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許されない感情
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「分かった…」
そう小さな声でフリードは呟いた。
ヒロインと結ばれてフリードが幸せになるために…
俺の事を好きになんてなっちゃいけないんだ。
フリードが俺の頬を撫でる、顔を見られちゃいけない……嫌いって言ったのに泣いてたら変だよな。
俺はもう一度、自分にも言い聞かせるように「好きじゃない」と言った。
俺は必死なのにフリードが優しく微笑んでいた。
「…そんな顔させて悪かったな、もう泣くな」
「な、いて…ないっ」
「応えなくていい、けど俺の気持ちは変わらない…君の事を好きで居続ける」
「だ、ダメッ!!俺なんかよりもっと相応しい子が…」
「迷惑だって分かってるが俺の初恋はそう簡単に切り替えられないんだ、無視してても良いから…俺の大切な気持ちを否定しないで」
迷惑なんて思ってない、そうじゃないんだ。
俺を想っていたら聖騎士になれないんだ。
言いたくてもどかしい気持ちでいっぱいになる。
ヒロインと出会う3年後までにフリードを完全に諦めさせなくては………俺はそれだけを考えていた。
フリードの気持ちが嬉しいなんて、思っちゃいけない…
フリードが俺から退いて手を差し伸ばされる。
顔を見られちゃうから手を握る事が出来ず横になって小さくなる。
「明日、ジョーカーが来る」
「……ジョーカー?」
「イリヤが心配だから交互に様子を見る事にしたんだ、俺達の自己満足だから気にするな」
「………」
ジョーカーは多分俺の事を好きじゃないと思うから大丈夫だけど、問題はフリードだろう。
何も言わない俺に「またな」と声を掛けた。
そしてフリードの声が聞こえなくなり、恐る恐る起き上がるとフリードは何処にもいなかった。
横にある窓を見る、フリードに見られなくて良かったとホッとした。
目元が赤くなって酷い顔だ。
枕のある方に倒れ込んで天井を見上げる。
あれ?あそこの角、あんなに黒かったっけ……もしかしたらフリードはあそこから来たのかな?
窓からと思っていたがさっきフリードが帰る時窓の開け閉めの音は聞こえなかった、勿論ドアからも聞こえなかった。
黒い部分に手を伸ばすが天井が遠くて全然触れない。
風魔法が使えれば身体を浮かせれば届くだろうが、俺の風魔法なんてそよ風くらいにしかならないから、人どころか紙くらい軽い物しか持ち上がれない。
何も掴めない手はだらんとベッドに落ちた。
顔洗って一度すっきりしよう、それでそれから頭の中を整理しようと思い部屋を出た。
洗面所って何処なんだろう、自分で探して入っていけない場所に入ったら嫌だから人に聞こうと歩いていたメイドに洗面所の場所を聞いた。
俺はこの家でどういう立ち位置か分からないがメイドは嫌そうな顔をしつつ教えてくれた。
なんかもうこうまで嫌われていると慣れてしまった。
洗面所に入り蛇口を捻ると水が勢いよく出てきた。
顔を洗い口元を拭い鏡を見た。
少しはマシになったかな、これで明日ジョーカーが来ても大丈夫だろう。
ジョーカーにも相談してみようかな、いや…でもフリードに悪いか。
ため息を吐いて部屋に戻ろうと洗面所の入り口の方を向いて驚いた。
考え事をしていて周りに気付かなかった。
「……弟をたぶらかして俺をどれだけコケにしたら気が済むんだ?」
「アル、様…」
ガンッと入り口のドアを叩かれて身体がびっくりして跳ねた。
そうだ、フリードの事で頭がいっぱいだったがアル様の問題もあったんだ。
アル様が追いかけて来なかったからもう愛想つかされたと思っていたが、もしかしてフリードの部屋には入れないのか?
