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国を出て、新しい国へ
ルーイのこと
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「ルーイ。もう出てきて平気だ。」
私は後方に隠れていたであろうルーイに声をかける。
「お、おぅ。」
ルーイは私が倒した獣を見て、息をのんだ。
「これ、熊だ。」
「これが?」
「アイシュタルト、熊知らなかったのか?」
「知らぬ。シャーノにはおらぬ。」
先ほどまで私たちの話題の中心だった熊が、今私たちの目の前に横たわっている。ルーイが言うほどのこともなかった。まだ、子供なのかもしれぬ。
「騎士って、強いんだな。驚いた。」
「剣の鍛錬ばかりしておるからな。」
「アイシュタルトと一緒なら、どこでも平気かもしれない。」
「それでは、まだまだ案内してもらおうか。」
「おう。どこへでも。」
私たちは森を抜けるため、先を急ぐ。さらに大きな熊に出会うのを避けるためでもあったし、熊の返り血が付いた私に、獣の臭いにつられて他の獣が寄ってくることも避けたかった。
ようやく森を抜けたころ、ルーイの予想通り、辺りは暗くなっていた。これ以上遅くなれば、森で野宿しなければならなかったであろう。ルーイの案内が頼りになることが証明された。
「ここで一泊?」
「あぁ。そのつもりだ。」
「そしたら、先に宿だ。アイシュタルト、着替えは?」
「何着かはある。」
「風呂もらって、それに着替えて、飯!」
「うむ。」
宿は二人で一部屋を頼んだ。いつまでこの旅を続けることになるかはわからぬが、節約できるところはするに越したことはないだろう。
宿の寝台へと体を横たえると、疲れが一気に押し寄せてくる。そういえば、城を出てからまともな睡眠は初めてだった。
シャーノの城内はどうなったであろうか。私が出ていったことに気づいた騎士団長はどうしたであろうか。王子の護衛には誰が就いたのであろうか。姫から連絡はあったであろうか。シュルトは……
あらゆる事柄が頭の中を駆け巡っていく。カミュートに逃げてしまった私にはどうすることもできないが、どうすることもできないからといって、何も思わずにはいられない。
「アイシュタルト、寝た方がいい。」
私が寝つけずにいるのを感じたルーイが隣の寝台から声をかけてきた。
「色々考えたいのはわかるけど、シャーノのことはどうしようもない。俺たちにわかりようもないんだから。それよりもしっかり休んで、明日に備えろ。ここで補充するのはさっき熊を倒したときに切っちまったマントと、食料。それさえ買い足せば、すぐに出発する。次の街までは少しかかるんだ。」
「ルーイはどこへ向かってるんだ?」
「都に近寄らないようにってことだったろ?だから、都を中心にその周りにある街を次々に寄って行こうかと思ってる。」
私はルーイの返答に少し驚いた。まさか私が言った通りに案内しようとしてくれているとは思ってもいなかった。ルーイが向かいたい街があって、そこに向かっているのだと思い込んでいたのだ。
「ル、ルーイはどこか行きたい場所があるのではないのか?」
「俺?んー。特にないよ。」
「私と出会った街へ何故来ていたのだ?」
「俺さ、色んなもの見たいんだよね。この目で、この足で。だから、どこでも良い。別に都に行ってもいいよ。この旅に飽きたら、そこに定住しようと思ってるだけだから。」
「家族は?」
「みんなバラバラになった。俺の生まれたところはさ、コーゼとの国境すぐ近くにあるんだ。しょっちゅう攻め入られてて、いつだったかな。どこに行ったかわからなくなった。親も……弟も。」
ルーイの軽快な声が、最後だけ少し詰まった。
「悪い。嫌なことを言わせた。」
「ううん。別に。もう何年も前のことだ。とにかく、早く寝ろって。」
ルーイはそう言うと頭から布団を被った。私も余計なことを考えてる暇はない。早く休んで、明日に備えなければ。
私は後方に隠れていたであろうルーイに声をかける。
「お、おぅ。」
ルーイは私が倒した獣を見て、息をのんだ。
「これ、熊だ。」
「これが?」
「アイシュタルト、熊知らなかったのか?」
「知らぬ。シャーノにはおらぬ。」
先ほどまで私たちの話題の中心だった熊が、今私たちの目の前に横たわっている。ルーイが言うほどのこともなかった。まだ、子供なのかもしれぬ。
「騎士って、強いんだな。驚いた。」
「剣の鍛錬ばかりしておるからな。」
「アイシュタルトと一緒なら、どこでも平気かもしれない。」
「それでは、まだまだ案内してもらおうか。」
「おう。どこへでも。」
私たちは森を抜けるため、先を急ぐ。さらに大きな熊に出会うのを避けるためでもあったし、熊の返り血が付いた私に、獣の臭いにつられて他の獣が寄ってくることも避けたかった。
ようやく森を抜けたころ、ルーイの予想通り、辺りは暗くなっていた。これ以上遅くなれば、森で野宿しなければならなかったであろう。ルーイの案内が頼りになることが証明された。
「ここで一泊?」
「あぁ。そのつもりだ。」
「そしたら、先に宿だ。アイシュタルト、着替えは?」
「何着かはある。」
「風呂もらって、それに着替えて、飯!」
「うむ。」
宿は二人で一部屋を頼んだ。いつまでこの旅を続けることになるかはわからぬが、節約できるところはするに越したことはないだろう。
宿の寝台へと体を横たえると、疲れが一気に押し寄せてくる。そういえば、城を出てからまともな睡眠は初めてだった。
シャーノの城内はどうなったであろうか。私が出ていったことに気づいた騎士団長はどうしたであろうか。王子の護衛には誰が就いたのであろうか。姫から連絡はあったであろうか。シュルトは……
あらゆる事柄が頭の中を駆け巡っていく。カミュートに逃げてしまった私にはどうすることもできないが、どうすることもできないからといって、何も思わずにはいられない。
「アイシュタルト、寝た方がいい。」
私が寝つけずにいるのを感じたルーイが隣の寝台から声をかけてきた。
「色々考えたいのはわかるけど、シャーノのことはどうしようもない。俺たちにわかりようもないんだから。それよりもしっかり休んで、明日に備えろ。ここで補充するのはさっき熊を倒したときに切っちまったマントと、食料。それさえ買い足せば、すぐに出発する。次の街までは少しかかるんだ。」
「ルーイはどこへ向かってるんだ?」
「都に近寄らないようにってことだったろ?だから、都を中心にその周りにある街を次々に寄って行こうかと思ってる。」
私はルーイの返答に少し驚いた。まさか私が言った通りに案内しようとしてくれているとは思ってもいなかった。ルーイが向かいたい街があって、そこに向かっているのだと思い込んでいたのだ。
「ル、ルーイはどこか行きたい場所があるのではないのか?」
「俺?んー。特にないよ。」
「私と出会った街へ何故来ていたのだ?」
「俺さ、色んなもの見たいんだよね。この目で、この足で。だから、どこでも良い。別に都に行ってもいいよ。この旅に飽きたら、そこに定住しようと思ってるだけだから。」
「家族は?」
「みんなバラバラになった。俺の生まれたところはさ、コーゼとの国境すぐ近くにあるんだ。しょっちゅう攻め入られてて、いつだったかな。どこに行ったかわからなくなった。親も……弟も。」
ルーイの軽快な声が、最後だけ少し詰まった。
「悪い。嫌なことを言わせた。」
「ううん。別に。もう何年も前のことだ。とにかく、早く寝ろって。」
ルーイはそう言うと頭から布団を被った。私も余計なことを考えてる暇はない。早く休んで、明日に備えなければ。
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