ウェントス

関谷俊博

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ューヨークに到着すると、すぐさまホテルでの記者会見が行われた。
今回の全米ツアーへの質問が殆どだったが「日本人のあなた達がどうして琴や三味線等の楽器を使わなかったんですか?」と質問してきた記者がいたのには閉口した。
「俺達の誰も琴や三味線を弾けないからさ」と答えておいたが、隣に座った倉田が「尺八でも始めるか…俺」と、日本語で呟くのが聞こえたので、俺は噴き出しそうになった。英語の苦手な杉浦についた通訳も笑いを堪えている。 
しかし、ジョクラトルを批判するような質問は一つも出なかった。
既成概念の破壊を口にしている俺にとっては意外なことだったが、ニューヨークは、日本人の俺たちを温かく出迎えてくれた。異文化の中にある俺たちが、どんなインパクトを与えてくれるのか。
期待はそれだけ高かったのかもしれない。
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