一歩一歩アル様が近付いてくる、狭い洗面所だからすぐに背が壁にくっついた。
アル様の目は俺を汚いものを見るように軽蔑していた。
俺はフリードをたぶらかしてなんかいない、でもあんな感じで部屋を出たら勘違いされても仕方ないのかもしれない。
「俺は、フリード…様とは何も…」
「アイツの服着てよく言えるな」
すぐ傍の壁を強く蹴ると怖くて尻餅をついた。
壁は軽くへこみ、もしこれが直接当たったらと思うと顔を青くした。
怯える俺なんて見えていないのかアル様は俺の腕を掴んだ。
痣が出来るのではないかと思うほどにギリギリと爪を立てられる。
そのまま何処かに連れていこうとして、俺は行きたくないとそう思った。
婚約者だからしなきゃいけないのに、フリードの真剣に想いを伝える顔が頭から離れない。
俺……もしかして……
その時、こんこんと控えめに洗面所のドアが叩かれた。
また邪魔をされてアル様は舌打ちをしてドアを睨んだ。
いけないのに、フリードかと期待してしまう自分が嫌だった。
そう小さな声でフリードは呟いた。
ヒロインと結ばれてフリードが幸せになるために…
俺の事を好きになんてなっちゃいけないんだ。
フリードが俺の頬を撫でる、顔を見られちゃいけない……嫌いって言ったのに泣いてたら変だよな。
俺はもう一度、自分にも言い聞かせるように「好きじゃない」と言った。
俺は必死なのにフリードが優しく微笑んでいた。
「…そんな顔させて悪かったな、もう泣くな」
「な、いて…ないっ」
「応えなくていい、けど俺の気持ちは変わらない…君の事を好きで居続ける」
「だ、ダメッ!!俺なんかよりもっと相応しい子が…」
「迷惑だって分かってるが俺の初恋はそう簡単に切り替えられないんだ、無視してても良いから…俺の大切な気持ちを否定しないで」
迷惑なんて思ってない、そうじゃないんだ。
俺を想っていたら聖騎士になれないんだ。
言いたくてもどかしい気持ちでいっぱいになる。
ヒロインと出会う3年後までにフリードを完全に諦めさせなくては………俺はそれだけを考えていた。
フリードの気持ちが嬉しいなんて、思っちゃいけない…
フリードが俺から退いて手を差し伸ばされる。
顔を見られちゃうから手を握る事が出来ず横になって小さくなる。
「明日、ジョーカーが来る」
「……ジョーカー?」
「イリヤが心配だから交互に様子を見る事にしたんだ、俺達の自己満足だから気にするな」
「………」
ジョーカーは多分俺の事を好きじゃないと思うから大丈夫だけど、問題はフリードだろう。
何も言わない俺に「またな」と声を掛けた。
そしてフリードの声が聞こえなくなり、恐る恐る起き上がるとフリードは何処にもいなかった。
横にある窓を見る、フリードに見られなくて良かったとホッとした。
目元が赤くなって酷い顔だ。
枕のある方に倒れ込んで天井を見上げる。
あれ?あそこの角、あんなに黒かったっけ……もしかしたらフリードはあそこから来たのかな?
窓からと思っていたがさっきフリードが帰る時窓の開け閉めの音は聞こえなかった、勿論ドアからも聞こえなかった。
黒い部分に手を伸ばすが天井が遠くて全然触れない。
風魔法が使えれば身体を浮かせれば届くだろうが、俺の風魔法なんてそよ風くらいにしかならないから、人どころか紙くらい軽い物しか持ち上がれない。
何も掴めない手はだらんとベッドに落ちた。
顔洗って一度すっきりしよう、それでそれから頭の中を整理しようと思い部屋を出た。
洗面所って何処なんだろう、自分で探して入っていけない場所に入ったら嫌だから人に聞こうと歩いていたメイドに洗面所の場所を聞いた。
俺はこの家でどういう立ち位置か分からないがメイドは嫌そうな顔をしつつ教えてくれた。
なんかもうこうまで嫌われていると慣れてしまった。
洗面所に入り蛇口を捻ると水が勢いよく出てきた。
顔を洗い口元を拭い鏡を見た。
少しはマシになったかな、これで明日ジョーカーが来ても大丈夫だろう。
ジョーカーにも相談してみようかな、いや…でもフリードに悪いか。
ため息を吐いて部屋に戻ろうと洗面所の入り口の方を向いて驚いた。
考え事をしていて周りに気付かなかった。
「……弟をたぶらかして俺をどれだけコケにしたら気が済むんだ?」
「アル、様…」
ガンッと入り口のドアを叩かれて身体がびっくりして跳ねた。
そうだ、フリードの事で頭がいっぱいだったがアル様の問題もあったんだ。
アル様が追いかけて来なかったからもう愛想つかされたと思っていたが、もしかしてフリードの部屋には入れないのか?
一歩一歩アル様が近付いてくる、狭い洗面所だからすぐに背が壁にくっついた。
アル様の目は俺を汚いものを見るように軽蔑していた。
俺はフリードをたぶらかしてなんかいない、でもあんな感じで部屋を出たら勘違いされても仕方ないのかもしれない。
「俺は、フリード…様とは何も…」
「アイツの服着てよく言えるな」
すぐ傍の壁を強く蹴ると怖くて尻餅をついた。
壁は軽くへこみ、もしこれが直接当たったらと思うと顔を青くした。
怯える俺なんて見えていないのかアル様は俺の腕を掴んだ。
痣が出来るのではないかと思うほどにギリギリと爪を立てられる。
そのまま何処かに連れていこうとして、俺は行きたくないとそう思った。
婚約者だからしなきゃいけないのに、フリードの真剣に想いを伝える顔が頭から離れない。
俺……もしかして……
その時、こんこんと控えめに洗面所のドアが叩かれた。
また邪魔をされてアル様は舌打ちをしてドアを睨んだ。
いけないのに、フリードかと期待してしまう自分が嫌だった。
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