閉じられた図書館

５１

「そ、それは」
祖母が言葉に詰まった。
「確かに叩いたりしたことはありました」
「それは控えめに言ってですね」
「先生は何をおっしゃりたいんですか！」
祖母の声がかん高く翻った。
「ぜんぶ躾としてやったことです！」
「失礼致しました。ただ虐待が多重人格を生むのは良くあることなんですよ」
医師が言うと、祖母は黙りこんだ。
「あなたがこの子に言った言葉も嘘ですね。母親が適当な男と街を出ていったという言葉も」
「ええ」
祖母は気まずい顔で、それても頷いた。
「この子の母親は、ずっと精神病棟にいるのです」
「そうですか…だけど、これであなたにもおわかりでしょう？ 麗子さんの正体が」
「この子の母親ですね」
祖母が答えると、医師は頷いた。