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第15話
しおりを挟む目を覚ますと見慣れない天井が目に入った。
あれ、いつの間にか会社から家に帰ってきたのかな。
もしくは会社の医務室だろうか。
そんな呑気なことをぼんやり考えていたがすぐに我に返る。
いやいやいやいや、どう考えてもそれはないだろう。
動けないほどの痛みだったはずだ。
そこで体調が良くなっていることに気づいた。
ようやく薬が効いたのか。
「…ここどこ?」
ベッドは広く清潔感に溢れているが医務室ではない。
生活感があるし、何より茶色と白でまとめられたおしゃれな医務室なんて聞いたことがない。
自分の服装はジャケットは脱がされているもののスーツのままだ。
とりあえず現状把握のためにも体を起こしてベッドから出ようとした瞬間扉が開いたためそちらに視線を向ける。
「起きて大丈夫なのか?」
「菅谷さん…」
彼はベッドに駆け寄ると私をベッドに押し戻して布団をかけてくれる。
そのまま横になる気に慣れず、上半身を起こしたまま彼を見る。
ベッドの縁に腰かけたまま彼は心配そうな目を向けてきた。
「あの、私どうなったんですか?」
「廊下で倒れたんだよ。声をかけていたら紫苑の同僚を名乗る女性が走ってきて色々教えてくれたんだ」
色々、と濁されれば流石に察する。
「あぁ、月のものですね。今月は特に酷くて薬を飲んだのですが間に合わなかったみたいで」
「……」
「あー…言わない方が良かったですか?他の女性は分かりませんが私はこのことを男性に伝えることに抵抗ないので、聞きたくなかったら遮ってください」
珍しく黙る彼に余計なことまで言いすぎたかと今更気づく。
彼は深くため息をついてから目頭を押さえた。
「いや、言ってくれてよかった。病気なのかと焦ったんだぞ」
「心配をおかけしてすみませんでした」
「むしろ言えるなら少しでも辛い時点で教えてくれ。1人にして欲しいならそう配慮するから」
菅谷さんはそう言うとリモコンを取って部屋の温度を上げてくれた。
少し肌寒かったから助かる。
「菅谷さんは優しいですね」
「誰にでもというわけではない」
「誰にでも優しかったらそれもそれで怖いですよ」
素直に思ったことを言えば彼は少しむすっとした様子でこちらを見てきた。
その様子が可愛らしくて笑ってしまう。
すると彼は少し息を吐いてから私の頬に手を伸ばしてきた。
「まぁ、体調が良くなったのならそれでいい」
「ありがとうございます。…あの、今更ですがここはやっぱり」
「俺の家だ」
「ですよね~…この前お邪魔した部屋と瓜二つで目が覚めた時驚きましたよ」
「紫苑の家を知らなかったからな。医務室でも良かったんだが、紫苑の上司から『有休を全然消化してくれないからこれを期に休ませたい』と愚痴られてな。俺が率先して連れ帰って来た」
先輩?
なんてこと暴露してくれたんですか。
とりあえず今度出社したらお話ししましょうか。
てかこれ同僚にも色々聞かれるじゃん…。
あーもー面倒くさいな。
段々と怒りが湧いてくる。
そんな私を見て彼は何を思ったかおもむろに手を取ると手の甲にキスを落としてきた。
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