24 / 24
世界樹の麓に
しおりを挟む
語るべきことは、もういくらも残されていない。理沙は心を病んで、現在、精神病棟にいる。
高校の卒業式のあとで、僕と美咲は校舎の屋上のフェンスにもたれて、夕焼け空をながめていた。美咲もべつの美大に合格していた。
夕焼けは、しだいに色こく、グラデーションとなって、ふくざつに色彩を変えていった。思わずひきこまれてしまいそうな強烈な色彩だった。
高杉さんは、刻々と変化していくこの夕焼け空を、バーミリオンとオレンジだけでは描かなかっただろう。バーミリオン系、オレンジ系、イエロー系、ブルー系、グリーン系…さまざまな色が響きあうように描いたことだろう…。そして燃えながら落ちていく夕陽は、どんな色をつかったろうか…。
「すごい夕焼け空…燃えているようだわ」
「高杉さんが見たら、きっと喜んだろうな」
こんな景色が高杉さんは、とても好きだった。そう…高杉さんが好きなのは、アドレッセンスにしか存在し得ない憧憬、心の震え、胸の高鳴り…。高杉さんは大人になっても、それらの感情を持ちつづけることのできた、本当に稀有な人だった。誰にも代えがたい人だった。
誰かが高杉さんを救うべきだったのだ。高杉さんにどんなに反対されても、僕は高杉さんからはなれるべきではなかったのだ。だけど時はまきもどせない。時の輪はまわり続ける。
美咲がさいごに残した言葉を、僕はけっして忘れない。
「わたしは画家への道をあきらめない。ぜったいに。高杉さんから学んだことを、決して無駄にはしないわ」
美咲もまた、高杉さんの遺志を継ごうとしているのだ。
いつか僕らは集まろう。世界樹の麓に。そこではきっと鳥がさえずり、すきとおった風がふき、緑なす草原がひろがっている。あまりにも遠いが、そこは約束されたはずの場所だ。
そうして川をさかのぼるボートのように、過去へ過去へと引き戻されながら、僕らは前へと進んでゆく。時の輪はまわり続ける。
いつか世界樹の麓に集まるその日まで。
高校の卒業式のあとで、僕と美咲は校舎の屋上のフェンスにもたれて、夕焼け空をながめていた。美咲もべつの美大に合格していた。
夕焼けは、しだいに色こく、グラデーションとなって、ふくざつに色彩を変えていった。思わずひきこまれてしまいそうな強烈な色彩だった。
高杉さんは、刻々と変化していくこの夕焼け空を、バーミリオンとオレンジだけでは描かなかっただろう。バーミリオン系、オレンジ系、イエロー系、ブルー系、グリーン系…さまざまな色が響きあうように描いたことだろう…。そして燃えながら落ちていく夕陽は、どんな色をつかったろうか…。
「すごい夕焼け空…燃えているようだわ」
「高杉さんが見たら、きっと喜んだろうな」
こんな景色が高杉さんは、とても好きだった。そう…高杉さんが好きなのは、アドレッセンスにしか存在し得ない憧憬、心の震え、胸の高鳴り…。高杉さんは大人になっても、それらの感情を持ちつづけることのできた、本当に稀有な人だった。誰にも代えがたい人だった。
誰かが高杉さんを救うべきだったのだ。高杉さんにどんなに反対されても、僕は高杉さんからはなれるべきではなかったのだ。だけど時はまきもどせない。時の輪はまわり続ける。
美咲がさいごに残した言葉を、僕はけっして忘れない。
「わたしは画家への道をあきらめない。ぜったいに。高杉さんから学んだことを、決して無駄にはしないわ」
美咲もまた、高杉さんの遺志を継ごうとしているのだ。
いつか僕らは集まろう。世界樹の麓に。そこではきっと鳥がさえずり、すきとおった風がふき、緑なす草原がひろがっている。あまりにも遠いが、そこは約束されたはずの場所だ。
そうして川をさかのぼるボートのように、過去へ過去へと引き戻されながら、僕らは前へと進んでゆく。時の輪はまわり続ける。
いつか世界樹の麓に集まるその日まで。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。
熱い風の果てへ
朝陽ゆりね
ライト文芸
沙良は母が遺した絵を求めてエジプトにやってきた。
カルナック神殿で一服中に池に落ちてしまう。
必死で泳いで這い上がるが、なんだか周囲の様子がおかしい。
そこで出会った青年は自らの名をラムセスと名乗る。
まさか――
そのまさかは的中する。
ここは第18王朝末期の古代エジプトだった。
※本作はすでに販売終了した作品を改稿したものです。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる