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貴重なものをみすみす渡すわけ、ありませんよ
それぞれの思惑 2
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「ロイエンタール伯爵。本当に魔力石が手に入ったというのか?」
「はい。それに、それなりの大きさだと思います。ロイスナーにあるもの以上ですから」
ベルンハルトとリーゼロッテが二人揃ってバルタザールの前に並んだのは、魔力石を作り出して数日後。
リーゼロッテの体調が戻り、王都までの道のりに不安がなくなるのを待ってからだ。
「そ、それでそのものはどこに?」
「今運んでる最中でしょう。門に用意していただいた荷馬車に運び入れたとしても、そこから城まで時間がかかります」
ヘルムートと門の前で別れ、龍達から魔力石を受け取るよう指示をしたが、まだ魔力石は空中を漂っているに違いない。
王都へ入り、荷馬車へ積み込んでしまえば、ロイスナーに持ち帰ることは不可能だろう。
魔力石が王都へ持ち込まれるのは、こちらの話し合いが終わった後だ。
「そうか……ところで、このような場にリーゼロッテを同席させる意図は何だ? 積もる話なとないと、以前もそう言ったはずだが」
魔力石が無事に手に入りそうだとわかった途端に態度を翻すその様は、やはり苛立ちがつのる。
隣に座るリーゼロッテを見れば、その顔にはきちんと笑顔が浮かんでいて、何を考えているのかべルンハルトにはわからない。
ただ、前回と違い、恐怖を感じていないのであれば、それだけで十分だ。
「今回の魔力石の入手は、リーゼロッテの協力なしでは実現しませんでしたから。ここに同席してもらうのが筋だと思いまして」
ベルンハルトの言葉に、バルタザールの目が大きく見開かれた。役立たずのリーゼロッテの協力というのが、想像もできないと言いたいかのようだ。
「リ、リーゼロッテが?」
「はい。私の力では手に入れることは叶いませんでした。全て、リーゼロッテのおかげです」
ベルンハルトの言葉は何も誇張してなどいない。土魔法についてを詳しく話すつもりもないが、リーゼロッテがいなければ手に入らなかったというのは、間違いじゃない。
「それは、どういうことだ?」
「私が妻のことを、それだけ頼りにしている、ということですよ」
「はぁ」
はぐらかされたような物言いが腑に落ちないような様子のバルタザールに向けて、ベルンハルトは更に言葉を重ねていく。
「ですから、今回の魔力石の譲渡については、リーゼロッテの同意を得るべきだと思っております」
「何?!」
土魔法でしか魔力石を作り出すことができないと知った時から、決めていたこと。
リーゼロッテが嫌がれば、王族を敵に回したとしても魔力石は渡せない。
その時は、この身がどうなろうとも、誰を前にしても立ちはだかる。
全て、覚悟の上だ。
「国王陛下、積もる話はないようですが、魔力石に関してはきちんとお話し合いください。リーゼロッテを連れてきたのはそのためです」
ベルンハルトの口から飛び出す発言に、バルタザールと共に驚いた顔をしていたのはリーゼロッテだ。
この場に同席したいとは言っていたが、このようなことまで望んではいなかったのかもしれない。
リーゼロッテの立場をなんとかしたいというのは、ベルンハルトの望みでしかない。
「リーゼロッテ……」
「……」
ベルンハルトの言葉を受けて、バルタザールがリーゼロッテに視線を移すが、リーゼロッテ自身は俯いたまま動こうともしない。
「魔力石を渡すんだ」
(この男はまだ……)
この場において、一番優位な立場でいるのはリーゼロッテだ。
未だにその状況が理解できていないバルタザールの態度に、いい加減辟易してくる。
国王だからと、父親だからと、なぜいつまでもそれが当然だと思い込んでいられるのか。
「国王陛下。そうした言い方はいかがなものでしょうか。幸い人払いもされていますし、以前私になさった様にされれば良いと思うのですが」
(魔力石の為に、頭を下げたではないか)
「ぶ、無礼な!」
「そうでしょうか。国のことを思えば、安いものだと思います」
ベルンハルトの言葉に、不服そうな顔をしたまま、バルタザールが押し黙った。
どうにかしてリーゼロッテを頷かせようと策を考えているようにも見えるし、葛藤しているようにも見える。
