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11.紀伊羅 満
しおりを挟む「光樹……俺のこと、どう思ってた? お前にとって、俺はどうでもいい人間だった? 少しでも、ほんの少しだけでも……――好きだと思ってくれた時はあるか?」
返事など来ないのは分かっている。
今の光樹は、俺の言っていることを理解出来ない。
だからこそ言った。
これは以前から言いたかったことであるが、本人には絶対に聞きたくなかった。
光樹が俺のことを好きでもなんでもないことを知っているがゆえに、認めたくなかった。
今だから、口から出てしまった。
答えは返されないけど、自分が言いたかったことをようやく伝えることが出来た。
――光樹は、とても美しい容姿をしている。
ここまで綺麗な男は、世界中探してもなかなかいない。だから当然、非常にモテていた。
俺と付き合っていたのも、ただの気まぐれだと分かってはいた。
再会して急に、突拍子もなく光樹に『付き合おう』と言われたからだ。
それでも良かった。光樹の恋人になれるなら、気まぐれだったとしても幸運なことだろうと……――。
なのに、それだけでは足りなくなった。
光樹に、本気で好きになってほしいという欲が出た。
俺みたいに、光樹がいなきゃ生きていけないくらいの……そんな狂気的な気持ちを向けて欲しいと思ってしまった。
光樹は一般の人間だ。
俺のようなヤクザの血が入っている――生まれつき狂気を孕んだ人間ではない。
俺とは生きる世界が違うのだ。
だから、そんなこと無理なのは分かっていたのに――。
『大嫌い』だって本当に思えたら、手離してあげられた。
自分が酷いことをしていた自覚はある。
どうにかしなければと思ってはいた。
なんとかして、光樹を手離してあげられないかと思って行動していた。
けど、自分がめちゃくちゃな行動を取っていたのも分かっていた。
大嫌いと言いながらも光樹を抱き、拘束するようなことを言う。
終いには、光樹が過去に関係を持った男との行為を見せようとした。
あんな精が外に溢れ出すほど中出しするくらいだ。気に入っていたようだから、当てつけでしてやろうと――お前は、もう決してこいつを抱くことは出来ないんだというように、見せつけてやる思いでだった。
光樹の立場からすると、俺に飽きられてはいけないと焦るはずだ。
だから、少しでも慌てればいいと思った。
……だが、きっと最後までは出来なかっただろう。
口でされるだけで吐き気がし、光樹の姿を見てなんとか立たせることが出来たくらいだからだ。
けど――その男のヨダレまみれになった陰茎を、光樹が自分のナカに入れようとしたのには焦った。
そんな汚いものを光樹のナカに入れるなんてと、思考がカッとした怒りで埋め尽くされた。
光樹は自分の思い通りに出来なかったからか、酷く泣いてしまい。それですっかり萎えてしまった。
だから、風呂に入って汚れたモノを綺麗にしたあと、いつも通りに光樹を抱こうと決め。床に転がる男に『出ていけ』と命令した。
なのに、光樹はその男と一緒に部屋を出ようとした。
まるで俺なんかを見たくないというように、下を向きながら去って行こうとしたのだ。
その時、光樹を手離すことは出来ないと思った。
例え、俺が光樹に向けている相反した愛憎による狂気のせいで、結果的に壊すことになってしまっても……光樹が俺から離れていくよりはマシだと――。
「満が大好き」
「――ッ!?」
光樹と目が合った。
しっかりとした、意思のある温かな目――。
その目にじっと見上げられ、もう一度「満が大好きだよ」と伝えられる。
「っ、光樹、本当か……? 俺のこと――」
光樹の目から強い意思が、ふっと消えてしまった。
――震えた手で、光輝の頬に触れる。
「俺は……間違えたのか……」
嘘の目をしていなかった。
本当に、俺を『大好き』だと思っている愛情のある目だった。
俺とは違う、温かみのある愛。
けど確かに――俺と同じ、恋愛感情を含むものだった。
「大嫌いなんて言って……ごめん。俺も、大好きだ。光樹……大好きなんだ」
意思のない人形のようになった光樹を、強く抱き締める。
胸には、重い『後悔』がのし掛かる。
俺が壊した光樹の記憶には、『俺』も含まれている。
それどころか、自分のことすらも誰だか分からなくなる。
なのに、どんな奇跡か――先程の光樹は、自身が誰だか理解していて、それで俺のこともちゃんと認識していたようにしか見えなかった。
そんな奇跡は、二度と起こらないものだ。普通は記憶が戻ることなどないから――。
「光樹を好きになって……ごめん」
俺が好きになったせいで光樹は人としての生を終え、俺の抱き人形として生きていかなければいけなくなった。
光樹に『大好き』だと伝えられる前は、別にそれでいいと思っていたことが、今は酷く後悔している。
こうなる前に、ちゃんと光樹と話していたなら……なんて今更なことが頭に過ってくる。
もしそう出来たのなら……光樹と身体だけでなく心までが繋がり合い、お互いに想い合って生きていくことが出来たのかもしれない。
そのもしもの未来を、俺がこの手で壊してしまった。
この重い後悔は、死ぬまでずっと抱えていくことになるだろう……――。
「でも、それでも……離してあげられない。光樹、これから先もずっと……俺の側にいてくれ」
俺に想いを伝えた……今は固く閉じている光樹の唇に、自身の唇を重ねる。
光樹が俺に向けて言ってくれた『大好き』を少しも残さず飲み込むように、お互いの口が溶けてしまいそうなほどに長い時間――反応のない人形となった愛しい人へ、一方的な口付けを与え続けた。
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