【完結】飛行機で事故に遭ったら仙人達が存在する異世界に飛んだので、自分も仙人になろうと思います ー何事もやってみなくちゃわからないー

光城 朱純

文字の大きさ
44 / 54

これからのこと 2

しおりを挟む
「さて、はるは具体的にどうするつもりだったのかな?」

「えっと……仙帝の住まいは仙人島にある大きな館だって知りました。だから、そこへ突撃しようかと」

「それだけ?!」

「はい。そのつもりですけど」

「ははっ。はるは思ったよりも無鉄砲なんだね。もっと慎重な性格だと思ってたよ」

 無鉄砲かぁ。そう思われても仕方ない。
 それでも、私にだって言い分がある。

「流石に一人で行くつもりではなかったはずなんです。誰かと一緒に行く気だったのかなって。そうじゃなきゃ、あまりにも無謀すぎます」

「誰かとは、誰だ?」

「わかりません。でも、そんなことをやるような性格じゃないんです。それなのにこんなことを思うなんて、きっと誰かに協力を仰いでたのかと」

 その誰かを、櫂なら知ってると思うんだ。
 教えてくれない理由はたくさんあるだろうけど、それも仕方ないよね。

「わからないことばかりなのに、それでもやるって言うから、君を呼んだんだ。二人なら仙帝を倒すことも可能かもしれない」

「櫂さんは、それでも良いんですか?」

 櫂の立場でこんなこと……普通は止めるよね。

「僕の都合を言わせてもらうなら、もう少し待って欲しいかな。万が一仙帝が倒されでもしたら、その後の処理は僕に降りかかってくるだろうから。秋の精たちが、その照れ屋な顔を覗かせる頃までは、待てそうにない?」

「秋……私は構いませんが」

 そもそもいつにするなんて何にも決めてない。できるだけ早くって、妙に頭の中でちらつく焦燥感。だけど、その理由もやっぱり思い出せやしないから。
 尚はどう思ってるんだろう? 仙帝に思うところがあるって、さっき櫂が言ってたよね。今すぐにでも行動したいのかな。
 抑揚のない声と変わらない表情が、いったい何を考えてるかわからない尚に、ちらりと視線を投げかけるが、眉一つぴくりとも動かない様子に、その奥の感情なんて見えやしない。

「尚さんは、どう思いますか?」

 私が声をかける度に、うっすら浮かぶ眉間の皺。イラついている様にも、困惑している様にも見えるそれは、尚の癖だろうか。
 それとも、私何かしたっけ?

「いつでも構わぬ。其方が良いと思う時で」

 話し始めればすぐに無表情に戻ってしまう、掴みどころのない人。

「それじゃあ、秋まではそれぞれ訓練に励むってことで。また時期が近づいたらこうやって話をしよう」

 そう言って櫂が立ち上がれば、同時に尚も席を立つ。

「尚はしばらくはると話でもしたらどう? 一緒に行動することになるんだから、もう少し慣れてもらわないとね」

 隣で立ち上がった尚を再び椅子に押し付けながら、櫂が満面の笑みを振り撒く。
 何企んでるの? 怖いよ。

「い、いや。私にできるわけがないだろう」

 櫂を見ながら、目を見開いた尚の姿は何かに怯えている様にも見える。
 何を怖がってるんだろう? 櫂が認める程の強さなんだよね?

「これぐらい心配ない。その辺は僕の方がよく知ってるさ」

 まるで幼い子どもに言い聞かせるように、尚に言葉をかけた櫂が、私の顔を見てもう一度笑顔を作り出した。

「はる。尚のこと、よろしくね」


「尚さん。大丈夫ですか?」

 櫂に置いて行かれた尚は、どこか迷子の様にも見えて、心配になってしまう。

「あぁ。問題ない」

 無愛想にそう答えながら、それでも私と一定の距離を開けようとする。

「今すぐに距離を縮める必要はないと思います。まだ時間もありますし。今日は解散しますか? そうだ。お近づきのしるしに、少し待っててくださいね」

 急いでキッチンに向かって作り出したのはアイスミルクティー。多分紅茶だと思う茶葉と牛乳、そして私が作り出した氷。それを丁寧に淹れて尚の前に差し出した。
 仙人がものを食べたり飲んだりしないことはわかってる。尚が口にしてくれなくたって仕方ない。それでも、私ができる最大限のおもてなし。
 これぐらいしか、特技ないんだよね。

「これは……」

「ミルクティーです。冷たくしたので、この季節にちょうど良いと思うんです。要らなければ、私がもらいます」

「櫂に飲ませなくて良かったのか?」

「櫂さんですか? またいつでも作れますから。これは尚さんに」

「ありがたくいただく」

 そう言うと尚が躊躇なく一気に飲み干した。まさか飲みきるなんて思ってもなかったから、嬉しい。

「どうですか?」

「悪く……いや、美味しい。ありがとう」

 お礼を言ってくれた尚の口元の白い歯。綺麗に揃ったそれを覗かせた微笑みは、何となく見覚えがあって。頭の隅に何かが引っかかる。

「どういたしまして。他にも色々作れるんですよ。私、わりと料理得意なんです。お嫌いじゃなければ、また何か作りますね」

「た、楽しみにしてる」

 そう言って再び立ち上がった尚の顔は、何故かどことなく赤らんでいて。そのまま玄関まで歩く後ろ姿を、急いで追いかけた。

「次にお会いするのは、秋頃ですか?」

 外に出てバランスボールに乗った尚を見ながら、そう声をかけた。
 櫂にああ言われたからって、無理して一緒に居る必要はない。仙帝を倒すことに協力してくれるだけなら、その時だけ会えばいいよね。

「櫂もよく来ているのだろう?」

「はい。毎日顔を出してくれるんです。お忙しいのに……」

「毎日?!」

 尚の問いに思わず顔が赤くなる。毎日って、私まるで小さい子どもみたいだ。

「毎日とは……そうか。わ、私もまた会いに来る。秋までに其方の強さも見ておきたい」

 そんなにわかりやすくショックを受けないでよ。
 過保護っぷりに驚いたんだろうけど。
 私の言葉に青ざめた顔をする尚に、心の中で悪態をつく。
 私が寂しがってるのを知ってて、わざわざ来てくれる櫂の優しさ。
 それを、そんな顔をしなくてもいいじゃない。

「それでは」

 別れの挨拶も軽く、尚はその姿を上空へと浮かび上がらせた。そのまま一瞥をくれることもなくあっさりと飛んでいく姿にも、どこか覚えがあって。
 姿の見えなくなった夏の青空。吹き抜ける風はこの季節には珍しくどことなく冷たくて、押し寄せるのは置いて行かれた様な寂しさ。
 こんなの、尚にとっては迷惑だよね。
 また、迷惑ばかりかけちゃう。
 また? って、何? 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ 主人公はあまり戦ったりはしません。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!

しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません! 神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜 と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます! 3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。 ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです! ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 非常に申し訳ない… と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか? 色々手違いがあって… と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ? 代わりにといってはなんだけど… と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン? 私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。 なんの謝罪だっけ? そして、最後に言われた言葉 どうか、幸せになって(くれ) んん? 弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。 ※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします 完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...