どちらにせよ、このままでは魔力石を渡すことはない。
空中にあるままの魔力石を思い描き、門をくぐらせなくて良かったと胸を撫で下ろした。
「はい。それに、それなりの大きさだと思います。ロイスナーにあるもの以上ですから」
ベルンハルトとリーゼロッテが二人揃ってバルタザールの前に並んだのは、魔力石を作り出して数日後。
リーゼロッテの体調が戻り、王都までの道のりに不安がなくなるのを待ってからだ。
「そ、それでそのものはどこに?」
「今運んでる最中でしょう。門に用意していただいた荷馬車に運び入れたとしても、そこから城まで時間がかかります」
ヘルムートと門の前で別れ、龍達から魔力石を受け取るよう指示をしたが、まだ魔力石は空中を漂っているに違いない。
王都へ入り、荷馬車へ積み込んでしまえば、ロイスナーに持ち帰ることは不可能だろう。
魔力石が王都へ持ち込まれるのは、こちらの話し合いが終わった後だ。
「そうか……ところで、このような場にリーゼロッテを同席させる意図は何だ? 積もる話なとないと、以前もそう言ったはずだが」
魔力石が無事に手に入りそうだとわかった途端に態度を翻すその様は、やはり苛立ちがつのる。
隣に座るリーゼロッテを見れば、その顔にはきちんと笑顔が浮かんでいて、何を考えているのかべルンハルトにはわからない。
ただ、前回と違い、恐怖を感じていないのであれば、それだけで十分だ。
「今回の魔力石の入手は、リーゼロッテの協力なしでは実現しませんでしたから。ここに同席してもらうのが筋だと思いまして」
ベルンハルトの言葉に、バルタザールの目が大きく見開かれた。役立たずのリーゼロッテの協力というのが、想像もできないと言いたいかのようだ。
「リ、リーゼロッテが?」
「はい。私の力では手に入れることは叶いませんでした。全て、リーゼロッテのおかげです」
ベルンハルトの言葉は何も誇張してなどいない。土魔法についてを詳しく話すつもりもないが、リーゼロッテがいなければ手に入らなかったというのは、間違いじゃない。
「それは、どういうことだ?」
「私が妻のことを、それだけ頼りにしている、ということですよ」
「はぁ」
はぐらかされたような物言いが腑に落ちないような様子のバルタザールに向けて、ベルンハルトは更に言葉を重ねていく。
「ですから、今回の魔力石の譲渡については、リーゼロッテの同意を得るべきだと思っております」
「何?!」
土魔法でしか魔力石を作り出すことができないと知った時から、決めていたこと。
リーゼロッテが嫌がれば、王族を敵に回したとしても魔力石は渡せない。
その時は、この身がどうなろうとも、誰を前にしても立ちはだかる。
全て、覚悟の上だ。
「国王陛下、積もる話はないようですが、魔力石に関してはきちんとお話し合いください。リーゼロッテを連れてきたのはそのためです」
ベルンハルトの口から飛び出す発言に、バルタザールと共に驚いた顔をしていたのはリーゼロッテだ。
この場に同席したいとは言っていたが、このようなことまで望んではいなかったのかもしれない。
リーゼロッテの立場をなんとかしたいというのは、ベルンハルトの望みでしかない。
「リーゼロッテ……」
「……」
ベルンハルトの言葉を受けて、バルタザールがリーゼロッテに視線を移すが、リーゼロッテ自身は俯いたまま動こうともしない。
「魔力石を渡すんだ」
(この男はまだ……)
この場において、一番優位な立場でいるのはリーゼロッテだ。
未だにその状況が理解できていないバルタザールの態度に、いい加減辟易してくる。
国王だからと、父親だからと、なぜいつまでもそれが当然だと思い込んでいられるのか。
「国王陛下。そうした言い方はいかがなものでしょうか。幸い人払いもされていますし、以前私になさった様にされれば良いと思うのですが」
(魔力石の為に、頭を下げたではないか)
「ぶ、無礼な!」
「そうでしょうか。国のことを思えば、安いものだと思います」
ベルンハルトの言葉に、不服そうな顔をしたまま、バルタザールが押し黙った。
どうにかしてリーゼロッテを頷かせようと策を考えているようにも見えるし、葛藤しているようにも見える。
どちらにせよ、このままでは魔力石を渡すことはない。
空中にあるままの魔力石を思い描き、門をくぐらせなくて良かったと胸を撫で下ろした。
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