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第32話
しおりを挟む私の傷だらけで固い身体を見せて愛想を尽かしてもらおうと思ったのだが結局失敗に終わった。
それだけでなくこんなにも蕩けさせられるとは思っていなかった。
「バレッサ」
「……なに?」
「体、大丈夫か?」
「今のところは大丈夫。シャワーは後で浴びたいかな」
「…じゃあ今の内にやりたいことはやらせてもらうな」
それだけ言うと彼は首筋に噛みついてきた。
しばらくガジガジと噛んでいたが、気が済んだのか私が抱えていた枕を取り上げて遠くに投げると出来た隙間に体を滑り込ませてきた。
「枕返して」
「俺がいるだろ」
「何の理由にもなってない」
手を伸ばすも絡めとられてしまい、更には彼に抱きしめられて身動きが取れなくなる。
「バレッサ」
「……なに?」
「俺はお前を手放すつもりは微塵もない。絶対に俺だけのものにする」
「……私よりもっと可愛くて貴方に相応しい人は幾らでもいるでしょうに」
溜め息交じりにそう言うも気に入らなかったようで唇を塞がれてしまう。
「二度とそんな馬鹿なこと言えないように今から調教してやってもいいんだぞ?」
そんな不穏な言葉と共に彼は喉をクツクツと鳴らす。
…あの、魔王のような笑い方辞めてもらえませんかね。
一応事後なんですよ。
「それは勘弁して。もう疲れたし、シャワー浴びたい」
「えー…」
「ほら、手離して」
そういうと彼は渋々と言った様子で手を離してくれたのでゆっくりと起き上がって着替えとサラシを持ってシャワー室に向かう。
あ、そうだ。
シャワーを浴びる前に言っておかないといけないことがあった。
「シャワーを浴び終えたら私たちは今あるべき名前に戻るからね」
「は?」
「当たり前でしょ。どこかで明確な線引きが無いと曖昧になる」
「曖昧になればいいじゃないか?」
「馬鹿なこと言わないで。身分差があるんだから」
それだけ突き付けるように告げると早々にシャワー室に引き籠った。
ドアが叩かれるが内鍵をかけたため少しすると諦めてくれた。
「…あーあー、また独占欲の塊のようなことしてくれちゃって」
鏡を見ると全身に赤い華を咲かせた自分がいた。
よくこんなにつけて顎が疲れないな。
着替えを棚に置いてシャワーを浴びる。
今回の作戦でどうにかなると思っていたのだが甘かったらしい。
これからどうしようか途方に暮れながら私はシャワーを浴び続けた。
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