」
「それに、もしわたくしが再び魔力を失ったとしても、皆はわたくしと一緒にいてくださるでしょう? それとも、魔力のなくなったわたくしは今度こそ必要とされなくなりますか?」
「そんなことはない。魔力など無くたって構わない。そのようなもの、必要ない」
「ふふっ。そうですね。ベルンハルト様やレティシアがいらっしゃれば、ロイスナーは平和ですもの。だから、今回の結界だけは、わたくしが何とかします。いつまでも、守られてばかりではいられませんから」
リーゼロッテの決断は固く、もう誰の意見にも揺さぶられることはない。
「わかった。それならば、私も覚悟を決めよう」
「覚悟とは?」
「リーゼが作り出した魔力石。ただ渡すだけではつまらぬ。せっかくの機会をみすみす手放すのももったいないだろう?」
「まぁっ。それもそうですね。いつまでも見下されてばかりはいられません」
顔を見合わせて笑い合う二人を見ながら、驚いた顔をしたのはレティシアだ。
「あ、あなた達でもそんなことを考えるのね」
「おかしいですか?」
「おかしくはないけれど、ちょっと意外で」
「先日国王と謁見してきて、少々腹の虫がおさまらないだけだ」
「そういうことね。ま、その辺りの事情は二人に任せるわ。私ができることは、魔力石を作り出す場所まで案内することぐらいでしょうし」
「それは、どうだろうか」
レティシアのあっさりとした態度に、何やら含みをもたせるような言葉を返したのはベルンハルトだ。
それがどういう意味なのか、何を考えているのか、リーゼロッテには知る由もない。
ただ、間違いなくレティシアにとっても悪い話にはしないだろう。
「どういう意味?」
「なに、うまく算段がつけばそのときには話す。確証がなければ、無駄に期待を持たせるだけだからな」
貴族達を前に自分を隠し、リーゼロッテを前に顔を赤くしていたベルンハルトとは違う。
自分に自信をつけたベルンハルトの、新たな一面にリーゼロッテの心が捕らわれた。
「ふふ。楽しみにしておくわ」
「あぁ。まずは国王に連絡をとらねば。魔力石について、あちらで解決していれば、何も気にする必要はない。アルベルトやヘルムートにも話をしよう。あの二人に隠したままでは、動きづらくて仕方ない。レティシアにはまた連絡する。それまで魔獣の動きを注視しておいてくれないか?」
「わかったわ。連絡を待てば良いのね。良い連絡を待ってるから」
レティシアが来たときと同じように窓から飛び立てば、ベルンハルトがリーゼロッテの様子を伺うように向かい合う。
「リーゼ。あのように言ってしまったが、貴女の気持ちを聞かせてくれないか? リーゼが国王のことをよく思っていないのは知っている。だがそれでも生んで育ててくれた実の両親だ。何の取引もなく魔力石を渡すことだってできる」
「ベルンハルト様。わたくし、ベルンハルト様のやりたいようにやれば良いと思っております。わたくしは、ロイスナーでたくさん素敵な思いをさせていただきました。ですから、ベルンハルト様がロイスナーにとって良いと思う取引をなされば良いと思いますわ」
先程までの自信に満ちた顔を隠したベルンハルトに、リーゼロッテが背中を押した。
「それでは、貴女のためにならないのではないか?」
「そんなことありませんが。そしたら、今度こそ常に側にいさせてください」
「常に?」
「えぇ。ベルンハルト様は再び国王と話をする場を設けられるでしょう? その場にわたくしを参加させていただきたいのです」
「そ、それは構わないが、そのようなことでいいのだろうか」
「もちろんです。そのように大切な場に、わたくしのような者が参加することになったら……ふふっ。国王の顔が見てみたいですわ」
リーゼロッテがベルンハルトに見せたのは、何か企みをたたえ、それでいてどこか晴れやかな顔。
ロイスナーでは誰にも見せないようにと、ひた隠しにしてきた本音。
何があっても自分を受け入れてくれる人がいる。そんな自信が、リーゼロッテから王族らしさを取り外す。
「ははっ。やはりリーゼは大物だな。国王相手にどこまでやれるかわからないが、今度こそ側にいると誓おう」
「うふふ。ありがとうございます」
リーゼロッテはこれまでで一番鮮やかに、そして美しく微笑む。これまでに抱くことのできなかった自信をまとったリーゼロッテは他の何ものよりも美しい。
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