冬迷宮

関谷俊博

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瑠璃色の冬鳥が、突如として虚空から現れ、グランドピアノにとまった。
 この冬鳥は、則子の無意識と集合的無意識を往き来している。ここへやってきたときと同じように、この冬鳥は、僕を集合的無意識にまで導いてくれるはずだった。
「じゃあ、僕は戻るよ」と僕は則子に言った。
「向こうで待ってる。すぐに会いに来て。きっとよ」
 今度こそ本当に、則子は微笑んだ。
「ああ、すぐに会いに行くよ」
 僕も笑った。
 目の前の地面が、ほんのりと明るくなり始めた。次第に明るみは強さを増し、眩いばかりに輝き始め、やがて噴水花火のように、光が吹きだしてきた。瑠璃色の冬鳥が、光の中に姿を消した。続けて、僕も光へと歩を進めた。

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